鴻上尚史さんが今も校則問題を語る理由とは(2021/04/03 放送)
Podcast
今回は、鴻上尚史さんをお迎えしました。
ご自身の肩書について“作家・演出家”だとおっしゃっていた鴻上さん。俳優でもありますが、ご自身の意欲とは裏腹にここ10年ぐらいはオファーがないんだとか。
「みんな勘違いしてて、演出家やってると(俳優として呼んでも)うるさいんじゃないか?とかって思ってるんだと思うんですけど、逆なんですよ。演出家は演出家の気持ちがわかるので、そうか…これ台詞ちょっと中途半端でマズいけど、ここでどうしても対立してもらわないと困るんだな…わかった!じゃあ怒る理由ないけど怒ろう!みたいに、ちゃんと演出家の気持ちになれるんですよ」
演出家という存在について、「暗闇の中で目的地が見えないのに、向こうなんだよ!って叫んでる人をもの凄く頼りに思えたり。そういうのがあるから演出家に物凄く憧れてる、そして尊敬してる、そういう人の言うことは絶対と思いたい、みたいな」というのは恵さん。鴻上さんはそれを受けて、こう話してくれました。
「でも、演出家になってみたら、みんながみんなわかってるわけじゃないから、逆に“わかんない”っていうことをシェアするのがどんだけ大事かっていうのがやっぱわかってきますよね。俺はとりあえず真っ暗闇の中で、こっちだ!って言うけど、これに対して100%の保証もないし、自信もないんだよ。でも、どっかを指差さないと、ここでみんなうずくまってしまうから、とりあえずこっち指差すね、っていう。で、それが間違ってたら、その責任は俺が取るよっていう。そこまでは言いますよね」
また、鴻上さんは演出家についてこんなこともおっしゃっていました。
「劇団とか持ってれば、何やってもお前のせいだって言われるのが劇団の演出家なわけですよ。つまり、芝居を観に行きました、それで俳優が台詞をスコーンと飛ばしました、それでストーリーがつながんなくなりました、なんかこの脚本意味わかんないよね、っていうふうに言われたりするのは、やっぱり全部引き受けるわけですよ。背負ってるのはたぶん作家と演出家と主役なんですよね」
鴻上さんは、愛媛県・新居浜市出身の現在62歳。高校生の頃から演劇や作家といった表現をする仕事で食べていきたいと思っていたそうで、早稲田大学時代に第三舞台という劇団を立ち上げます。
「22で劇団を作った時には、大学のサークルでしたけど、演劇を一生のものにしたいっていうふうに決意した俳優志望のやつもいたので、やっぱ俺は人の人生を背負ったわけだから、ここからはもう後戻りできないぞ、と思いましたね」
鴻上さんは、70年代半ばの高校時代に校則問題などに関して学校側と闘ったこともあったとか。
「物語を作ったり、みんなとワイワイやるのがやっぱり好きなんですよ。だから、演劇なのかなぁ…。高校時代も、校則とかは結果っていうか。こういうものを作りたいんだ!ってのがある、こういうものを作りたいのにそれを許してもらえない!なんでだ?校則が禁止してる!それおかしかねえか?っていう」
「僕がね、いまだに校則に対して文句言ってんのは、昭和の時代からだんだんその校則が消えていってるんだったら、たぶんほっといたと思うんだけど、今ねぇ厳しくなってるんですよ」
「今の若いやつの方が、もの凄い従順になってきてるんですよ。すっごいおとなしくなってるし、すっごい規則に従うし。僕らの時は、規則は破るためにあるし、破っても、先生も結構、しょうがねえなぁお前…だったのが、今はもう生徒同士が、なんでそういうことするわけ?っていう。規則っていうものがあるのにそれを破ることが信じられないっていう。そんなことしていいんですか?っていうふうに思うやつがホントに多くなってきてるのが、僕は日本の大問題だというふうに思ってるんですよね」
5月15日(土)から6月13日(日)まで、東京の六本木トリコロールシアターにて上演される鴻上さんの新作『アカシアの雨が降る時』。主演は『キャッツ』や『マンマ・ミーア』の日本オリジナルメンバーでもあったという元・劇団四季の久野綾希子さんが努めます。
「(久野さんとは)1回お芝居を一緒にやって。凄いコメディができる人なので、ああこの人いいな、素敵だなと思って」
今回の『アカシアの雨が降る時』で久野綾希子さんが演じるのは、自分のことを20歳だと思い込んでしまう70歳の女性です。
「ちょっと認知症が入って、自分のことをハタチだと思い込み…で、自分の孫が、自分の旦那っていうかその当時の恋人と瓜二つなので、自分の孫を恋人だというふうに思い込み…で、ハタチがちょうど大学生の時なので、1972年ぐらいの設定なんですけど、72年のキャンパスに行こう!っていうふうに戻っていって、てんやわんやが始まるっていう話なんですよ」
そんな『アカシアの雨が降る時』の出演者は3人で、久野さんの息子役は、カムカムミニキーナという劇団の座長さんでもある松村武さん。また、孫役として、今大人気の2.5次元で(鴻上さん曰く)“ブイブイいわしてる”若手の前田隆太朗さんが出演します。
そして、鴻上さんはコロナ禍での演劇の演出についてこんなことをおっしゃっていました。
「それこそキスシーンとかは俳優さんは絶対嫌がるだろうなっていうか、怯えるだろうなと思うから…。もちろんね、ここは近づかないと他に表現のしようがない、っていうのはそれを選ぶんだけど、いや、近づかなくても他の表現があるんじゃないかい?っていうところはやっぱ凄い考えますね」
東邦学園短期大学の教授でもある鴻上さん。「世の中の人はもう少し演劇を学んでみては?」といった問いかけもしていて、今回の番組でも演劇教育についてこんなことを話してくれました。
「演劇教育っていうと凄い誤解されて、すぐみんな、学芸会やれってこと?とか、え、芝居やれってこと?って言うんだけど、いや、そうじゃなくて、役割を演じるっていうのがじゅうぶん演劇なので」
「例えば、男の人でね、わきまえない女が多いんだ、とか言ってる人がいるとしたら、その人にカツラとか…ま、恥ずかしかったら別に“女性”っていう役でも全然いいんだけど…。で、周りが、女は学問したって意味ねえだろ!とか、早く嫁にいけ!とかっていうふうにさんざん言って、その人が自分が女だと思って反論してください、とかって。役を生きるっていうのがまさに演劇教育なので、それは凄く大事っていうか有効だと思います」
来週も引き続き、鴻上尚史さんをお迎えします。
ご自身の肩書について“作家・演出家”だとおっしゃっていた鴻上さん。俳優でもありますが、ご自身の意欲とは裏腹にここ10年ぐらいはオファーがないんだとか。
「みんな勘違いしてて、演出家やってると(俳優として呼んでも)うるさいんじゃないか?とかって思ってるんだと思うんですけど、逆なんですよ。演出家は演出家の気持ちがわかるので、そうか…これ台詞ちょっと中途半端でマズいけど、ここでどうしても対立してもらわないと困るんだな…わかった!じゃあ怒る理由ないけど怒ろう!みたいに、ちゃんと演出家の気持ちになれるんですよ」
演出家という存在について、「暗闇の中で目的地が見えないのに、向こうなんだよ!って叫んでる人をもの凄く頼りに思えたり。そういうのがあるから演出家に物凄く憧れてる、そして尊敬してる、そういう人の言うことは絶対と思いたい、みたいな」というのは恵さん。鴻上さんはそれを受けて、こう話してくれました。
「でも、演出家になってみたら、みんながみんなわかってるわけじゃないから、逆に“わかんない”っていうことをシェアするのがどんだけ大事かっていうのがやっぱわかってきますよね。俺はとりあえず真っ暗闇の中で、こっちだ!って言うけど、これに対して100%の保証もないし、自信もないんだよ。でも、どっかを指差さないと、ここでみんなうずくまってしまうから、とりあえずこっち指差すね、っていう。で、それが間違ってたら、その責任は俺が取るよっていう。そこまでは言いますよね」
また、鴻上さんは演出家についてこんなこともおっしゃっていました。
「劇団とか持ってれば、何やってもお前のせいだって言われるのが劇団の演出家なわけですよ。つまり、芝居を観に行きました、それで俳優が台詞をスコーンと飛ばしました、それでストーリーがつながんなくなりました、なんかこの脚本意味わかんないよね、っていうふうに言われたりするのは、やっぱり全部引き受けるわけですよ。背負ってるのはたぶん作家と演出家と主役なんですよね」
鴻上さんは、愛媛県・新居浜市出身の現在62歳。高校生の頃から演劇や作家といった表現をする仕事で食べていきたいと思っていたそうで、早稲田大学時代に第三舞台という劇団を立ち上げます。
「22で劇団を作った時には、大学のサークルでしたけど、演劇を一生のものにしたいっていうふうに決意した俳優志望のやつもいたので、やっぱ俺は人の人生を背負ったわけだから、ここからはもう後戻りできないぞ、と思いましたね」
鴻上さんは、70年代半ばの高校時代に校則問題などに関して学校側と闘ったこともあったとか。
「物語を作ったり、みんなとワイワイやるのがやっぱり好きなんですよ。だから、演劇なのかなぁ…。高校時代も、校則とかは結果っていうか。こういうものを作りたいんだ!ってのがある、こういうものを作りたいのにそれを許してもらえない!なんでだ?校則が禁止してる!それおかしかねえか?っていう」
「僕がね、いまだに校則に対して文句言ってんのは、昭和の時代からだんだんその校則が消えていってるんだったら、たぶんほっといたと思うんだけど、今ねぇ厳しくなってるんですよ」
「今の若いやつの方が、もの凄い従順になってきてるんですよ。すっごいおとなしくなってるし、すっごい規則に従うし。僕らの時は、規則は破るためにあるし、破っても、先生も結構、しょうがねえなぁお前…だったのが、今はもう生徒同士が、なんでそういうことするわけ?っていう。規則っていうものがあるのにそれを破ることが信じられないっていう。そんなことしていいんですか?っていうふうに思うやつがホントに多くなってきてるのが、僕は日本の大問題だというふうに思ってるんですよね」
5月15日(土)から6月13日(日)まで、東京の六本木トリコロールシアターにて上演される鴻上さんの新作『アカシアの雨が降る時』。主演は『キャッツ』や『マンマ・ミーア』の日本オリジナルメンバーでもあったという元・劇団四季の久野綾希子さんが努めます。
「(久野さんとは)1回お芝居を一緒にやって。凄いコメディができる人なので、ああこの人いいな、素敵だなと思って」
今回の『アカシアの雨が降る時』で久野綾希子さんが演じるのは、自分のことを20歳だと思い込んでしまう70歳の女性です。
「ちょっと認知症が入って、自分のことをハタチだと思い込み…で、自分の孫が、自分の旦那っていうかその当時の恋人と瓜二つなので、自分の孫を恋人だというふうに思い込み…で、ハタチがちょうど大学生の時なので、1972年ぐらいの設定なんですけど、72年のキャンパスに行こう!っていうふうに戻っていって、てんやわんやが始まるっていう話なんですよ」
そんな『アカシアの雨が降る時』の出演者は3人で、久野さんの息子役は、カムカムミニキーナという劇団の座長さんでもある松村武さん。また、孫役として、今大人気の2.5次元で(鴻上さん曰く)“ブイブイいわしてる”若手の前田隆太朗さんが出演します。
そして、鴻上さんはコロナ禍での演劇の演出についてこんなことをおっしゃっていました。
「それこそキスシーンとかは俳優さんは絶対嫌がるだろうなっていうか、怯えるだろうなと思うから…。もちろんね、ここは近づかないと他に表現のしようがない、っていうのはそれを選ぶんだけど、いや、近づかなくても他の表現があるんじゃないかい?っていうところはやっぱ凄い考えますね」
東邦学園短期大学の教授でもある鴻上さん。「世の中の人はもう少し演劇を学んでみては?」といった問いかけもしていて、今回の番組でも演劇教育についてこんなことを話してくれました。
「演劇教育っていうと凄い誤解されて、すぐみんな、学芸会やれってこと?とか、え、芝居やれってこと?って言うんだけど、いや、そうじゃなくて、役割を演じるっていうのがじゅうぶん演劇なので」
「例えば、男の人でね、わきまえない女が多いんだ、とか言ってる人がいるとしたら、その人にカツラとか…ま、恥ずかしかったら別に“女性”っていう役でも全然いいんだけど…。で、周りが、女は学問したって意味ねえだろ!とか、早く嫁にいけ!とかっていうふうにさんざん言って、その人が自分が女だと思って反論してください、とかって。役を生きるっていうのがまさに演劇教育なので、それは凄く大事っていうか有効だと思います」
来週も引き続き、鴻上尚史さんをお迎えします。
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