ギタリストの村治佳織さんが最新ベスト盤に込めた想い(2021/11/27 放送)
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今週は、クラシック・ギタリストの村治佳織さんをお迎えしました。
今回は、クラシックギターの定番曲「愛のロマンス」(映画『禁じられた遊び』から)のスタジオ生演奏も披露してくれた村治さん。間近で演奏を観た恵さんの「ダイナミックと言いますか。村治さん、女性だから指も細いし、僕の方が大きいと思うんですけど、その指が大きく見え、太く見え、音によって小さく見えて、か細くなり。で、速くなるとまた躍動感が出てって…見るもんですね!」という感想を受けて、こんなことを話してくれました。
今回は、クラシックギターの定番曲「愛のロマンス」(映画『禁じられた遊び』から)のスタジオ生演奏も披露してくれた村治さん。間近で演奏を観た恵さんの「ダイナミックと言いますか。村治さん、女性だから指も細いし、僕の方が大きいと思うんですけど、その指が大きく見え、太く見え、音によって小さく見えて、か細くなり。で、速くなるとまた躍動感が出てって…見るもんですね!」という感想を受けて、こんなことを話してくれました。
「一つの音を出すまでに、いろんな動きをして。右指と左指とまったくこう…左は押さえるもの、右は爪弾くもの。そして、指先で弾いてるだけではないので、やっぱり全身を使って弾いてるって感覚はあるので、そこを見ても楽しいって言っていただけるのはとっても嬉しいですね」
「ギターってミクロコスモス、宇宙がありますよね、中に。で、自分で伴奏もできるし、メロディーも弾けるし、その間の音も出せるっていうところで、一人で完結もできる」
村治さんは、12月1日に7年ぶりとなるベストアルバム『ミュージック・ギフト・トゥ』(Music Gift to)をリリース。このタイトルに込めた意味をこう説明してくれました。
「その後は “to You”といきたいところですけども、それももちろんあるんですね、聴いてくださる あなた。でも、今回のアルバムっていうのは、ギフトとして人へのプレゼントにアルバムを使っていただきたいなぁ、っていう気持ちがあって。デザイナーさんにお願いして“to”の後を空けてるんですね」
「買っていただいた方が開封していただいて。そこに親御さんの名前だったり、旧友のお名前だったりとか…なんでもいいんですよ、花子でも(笑)太郎でも(笑)。そして、それを贈っていただけたら、すごくアルバムとしても嬉しいなぁと」
「もし、すべてが新しい録音のものだったら、このアルバムでどんな音楽を表現したいか、っていろいろ考えるんですけど、今回は過去にレコーディングしてきたもの の中からセレクトしていますので、ぜったい自分の表現を聴いて欲しい!っていうのはなくて」
「今って、配信で音楽を聴かれて、それもいいんですけど、やっぱりアルバムという、手に取れる、目に見える形で作らせていただいてるっていうところを逆に活かせないかなぁと。だったら贈り物にして欲しい…で、ギフト。これからお歳暮の時期、クリスマスにもなりますし(笑)。新年のご挨拶とか、来年の3月のお別れとか、季節を考えずにいろんなシーンで…」
そんな『ミュージック・ギフト・トゥ』には、映画音楽やポップスの名曲、クラシックなど、ジャンルを超えた全17曲を収録。ビージーズの「愛はきらめきの中に」(How Deep Is Your Love)を皮切りに、映画『ティファニーで朝食を』の「ムーン・リバー」、今回のスタジオで生演奏を披露してくれた「愛のロマンス」、さらには「戦場のメリークリスマス」や「花は咲く」といった曲もあります。
「例えば、1曲目の「愛はきらめきの中に」は、昨年ステイホーム期間で友人たちもいろいろYouTubeとか見る中で、私の過去に弾いた映像が出てきて。それが「愛はきらめきの中に」で、いい曲だよねって言われて。ま、数年弾いてなかったんですけど、この時代ならではの優しさとか思いが溢れてるから、またコンサートが復活したらこの曲が1曲目いいかもなと思って弾いてみたんですね。そしたら、ようこそ!この会場にいらっしゃいました!っていう気持ちにもなれるし、すごく良かったので。であれば、アルバムも1曲目にしたいなぁと」
「アルバムも14曲目になってる「戦場のメリークリスマス」とか、「花は咲く」っていうのは(最近のコンサートの)アンコールとか後半の方で弾いてるんですね。コンサートとも連動させてます」
そして、ラストに収録されているミュージカル『キャッツ』の「メモリー」は、今回レコーディングされた新録曲。アルバムに先駆けて先行配信されている曲で、レコーディングでは同じくギタリストの弟・村治奏一さんがディレクションしてくれたんだとか。
「新しいチャレンジという意味では、今の自分の演奏を1曲お届けしたいと。これも選曲どうしようかな?っていうね。ミュージカル作品は、感情にも訴えかけられるし、いい作品たくさんあるじゃないですか」
「ミュージカル『キャッツ』なんですが、ちょうど数年前に映画化されてるんですね。で、映画音楽っていうのは最近の数年の私のテーマなので、よくぞ映画化してくれました!って。であれば、映画音楽の括りにもなるし、多くの方に愛されてる、そしてイギリスの作曲家(アンドリュー・ロイド・ウェバー)の作品なんですけど、(私の作品は)イギリスのレーベル(Decca)からも出てますし、これはハマった!と思って」
「で、初めて弟にディレクター席に座ってもらって。弟がディレクションしてくれたんです」
東京の下町で生まれ育ったという村治さんですが、山の手のイメージで見られることも多いようです。
「台東区です。江戸っ子だし、下町っ子と思ってるんですけど、やっぱりギターがヨーロッパのものだし、見た目がなんとなく下町感がないみたいで(笑)今でも驚かれるんですけど。ずっと下町育ちだよっていうのは言い続けて…」
「(下町って言うと)きっぷのいい…全然そういうとこありますけどね。早口だし、なんか。早口っていうか乗ってくるとバババーって話しちゃいますし」
ギター講師の父を持つ村治さんは、小さい頃からギタリストになるものだと思っていたんだとか。
「小学校の頃は学校から帰ってきて…まぁ2時間ぐらいですかね…練習するっていうのが日々の日課でした。練習するものだという。ご飯を食べたら歯磨きをする、学校から帰ってきたらギターを弾く、みたいな(笑)」
「保育園の卒園式で一人一人なりたい職業を言うんですけど、自然とギタリストになりたいっていう言葉が出てきて」
そして、10歳からはお父様の教えを離れて福田進一さんに師事。
「この方は、教える専門ではなくコンサートを頻繁にやってる方のエネルギーを感じられたんで、あ、こういうことがギタリストの日常なんだなって」
1993年、15歳の時には早くもデビューCD『エスプレッシーヴォ』をリリースしました。
「どうやってデビューしようかな?っていろいろ考える前にすべてチャンスがやってきて。ま、そういうものにはあまり臆せず飛び込める性格だったので、ちょうど上手く歯車が回ったかなぁって思いますよ」
さらに、高校卒業後はフランス・パリにある音楽学校“エコール・ノルマル”に留学します。
「高校までは音楽科ではない普通の私立の学校に行っていたので、一度は音楽の勉強を海外でしたいなぁと思って」
「先は長いじゃないですか。プロになってからも勉強が終わりってことはまったくないので、むしろ力をつけていかないといけない。で、自然な流れで、ギターが生まれた、そしてヨーロッパ音楽が生まれた場所で。すべてが一本の線になって繋がっていた感じですね」
村治さんはフランス留学を経験して変わったことをこう振り返ってくれました。
「日本にいる時は…(周りの)期待に答えたいとかね…あまり自分の主張を出しすぎずに受け入れてたんですけど、やっぱり向こうのレッスンを見てると、留学生の人とかヨーロッパの人は、自分はこう思うんです!みたいな感じで先生に対しても言ってるので、いや偉いなって思うと同時に、やっぱり自分の考えを作っていかないと…。私は、はい!その通りでございます!と(笑)。そこからちょっと変化しました」
また、村治さんはご自身の10代の頃についてこんなこともおっしゃっていました。
「(10代の頃は)壁のようなものは…人の面でも環境の面でもなかったから、ホントに恵まれてました」
「弟(村治奏一さん)がいるんですけど、弟は速弾きってすごい速く弾けてたし、手も私より大きかったので、難しい曲に私よりも先に挑戦してたりとかして、あ、それはいいなぁ、みたいなのはありましたね。だから、ジェラシーというか、いいな…ってのはありましたけど。でも性別が違ったから良かったなぁ。心をどうしたら豊かに出来るかなとか(笑)」
「(占い師の)ゲッターズ飯田さんの本で見たら、生まれた時から心は60歳でした(笑)」
「10代の頃とかは、掴み取るんじゃなくて自分を守らなくては、みたいな。早くから大人の世界にも入ったので、自分の純粋な部分は守りたいというか、そういう意味での、笑顔はあんまり出さないとか、ありましたね。アイドルのようにはなりたくない。アイドルにはアイドルのみなさんの良さがあるわけだから、私の場合はエンターテイメントの音楽よりも祈りの音楽とかを届けたいっていうのもあって。写真撮る時に笑ってくださいって言われても、いや、今は笑えない…みたいに思ってた時もありますけどね(笑)」
「でも、スペイン滞在でちょっと変わったかな、やっぱり。みんなが笑顔で楽しそうにしていて、自分がスペインで撮った時の写真を後から見返すとすっごい口角上がってて、やっぱり日本で撮った時の笑顔とはなんか違うんですよね。この感じいいなぁという」「日本にいてもそういう笑顔が出せるようになりたいなぁって思いました」
来週も引き続き、村治佳織さんをお迎えします。