母娘のライバル心を描いた林真理子さんの最新作(2015/10/17 放送)
今週は、作家の林真理子さんをお迎えしました。
林さんの最新作は先月出た『マイストーリー 私の物語』。これは、昨年4月から1年間にわたって朝日新聞に連載されていた小説をまとめたもので、作者が自分でお金を出して本を出す自費出版がテーマの一つ。前半では、芥川賞作家である娘にライバル心を抱いた母親が自費出版で自らの過去を赤裸々に語る小説を書く、というストーリーが展開されます。
林さんの最新作は先月出た『マイストーリー 私の物語』。これは、昨年4月から1年間にわたって朝日新聞に連載されていた小説をまとめたもので、作者が自分でお金を出して本を出す自費出版がテーマの一つ。前半では、芥川賞作家である娘にライバル心を抱いた母親が自費出版で自らの過去を赤裸々に語る小説を書く、というストーリーが展開されます。
100才になるという林さんのお母様もかつては作家志望だったそうで、この作品を書くヒントになったとか。「90才過ぎた頃に、私は真理ちゃんよりもっと凄い作家になれたかも知れなかったのに、あの時ああなってこうなって、あの学校に行けなかったから…とかって言うんで、ああ書きたいっていうマグマ凄いなって思いましたね」
読者の方からは「うちの親子関係とそっくりで…」という手紙も届いたそう。娘から母親に対する嫉妬心も描かれていますが、林さんはこんなことをおっしゃっていました。「あんたに書けるわけないでしょ、って身近な人に思うっていうのは作家なら誰でも思うんじゃないですか」
この作品について「親子のいやらしい感じを書きたい」と林さん。「今、母と子の葛藤みたいなのって話題になってますので、娘を支配しつつ、ぜったい自分が上位に立とうとするお母さんと、そこから逃れようと藻掻く娘っていう感じの、私としては珍しいジャンルをちょっと書いてみましたけど…」と話してくれました。
一方、この作品に描かれているような対抗心を息子に対して抱くことなんて考えられない、というのは恵さん。林さんはそれに対して「父親と息子ってもっとシンプルかもしれない。母と娘ってライバル。(私も)母親には感じましたね」とおっしゃっていました。
「うちの母親が作家になりたかったけどもなれなくて、自分の古本を売って本屋を始めたんです」。山梨にある書店の長女として生まれた林さん。本が大好きだったそうですが、元々は作家志望ではなく、むしろ編集者に憧れていたそうです。「文章書くのってしんどそうじゃないですか。何百枚も書くのって。ちょっと私みたいな性格だとできないなと」
学生時代に文章で賞をもらったこともあったそうですが、「もっと凄い才能が文章以外にあるかもしれない」という“根拠のない自信”を元に就職活動をしたそう。「そしたら、根拠のない自信が木っ端微塵ですね。普通のOLにもなれないんだ…って。どこも雇ってくれない」
そこで、林さんは「何百枚は書けないけども1行だったら書けるかも」と、コピーライターの養成所に行ってコピーライターに…。糸井重里さんとの出会いもあったそうです。「私は今、こんなスーパーのチラシをやって冴えないけども、糸井さんみたいな人だったら私の才能を認めてくれるだろうな、という。また根拠のない自信ですよね。でも、人間って、辛い時に根拠のない自信が随分助けてくれるんですよね」
そして、コピーライターとしての活動を経て発表したエッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』が大ヒットした林さん。当時のことをこんなふうに話してくれました。
「その頃、コピーライターブームが来て、エッセイを書いてみないか、って言われたんですよ。あの頃、“昭和軽薄体”っていう流れがあって、割と普通の人が書いて当たったっていう時代で、我も我もってみんなが書いてた時代だったんです。ま、こんなの書く人いなかったんでしょうね。下品だとか、えげつないとかいろんなこと言われましたけども。今だったら珍しくないけど、32年前は珍しかったのかも知れないですね」
ご自身のことを「普通のおばさんですね」と語る林さん。「(変わってる)とは全然思ってない。こういう仕事やっている割には、凄く常識的でつまらない人間だなと思いますよ。いや、ホントに。もっと奔放に生きてみたいとか、もっと面白いとんでもないことしてみたい、という気持ちもあるんですけども…。(踏み込まない理由は)だからそれが田舎の子ですよ。田舎の割と厳しく育った家の子」とおっしゃっていました。
↓こちらが林さんの最新作『マイストーリー 私の物語』
来週も引き続き、林真理子さんのチャレンジストーリーをお伺いします。お楽しみに!