パックンが貧困生活の中で培った逆境力を語る(2021/06/26 放送)
Podcast
今週は、パックンことパトリック・ハーランさんをお迎えしました。
アメリカのコロラド州育ちで、大学卒業後に来日したパックン。日本で組んだお笑いコンビ、パックンマックンは今年で25周年なんだとか。
「パックンマックンは、講演会っていう形で、年に70回ぐらい、舞台を踏んでちゃんと漫才もやってるんですよ、今も!だから現役中なんですよ。ただ、文化人のイメージが強いから、これめっちゃオイシイですよ。ちょっと面白いこと言っただけでウケるんです。お笑い芸人はちょっと面白いじゃダメじゃないですか。けっこう下駄を履かしてもらってるんです(笑)」
今年、『逆境力 貧乏で劣等感の塊だった僕が、あきらめずに前に進めた理由』という本を発表したパックン。この本のタイトルに込めた思いをこう話してくれました。
「『貧乏力』っていうタイトルにしようかなと思ってたんですけど、でも貧乏を勧めるわけにはいかないんです。ただ、貧乏育ちだったことで、僕はいろいろ力がついたのは間違いない。で、貧乏であったことは、別に恥でも恥ずかしいことでもなんでもないんです。みんなにざっくばらんに話してもいいと思うし。もしそういう状況に置かれてる皆さんも、僕みたいに劣等感にならず、それはチャンスだと、自分に他の方にない力があるはずだ!と、自信を持ってほしいという意味で『貧乏力』かなと思ったんだけど、結局『逆境力』にして良かったかなと思うんです」
パックンが貧困に苦しむようになったのは、両親が離婚してお父さんがいない生活になってからだったそうです。
「一番苦しかったのは、小学校3〜4年生の頃でしたね。9歳、10歳とかその辺りですね。一時期は生活保護を受けることもあって、当時の工夫は凄かったですよ」
「例えば、これは本の中に書いてあるんですけど、自分のお母さんスゲーなぁと今振り返ってみて思うのは…アメリカの水道料金を計る、ちょっと特別なシステムがありますね。2月だけの水道量を1ヶ月計って、それ×12で年間の水道料金が決まるっていう、そういう制度だったんですね。で、お母さんはホントに賢いっていうか、セコい(笑)っていうか、なんていうかわかんないけど、よし!パトリック!この1ヶ月だけ我慢しよう!つって。おトイレはお友達の家でお借りなさい!って」
「で、お風呂はないないない。シャワーは浴びていいけど、あったまるまで待つのはダメ。寒いうちに入れ!つって、冷たいシャワーを…コロラドの2月ですよ?雪国の2月ですから、もうこれだけでもけっこう『逆境力』は付いたんですよ」
そんな暮らしの中でも、パックンはお母さんを喜ばせようと頑張っていたとか。
「それがお笑い芸人の原点ですね。ちょっとモノマネしたりヘンな動きしたり変顔したりして、泣いてるお母さんをどうにか笑かせようと…」
貧困層に現金ではなくフードスタンプを配る制度があるというアメリカ。パックンにはこのフードスタンプに関する悲しい思い出があるそうです。
「食品券みたいなものですよ。これ、本にも詳しく書いてるんですけど、なんで僕が子供の頃から悲しい思いをしてるかというと、その食品券の使い勝手が非常に悪くて」
「例えば、家に犬がいたんです。ポピーちゃんっていうんですけど、ポピーちゃんがお腹すいてるから、お母さんと2人でスーパーに行って、僕ら人間の食品と一緒にドッグフードも買おうとすると、ドッグフードには食品券フードスタンプが使えないんですよ。お母さんがレジの方に注意されてる。でも、お金がない、現金がない。でも、家に犬がいる。貧困層はペットを飼っちゃいけないのか?そこまで制限しようとしてるのか?」
「そこで、例えばレジの方がマネージャーとか店長さんを呼んで、この方が食品券をこれに使おうとしてるんですけど、どうしますか?とか言うと、レジに並んでる近所の人がみんな、我々を変な目で見るんですよ。現金配った方がどんなに使い勝手が良くて、管理費も低く済まして効率的なのか…。我々が(お金の管理ができないとして)蔑視されてんだと」
「めっちゃ悲しかった。お母さんも泣いてるし。犬はお腹すいてるし(笑)。9歳の俺も悲しいし。貧困だけじゃなくてやっぱり制度の問題が人を苦しませてるなと思ったんですよ」
一方、アメリカには日本にはない良いところもあるようです。
「例えば、遠足に費用がかかるんですけど、行けない人、その費用に問題がある方は放課後にちょっと声出してくださいって。なんとかしますからって先生が言ったりするわけ。で、先生がPTAの方とか近くの企業とかにお願いして、このクラスから何名が遠足費出せないからお願いできますか?と言って交渉して、お金出してくれる人を探してくれるのもいいことですよね。それは日本で聞いたことないですね」
そして、貧困生活を乗り越えて、名門中の名門ハーバード大学に進学したパックン。
「実際、僕がどうやって学費を払ったかといいますと、政府からお金を借りた。大学から少しお金をもらった。自分もアルバイトをしながらやった。お父さんお母さんも少し出した。そしてお母さんが知り合いからガンガン借り入れして、行かしてもらったんですよ」
ハーバードを選んだ理由についてはこう話してくれました。
「行けるからですよ(笑)。なんでハーバードに行ったのか?ってよく聞かれますけど、入ったから行きましたよ、って言いますよ。恵さん入ったら行かない?絶対行きますよね?」
「(ハーバードに入れたのは)天才だからですよ。ズバッと言いましたけど(笑)。でもアメリカの大学は、ダイバーシティ(多様性)を求めてるんですよ、あの時代から。それは地域的な多様性もそうですし、人種的な多様性、今だったら性的指向の多様性。で、当時は僕も貧困枠で少し入ったんじゃないかな、地域のダイバーシティ枠で入ったんじゃないかなとちょっと思ったんですよ。でも、実際に行ってみれば、周りに負けないぐらいの才能・学力もあって。で、ハーバードでもじゅうぶん発揮できたから」
パックンは、ご自身の精神力の強さについてこう話してくれました。
「言い訳する人カッコ悪いと思うんだよね。しょうがないの…お金がない、とか、しょうがないの…お父さんがいないの、とか。そういう言い訳はできるんですよ、しようと思えば。でも、俺がそんな言い訳をしてんのを人に聞かれたらカッコ悪いなと思う。なんか自分の美学なだけですよ」
「だからね、僕は『逆境』とこれだけ大きな声で言ってんだけど、ものすごく恵まれてるんですよ。こんだけ家族に愛されてるし、こんだけ健康体であるし」
「本にも書いたんですけど、苦労してる自分がカッコいいと思う。なんだろう、文学からの影響かもしれないですね」
「あと、モテたい。モテなきゃ。お笑いができる人は一番ですよ、その中でも。だからもう落とせるようになったんですよ。お笑いも異性も(笑)…チャンチャン。それが『落とし力』でもいいんですよ。とにかく自分が苦労するのも億劫じゃない。そういうふうになれたのは得なんですよ」
著書『逆境力』の中で日本の貧困問題についても書いているパックンは、続けてこう話してくれました。
「もちろん、みんなが大学入らなきゃいけないわけではないし、成績が良くなきゃいけないわけではないし、この人生が唯一の正解ではない。ただ、自分の正解となる人生を見つけれるだけの環境を全国民に提供するのが大事かなと思うんですよ」
来週も引き続き、パトリック・ハーランさんをお迎えします!
アメリカのコロラド州育ちで、大学卒業後に来日したパックン。日本で組んだお笑いコンビ、パックンマックンは今年で25周年なんだとか。
「パックンマックンは、講演会っていう形で、年に70回ぐらい、舞台を踏んでちゃんと漫才もやってるんですよ、今も!だから現役中なんですよ。ただ、文化人のイメージが強いから、これめっちゃオイシイですよ。ちょっと面白いこと言っただけでウケるんです。お笑い芸人はちょっと面白いじゃダメじゃないですか。けっこう下駄を履かしてもらってるんです(笑)」
今年、『逆境力 貧乏で劣等感の塊だった僕が、あきらめずに前に進めた理由』という本を発表したパックン。この本のタイトルに込めた思いをこう話してくれました。
「『貧乏力』っていうタイトルにしようかなと思ってたんですけど、でも貧乏を勧めるわけにはいかないんです。ただ、貧乏育ちだったことで、僕はいろいろ力がついたのは間違いない。で、貧乏であったことは、別に恥でも恥ずかしいことでもなんでもないんです。みんなにざっくばらんに話してもいいと思うし。もしそういう状況に置かれてる皆さんも、僕みたいに劣等感にならず、それはチャンスだと、自分に他の方にない力があるはずだ!と、自信を持ってほしいという意味で『貧乏力』かなと思ったんだけど、結局『逆境力』にして良かったかなと思うんです」
パックンが貧困に苦しむようになったのは、両親が離婚してお父さんがいない生活になってからだったそうです。
「一番苦しかったのは、小学校3〜4年生の頃でしたね。9歳、10歳とかその辺りですね。一時期は生活保護を受けることもあって、当時の工夫は凄かったですよ」
「例えば、これは本の中に書いてあるんですけど、自分のお母さんスゲーなぁと今振り返ってみて思うのは…アメリカの水道料金を計る、ちょっと特別なシステムがありますね。2月だけの水道量を1ヶ月計って、それ×12で年間の水道料金が決まるっていう、そういう制度だったんですね。で、お母さんはホントに賢いっていうか、セコい(笑)っていうか、なんていうかわかんないけど、よし!パトリック!この1ヶ月だけ我慢しよう!つって。おトイレはお友達の家でお借りなさい!って」
「で、お風呂はないないない。シャワーは浴びていいけど、あったまるまで待つのはダメ。寒いうちに入れ!つって、冷たいシャワーを…コロラドの2月ですよ?雪国の2月ですから、もうこれだけでもけっこう『逆境力』は付いたんですよ」
そんな暮らしの中でも、パックンはお母さんを喜ばせようと頑張っていたとか。
「それがお笑い芸人の原点ですね。ちょっとモノマネしたりヘンな動きしたり変顔したりして、泣いてるお母さんをどうにか笑かせようと…」
貧困層に現金ではなくフードスタンプを配る制度があるというアメリカ。パックンにはこのフードスタンプに関する悲しい思い出があるそうです。
「食品券みたいなものですよ。これ、本にも詳しく書いてるんですけど、なんで僕が子供の頃から悲しい思いをしてるかというと、その食品券の使い勝手が非常に悪くて」
「例えば、家に犬がいたんです。ポピーちゃんっていうんですけど、ポピーちゃんがお腹すいてるから、お母さんと2人でスーパーに行って、僕ら人間の食品と一緒にドッグフードも買おうとすると、ドッグフードには食品券フードスタンプが使えないんですよ。お母さんがレジの方に注意されてる。でも、お金がない、現金がない。でも、家に犬がいる。貧困層はペットを飼っちゃいけないのか?そこまで制限しようとしてるのか?」
「そこで、例えばレジの方がマネージャーとか店長さんを呼んで、この方が食品券をこれに使おうとしてるんですけど、どうしますか?とか言うと、レジに並んでる近所の人がみんな、我々を変な目で見るんですよ。現金配った方がどんなに使い勝手が良くて、管理費も低く済まして効率的なのか…。我々が(お金の管理ができないとして)蔑視されてんだと」
「めっちゃ悲しかった。お母さんも泣いてるし。犬はお腹すいてるし(笑)。9歳の俺も悲しいし。貧困だけじゃなくてやっぱり制度の問題が人を苦しませてるなと思ったんですよ」
一方、アメリカには日本にはない良いところもあるようです。
「例えば、遠足に費用がかかるんですけど、行けない人、その費用に問題がある方は放課後にちょっと声出してくださいって。なんとかしますからって先生が言ったりするわけ。で、先生がPTAの方とか近くの企業とかにお願いして、このクラスから何名が遠足費出せないからお願いできますか?と言って交渉して、お金出してくれる人を探してくれるのもいいことですよね。それは日本で聞いたことないですね」
そして、貧困生活を乗り越えて、名門中の名門ハーバード大学に進学したパックン。
「実際、僕がどうやって学費を払ったかといいますと、政府からお金を借りた。大学から少しお金をもらった。自分もアルバイトをしながらやった。お父さんお母さんも少し出した。そしてお母さんが知り合いからガンガン借り入れして、行かしてもらったんですよ」
ハーバードを選んだ理由についてはこう話してくれました。
「行けるからですよ(笑)。なんでハーバードに行ったのか?ってよく聞かれますけど、入ったから行きましたよ、って言いますよ。恵さん入ったら行かない?絶対行きますよね?」
「(ハーバードに入れたのは)天才だからですよ。ズバッと言いましたけど(笑)。でもアメリカの大学は、ダイバーシティ(多様性)を求めてるんですよ、あの時代から。それは地域的な多様性もそうですし、人種的な多様性、今だったら性的指向の多様性。で、当時は僕も貧困枠で少し入ったんじゃないかな、地域のダイバーシティ枠で入ったんじゃないかなとちょっと思ったんですよ。でも、実際に行ってみれば、周りに負けないぐらいの才能・学力もあって。で、ハーバードでもじゅうぶん発揮できたから」
パックンは、ご自身の精神力の強さについてこう話してくれました。
「言い訳する人カッコ悪いと思うんだよね。しょうがないの…お金がない、とか、しょうがないの…お父さんがいないの、とか。そういう言い訳はできるんですよ、しようと思えば。でも、俺がそんな言い訳をしてんのを人に聞かれたらカッコ悪いなと思う。なんか自分の美学なだけですよ」
「だからね、僕は『逆境』とこれだけ大きな声で言ってんだけど、ものすごく恵まれてるんですよ。こんだけ家族に愛されてるし、こんだけ健康体であるし」
「本にも書いたんですけど、苦労してる自分がカッコいいと思う。なんだろう、文学からの影響かもしれないですね」
「あと、モテたい。モテなきゃ。お笑いができる人は一番ですよ、その中でも。だからもう落とせるようになったんですよ。お笑いも異性も(笑)…チャンチャン。それが『落とし力』でもいいんですよ。とにかく自分が苦労するのも億劫じゃない。そういうふうになれたのは得なんですよ」
著書『逆境力』の中で日本の貧困問題についても書いているパックンは、続けてこう話してくれました。
「もちろん、みんなが大学入らなきゃいけないわけではないし、成績が良くなきゃいけないわけではないし、この人生が唯一の正解ではない。ただ、自分の正解となる人生を見つけれるだけの環境を全国民に提供するのが大事かなと思うんですよ」
来週も引き続き、パトリック・ハーランさんをお迎えします!