元アナウンサーの前田有紀さんがお花の世界に飛び込んだわけ(2021/10/30 放送)
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今週は、フラワーアーティストの前田有紀さんをお迎えしました。
フラワーアーティストで2児の母でもあるという前田さん。2003年から2013年までの10年間はテレビ朝日にアナウンサーとして勤務していて、サッカー情報番組『やべっちFC』やサッカー中継、バラエティ番組などでも活躍していました。
フラワーアーティストで2児の母でもあるという前田さん。2003年から2013年までの10年間はテレビ朝日にアナウンサーとして勤務していて、サッカー情報番組『やべっちFC』やサッカー中継、バラエティ番組などでも活躍していました。
「私、4つ上の姉がいるんですけれども、テレビ東京で先に働いていたんですね。姉は記者をやっておりました。政治部とか経済部の記者を渡り歩いていて。そんな中で、先に働いている姉に、テレビ局ってどう?って聞いたところ、365日同じ日がなくてホントに楽しいよ!っていうふうに勧めてくれて」
「商社も受けようと思ってたし、広告代理店も受けようと思っていたし。そんな中の一つとしてメディア、その中でも早かったのがテレビ朝日のアナウンサーの試験で。受けたところ、ホントに運良く受かることができて、けっこう勢いでアナウンサーになっちゃいました」
「やりたいからなれるものではないと思ってたので、なんか受けてみようかなという感じではあったけど…パイロットとかも受けましたね、そういえば。航空会社のパイロット(笑)」
「やりたいことがホントにたくさんある学生だったので。海外にもいっぱい行ける商社もいいなぁとか、いろんなCM手掛ける広告代理店も面白そうだ、みたいな感じで、すごく興味が広くて」
「知ってる企業はぜんぶ受けるぞ!みたいな(笑)感じの気持ちでおりました」
横浜出身の前田さん。街育ちで、小学校1年生から電車で通学していたそうです。
「東京の学校に通学してたんですよ。でも、満員電車でいつもビルばっかり見て通学してる、みたいな感じの中で、自然がすごく好きな子だったんですね。身の回りに自然がないからこそ、自然が恋しいなぁと思って育ってきました」
そして、高校1年生の時には一人でモンゴル旅行に行ったとか。
「周囲が受験を意識して塾に通い始めたりする時期なんですけれども、周りが夏期講習とかに行く中で、私は子供の頃からの自然への憧れがだんだん積み重なってきて、高校1年生の時に爆発しちゃったんですね(笑)。それで、モンゴルの手つかずの自然を一度この目で見て人生を考えたい、って思うようになったんです。モンゴルってホントに大草原が広がってて、360度ホントに草原っていう世界なので、そこに行ったらこれからの人生の何かヒントがあるんじゃないかって」
「もう一つの要因は、乗馬が好きで、子供の頃から乗馬をしていたんですね。で、日本ですと、すごい狭い枠の中で走ることが多いんですけど、一度でいいから枠のないところを走ってみたい、っていうふうに思ったんですね」
「その時期にちょうど司馬遼太郎の『モンゴル紀行』って本を読んで、モンゴルの星空の描写とかを見たら、もうここしかない!って思って。この星空と草原を思いっきり馬で走るっていうのを体験したら、きっと私はこの人生の先のヒントが見つかるはずだ、って高校生ながらに考えて。親に頼み込んでお金を出してもらって、一人でツアーに参加して行ってきました」
前田さんはモンゴル旅行を経験して変わったことをこう振り返ってくれました。
「行ってみたらホントに何もない場所で、ゲルというテントで寝泊まりするんですけど、物に溢れた日本から来た私が、何もないテントで生活して、馬に乗って、ホントに何もない所に行ったら、不思議と心が満たされて幸せだったんですよ」
「それまで、物を買うことで幸せになったりできるのかな、ってなんとなく思ってたんですけど、あ、そうじゃないんだ!自然に関わっていて、自然の中に包まれてるとこれだけ心満たされるんだ!っていう発見があって。で、子供の頃からの憧れもあったので、やっぱりそうか!やっぱり自然の力ってすごいんだ!っていうのを実感して。そこからは自然が好きだ!っていう気持ちはいつも持って生きていくようになりましたね」
「ちなみに、私の夫もモンゴルに行ったことがある人で、そういった話でもちょっと会話が弾んで結婚することになったんですけど(笑)。地味にその時の経験が生かされているという」
「そこまでホントに私、勉強ができなくて、成績もいつも悪かったんですけど、モンゴルに行ってすごく変わって。世の中に対しての意識がすごく積極的になって、自分自身でこう、生きていくぞ!みたいな。なんか変わったんです。で、勉強もするようになって」
「やりたいこと、見てみたい風景を自分の力で見に行くっていう、実行できたことの達成感がなんかすごく自分を前進させてくれた気がします」
前田さんが花に関する仕事を意識するようになったのは、テレビ朝日に勤めていた頃だったそうです。
「5年目ぐらいでだいぶ仕事にも慣れてきて、ふと、自分の暮らしに目を向けるきっかけがあったんですね。で、そうすると、ほとんど家にはもちろんいなくて、仕事ばっかりしてて、帰ってくると家が散らかってて(笑)。なんとなく、これって幸せなのかな?どうなのかな?って思うようになったんですね。仕事はホントに楽しかったですし、充実してましたが、暮らしを幸せにしてこそ人生じゃないかなって思うようになって、そこでお花を飾り始めたっていうのがきっかけです」
「それこそ24時間スーパーのレジのところにあった花を買って飾ったのが最初だったんですけど…。やっぱり自然が恋しかったので、花を飾ることで自然の息遣いを部屋の中でも感じたいって思ったんでしょうね」
「それがもうホント不思議なんですけど、花って一輪あるのとまったくないのはぜんぜん違うんです。一輪でもぜんぜん違うんですよ。すごく部屋がまず明るくなって、季節が急に部屋の中に飛び込んできた。で、ゆっくり咲いていって枯れていく姿に、なんかせかせか生きてた自分とは違う時間軸を持ったお花の存在っていうのが、すごく安らぎに変わっていったんですね」
「あとは、疲れて帰ってきて、お花が咲いてるだけで元気をもらえたり、慰められたり、背中を押してくれたり。花がホントにいろんなことをしてくれるようになった気がしたんですよね」
テレビ朝日での10年間について「駆け抜けました。思い残すことがないぐらいに」とおっしゃっていた前田さん。2013年にテレビ朝日を辞めてお花の仕事に挑戦することになります。
「少しずつ少しずつ、花を飾る量を増やしたり、習いに行ったり、いろんなことをするようになって。それで、そうこうしていくうちにふと、花を仕事にしてみたいなって思うようになったんですよ」
「ただ、私はテレビ局の会社員で、ホントに人生をしっかりと歩んでいく中で、親にちょっと言ったら、もう何言ってんの!やめなさい、やめなさい!みたいな。かじりついてでも会社員でいるべき!って言われて。特に一番身近な親もそういうふうに言ってたので、あ、そうだよね、ちょっと夢を見すぎかなと思って、ちょっと諦めたりしてた時期もあったんですけど…」
「でも、少し経つと、いや、やっぱり自然に関わる仕事をやってみたい、人生一度きりだしって。どんどんそっちの方に気持ちが向くようになってきて。で、そういう中で、親も説得して、自分の中でも準備をちょっとずつ進めて。教室に休みの日に習いに行って。生花も習ったし、アレンジメントも習ったりして突破口を探してたんですけど」
そして、イギリスに留学をしたいと思ったことが、大きく踏み出すきっかけになったそうです。
「どんな職業が自然に関わる仕事にあるのかな?って調べてたんですよ。花屋だったり、造園だったり、ガーデニングだったりいろいろある中で、なにかとイギリスって出てくるんですよ。ガーデニングでもイングリッシュ・ガーデンとか、お花もイギリス・スタイルのお花の作り方とか」
「そういう中で、コッツウォルズっていう地方の風景を見つけたんです。すっごい綺麗で、中世の景色がそのまま残ってる、もうホントに田園地帯なんです。で、そこに一度行ってみようって思ったんです。そこに行ってみれば、いろんなことがわかる気がするって」
「たまたまコッツウォルズでガーデニングのインターンを募集してるお城があったんですよ。中世のお城で、8つの庭があって、そこでのインターンを募集してますという所があって。そこに応募して、来てもいいよっていうふうになって、それで行くことにしました」
「で、それが決まってから会社にも辞めることを伝えて、行きました。(仕事を休むのではなく)辞めるのは辞めるっていう感じで。(お母さんも)やってみたら、って最後は言ってくれましたね。いや、でも相当心配だったと思いますけどね」
「すごく不安もあったんですけど。やっぱり会社員辞めるってすごい大っきなことだなと思って。でも、どうしてもその不安を好奇心が上回っていくんですよね。そうじゃない人生が見てみたいっていう。で、コッツウォルズの風景も見てみたいし、そこでのインターンもやってみたい、自分なりに何か見つけられるんじゃないかっていう気持ちで行きましたね」
来週も引き続き、前田有紀さんをお迎えします。