写真家の石川直樹さんがヒマラヤに通う理由(2021/01/23 放送)
今週は、写真家の石川直樹さんにリモートでお話を伺いました。
世界中を旅しながら写真を撮っている石川さん。出身は東京の初台で、ご本人曰く「周りに自然がなかったから逆に山とか川とか海への憧れがあったのかもしれません」とのこと。高校2年生の時に行った初めての海外旅行は、インドへの一人旅だったそうです。
「他の子たちは勉強してテストに備えて…とかいろいろやってますけれど、自分は本ばっかり読んでて。旅の本を読んだり、探検とか冒険の本を読んだりして。それで、外の世界っていうか、まだ見たことのない、いろんな未知の世界に凄く憧れがあって。そこに行くことばっかり考えてたんですよね」
石川さんは、初めてのインド旅行をこう振り返ってくれました。
「アメリカとかヨーロッパへの憧れもあったんですけど、物価が非常に高くて、なかなか自分の少ないお金の中ではやりくりできなくて。アジアだったら1泊数百円の宿なんかもあるので、それで行くことにしたんですけど。他にも、高校の世界史の先生がインド好きの先生で、昔のインド旅行の話とか思い出話にしてくれたんですよね。そういう影響があります」
「普通の親なんで(笑)当然反対しますけれども、ちょっと嘘ついて行っちゃいました。アジアにどうしても行きたいんだったら、もっと治安の良いシンガポールとかそういう場所だったら行ってもいいよ、って言われたので、シンガポールの方に行ってくるよ、って言ってインドに行っちゃったんですけど。今思えば、ほとんど家出みたいな感じで」
「数メートル歩くごとに1つぐらい驚きがあるような世界だったし、自分が常識だと思ってることが、インドでは常識ではない。例えば、ご飯を手で食べるとか、トイレットペーパーを使わないで手で用を足したりとか。そういういろんな場面に出くわして、世界っていうのはホントに多様で、当然ですけど、広いんだな、っていう実感が湧いてきたんですよね」
カヌーイストの野田知佑さんの本などに影響を受け、世界を旅する写真家や作家・ライター、ジャーナリストといった職業に憧れたという石川さん。インド旅行を経験してからは「旅をしながら生きていけばいいや」という気持ちだったそうですが、それでも高校卒業後は大学に入り、大学院にも進学します。
「僕が凄く慕ってたカヌーイストの野田さんっていう人がいたんですけど、その野田さんなんかと話してて、お前が将来ジャーナリストみたいなことになりたいんだったら、そして大学とかに行ける環境にあるんだったら行っといた方がいいぞ、っていうのをとくとくと諭されてですね」
世界中を旅しながら写真を撮っている石川さん。出身は東京の初台で、ご本人曰く「周りに自然がなかったから逆に山とか川とか海への憧れがあったのかもしれません」とのこと。高校2年生の時に行った初めての海外旅行は、インドへの一人旅だったそうです。
「他の子たちは勉強してテストに備えて…とかいろいろやってますけれど、自分は本ばっかり読んでて。旅の本を読んだり、探検とか冒険の本を読んだりして。それで、外の世界っていうか、まだ見たことのない、いろんな未知の世界に凄く憧れがあって。そこに行くことばっかり考えてたんですよね」
石川さんは、初めてのインド旅行をこう振り返ってくれました。
「アメリカとかヨーロッパへの憧れもあったんですけど、物価が非常に高くて、なかなか自分の少ないお金の中ではやりくりできなくて。アジアだったら1泊数百円の宿なんかもあるので、それで行くことにしたんですけど。他にも、高校の世界史の先生がインド好きの先生で、昔のインド旅行の話とか思い出話にしてくれたんですよね。そういう影響があります」
「普通の親なんで(笑)当然反対しますけれども、ちょっと嘘ついて行っちゃいました。アジアにどうしても行きたいんだったら、もっと治安の良いシンガポールとかそういう場所だったら行ってもいいよ、って言われたので、シンガポールの方に行ってくるよ、って言ってインドに行っちゃったんですけど。今思えば、ほとんど家出みたいな感じで」
「数メートル歩くごとに1つぐらい驚きがあるような世界だったし、自分が常識だと思ってることが、インドでは常識ではない。例えば、ご飯を手で食べるとか、トイレットペーパーを使わないで手で用を足したりとか。そういういろんな場面に出くわして、世界っていうのはホントに多様で、当然ですけど、広いんだな、っていう実感が湧いてきたんですよね」
カヌーイストの野田知佑さんの本などに影響を受け、世界を旅する写真家や作家・ライター、ジャーナリストといった職業に憧れたという石川さん。インド旅行を経験してからは「旅をしながら生きていけばいいや」という気持ちだったそうですが、それでも高校卒業後は大学に入り、大学院にも進学します。
「僕が凄く慕ってたカヌーイストの野田さんっていう人がいたんですけど、その野田さんなんかと話してて、お前が将来ジャーナリストみたいなことになりたいんだったら、そして大学とかに行ける環境にあるんだったら行っといた方がいいぞ、っていうのをとくとくと諭されてですね」
「アウトローの先輩みたいなカヌー乗りの野田さんからそんなことを言われたら、じゃあやっぱり行っといた方がいいのかと思って行くことになったんですよね」
石川さんはご自身の生き方についてこんなことをおっしゃっていました。
「極端に自然だけが大好きってこともないし、当然、街の中の生活が好きで好きで…ってことでもないんだけれども、やっぱり街の中の好きな部分もあるし、自然の中で好きな部分もあるし。そういう距離感の中で、旅をしては帰ってきて、帰ってきては旅をして…っていうことを繰り返す人生を選んでしまったんですよね」
「水道をひねると水が出て、電気がぽちゃんってすぐ点くような普通の日常があって。でも、1回ヒマラヤの方に行っちゃえば、電気はないからソーラーパネルに貯めなきゃいけない、水は氷を融かさなきゃいけない。で、氷を溶かしても砂がジャリジャリ入った水を飲まなきゃいけないとか」
「そういう経験をすると、普段の生活のありがたみもわかるし、あるいはヒマラヤっていう場所で生きることに対して凄く意識的にもなるし。やっぱり自分にとっては両方の環境っていうか立場が必要で、だからこそ、凄く客観的に自分のことを見直すことができるんだな、とは思ってます」
「ガチの冒険家の人に比べたら、僕がやってることなんてホントに旅の延長で。例えば、パリに行ったりとか、ニューヨークに行ったりとか、都市部の旅も僕は好きだし。あるいは、ホントに極地の南極だとか北極だとかヒマラヤも大好きだし。そういう意味では、冒険っていうよりは旅をすることが好きで、未知の世界に体で出会いたい、っていう気持ちがやっぱり一番強いんじゃないかなと思ってます」
昨年末に新潮社から発売となった『地上に星座を作る』は、そんな石川直樹さんが旅の様子を綴った著書です。
「文芸誌の『新潮』っていう雑誌で、1ヶ月に1回書いてみないか?って言われて。で、毎月のようにいろんな場所に行ってましたから、その1ヶ月の中の一番濃い部分をそこで書いていこうと思って、7年間書き綴ったものを集めたのがこの本になります」
『地上に星座を作る』には、ヒマラヤへの旅が何度も登場します。
「世界で一番高い山エベレストがあって、それから12番目、13番目、14番目ぐらいまでの高い山って全部ヒマラヤ山脈にあるんですよ。で、そんな高い山が連なってる場所があって、そのふもと周りにいろんな生活があって。それを自分の目で見てみたいし、自分の耳で聞いてみたいし、自分の体で感じたい、っていう気持ちが凄く強くてですね。だから、ネパールの山だったり、パキスタンの山だったり、チベットとかの山だったり、どんどんどんどん通うようになっちゃったんですよね」
そして、石川さんは過酷な旅に出かける理由をこう話してくれました。
「なんでそんな辛い思いをして登るのか?ってよく尋ねられるんですけど。でも究極的にはホントに楽しいんですよね。辛いんだけど、やっぱり知らない世界に出会ってるし、そういう場所に身を置いてるっていうことが凄く嬉しくて。なんかこう心がワクワクするっていうか」
「普段だったら、普通に呼吸をしてご飯を食べて寝て起きて…みたいな生活をしてますけど、ヒマラヤでは意識的に深く呼吸をして、で、明日動くためにご飯をきちんとこのぐらいのカロリー食べて、そしてこうやって歩いて…とか全部、一挙一動、意識的になるんですよね」
「で、そういうことを1ヶ月ぐらい続けていくと自分の中が生まれ変わるような、自分の中が入れ替わるような感覚とかもあって。それが病みつきじゃないですけど、1年に1回そういうことをすると凄くスッキリするし、なんか自分の中で崩れてたバランスが元に戻るような感覚があるんですよ」
「自分の体を十全に使って、頭の先からつま先まで全部使って、自分自身の体をきちんと使って生きてるぞ!って思える行為っていうのは、充実感とか前向きになる活力っていうか、そういったことにどんどん繋がっていくし、自分としても自信になりますよね」
大学生の時には1年がかりで北極から南極まで踏破する旅に参加し、世界7大陸最高峰への登頂を最年少で成し遂げるなど、世界中で様々な冒険を経験してきた石川さん。その一方で、富士山を海抜0メートルから登るといったことにも挑戦しています。
「僕も(富士山に)五合目から何度も登ってますけど、ゼロメートルから登ると3800メートルっていう高さはどういうふうに感じられるのかな?と。自分が知ってるつもりになってる場所とか、とっても有名な場所でも、少し視点を変えたり…いろんなレイヤーが重なってますけど、その別のレイヤーにちょっと滑り込むと、全然未知の世界が見えてくるっていうか。だから、なにも北極とか南極まで行かなくても、すぐ身近な場所にもちょっと視点を変えるとたくさんの未知の風景があるんじゃないかな、っていうふうには思ってます」
来週も引き続き、石川直樹さんをお迎えします!