行定勲監督がコロナ禍で挑戦した日本初の試み(2020/09/26 放送)
先週に引き続き、今週も映画監督の行定 勲(ゆきさだ いさお)さんにリモートでお話を伺いました。
今年は、新型コロナウイルスの影響で2本の長編映画の公開が遅れてしまった行定監督。4月に公開予定だった『劇場』は7月、そして6月公開予定だった『窮鼠はチーズの夢を見る』は9月11日に公開されましたが、「それでも2作とも公開できたことは良かったかなと今は前向きに捉えている」とおっしゃっていました。
何年もかけて準備した作品が公開直前で延期になったのはやはり不安だったそうで、行定さんは映画の公開タイミングについてこんなことを話してくれました。
「(映画は)その一つの同時代性というか、その時の時代の中で、どんな状況の中で公開されたかっていうのも記憶に残るし。もっと細かく言うと、観客があの映画を誰と観に行ったか、観に行く前に何を食べて、映画を観て凄く気分が良かったから歩いて帰りました、とかね」
「時間って凄く記憶に残るものだから、いつこれを公開するのかっていうのも重要だし、あと、旬っていうものがあると思うんです。その映画がなまものとしてちゃんと鮮度がある時に公開しないとたぶん何かが変わっていくんですよね」
そんな映画の鮮度を保ったまま観客に届けるため、又吉直樹さんの小説を原作とする行定監督の作品『劇場』は、Amazonプライム・ビデオで配信されると同時に、上映規模を縮小して映画館でも公開されました。
今年は、新型コロナウイルスの影響で2本の長編映画の公開が遅れてしまった行定監督。4月に公開予定だった『劇場』は7月、そして6月公開予定だった『窮鼠はチーズの夢を見る』は9月11日に公開されましたが、「それでも2作とも公開できたことは良かったかなと今は前向きに捉えている」とおっしゃっていました。
何年もかけて準備した作品が公開直前で延期になったのはやはり不安だったそうで、行定さんは映画の公開タイミングについてこんなことを話してくれました。
「(映画は)その一つの同時代性というか、その時の時代の中で、どんな状況の中で公開されたかっていうのも記憶に残るし。もっと細かく言うと、観客があの映画を誰と観に行ったか、観に行く前に何を食べて、映画を観て凄く気分が良かったから歩いて帰りました、とかね」
「時間って凄く記憶に残るものだから、いつこれを公開するのかっていうのも重要だし、あと、旬っていうものがあると思うんです。その映画がなまものとしてちゃんと鮮度がある時に公開しないとたぶん何かが変わっていくんですよね」
そんな映画の鮮度を保ったまま観客に届けるため、又吉直樹さんの小説を原作とする行定監督の作品『劇場』は、Amazonプライム・ビデオで配信されると同時に、上映規模を縮小して映画館でも公開されました。
「挑戦ですね」
「僕は映画監督なんで、映画館で見てもらいたいという気持ちはやっぱり捨てられなかった、っていうのがあって。そこは理解してもらって(配信と同時に)ミニシアターで20館の公開をさせてもらったという。同時っていうのはたぶん日本で初めてですけど」
ちなみに、日本映画製作者連盟は、最初に映画館のみで公開された作品を“映画”と規定しているそうで、配信と同時だった行定さんの『劇場』は映画として扱われない可能性もあるんだとか。
「僕も、映画は劇場で見てもらいたいっていうのが一番の完成形だと思ってるんですけど、このコロナ禍においては致し方ないという今回の判断でした」
そして、Amazonプライム・ビデオで『劇場』を見た人の中には、これはやはり映画館で観たいと劇場に足を運んでくれた方もいるそうです。
「配信と劇場で同時に同じ映画を味わえるってことは、この違いというものを認識できた、いいチャンスだったと思うんですよね。実は劇場にも弊害はあるんですよ。隣りに座った人がどんな人であるかによって、気になったりする場合もあるだろうし」
「だけど、劇場って、見知らぬ人たちが肩を並べて、暗闇の中で一つの映画に向かって、いろんな思いをそこで影響し合うんですよね。で、音の環境も画(え)の環境もそこに照準を合わせて誕生させている作品ですから、やっぱりそれをオリジナルで見るには劇場体験っていうのは絶対に必要なものなんですけど…」
そんなふうに映画館での上映に対するこだわりを語りつつ、このコロナ禍においては配信にずいぶん救われたともおっしゃっていた行定さん。続けて、日本映画界が抱える問題についてこう話してくれました。
「国内で僕らが作ってる映画はその1本がどう結果を出すか?なんですよ。この1本が問われるんですね」
「だから、もの凄くチャレンジができない。要するに、安全パイ、安パイなところで作ろうとする。だから、ヒットした映画に準じた形で、また第2段、第3段みたいな。一つ何かがヒットするとそれに似たものが作られていくっていう…。それはどっちかと言うと表現としては閉塞していくっていうか」
「そこを脅かす存在であるから余計に、映画館を守っていかなきゃいけない側がそれに対抗できるぐらいの冒険をして欲しいという。それで観客を呼んで欲しいというね。で、凄く作品が問われてる時代になったなぁと思いますね」
行定勲監督は、九州の熊本県出身。小学生の時に地元で行われた黒澤明監督の映画撮影を観て、“映画を作る人”になりたいと思ったそうです。
「小学校4年生かな?父親と見に行って、立入禁止だったんですけど、中に入ってこいって。子供だから大丈夫だって親父がわけわかんないこと言って(笑)。それで、みんなに頑張ってこい!とか言われて入っていったんですね」
「で、黒澤明がどの人なのかはもちろん知る由もなく、甲冑をつけたエキストラとスタッフがいて、甲冑を汚してるんですね。戦場の設定なんで」「まぁそれで、スタッフにつまみ出されたわけですけど…」
「で、完成した映画を観た時に、物凄くリアルな戦国時代になってたんです、映画の中身が。で、僕が勝手知ったる場所が明らかに違う空気に色付けされてるのは、あのおじさんたちがやったんだ!って直結したんですね。で、映画を作る人になりたい!って思ったっていう」
「だから、黒澤明になりたいとは一度も思ったことがなくて、あそこにいた誰か知らないおじさんですね。ジーパン履いて、ヒゲの、帽子かぶったおじさんたちがなんかカッコよく感じたんですかね」
「エンドロールにたくさん名前があるんですけど、あのおじさんの名前が誰か知らないのに一生懸命探そうとしている自分がいたんですよ(笑)子供の時に。名前見てわかるはずないのに」
現在、劇場公開されている行定監督の最新作『窮鼠はチーズの夢を見る』は、関ジャニ∞の大倉忠義さんと、成田凌さんの共演で、男性同士の恋愛を描いた作品。行定さんはこの映画について改めてこう話してくれました。
「男性同士が愛について向き合う話だと思うので…女性の人たちは非常にこういうことに興味があるというか、そういう目で凄く注目してくださってると思うんですけど、やっぱり男の人が観ると、非常にいい意味で笑えたり、ちょっと恥ずかしかったり、むず痒かったりするっていうね」
「で、自分のことのように感じられる場面がたぶんたくさんあるんで、けっこう共感して頂けるんじゃないかなと。発見がそこの中にたぶんあると思うんで」
「あと、認識ですかね。その認識の違いみたいなものをぶつけ合って、観終わった後に話が盛り上がるような映画になってるんじゃないかと思っております」
最後に行定さんはご自身にとっての挑戦についてこう話してくれました。
「僕にとっての挑戦は、自分の新たな顔を見つけること、ですかね。まぁ、新たな自分を発見する、ってことかもしれないですけど。挑戦すると、あ、こんなところまで来れるもんだなぁ…って思ったりとか」
「挑戦しようって思うとついてきてくれる人たちもいるんですよね。で、その人たちが後押ししてくれるっていうのもあって、自分が想像してる以上の力が発揮できるような気がするんですよね。だから、やっぱりやって良かったなぁって思ったり」
番組では、そんな行定さんの挑戦に関するメッセージを色紙に書いて頂きました!こちらを1名様にプレゼントします。このホームページのメッセージフォームから「行定勲さんの色紙希望」と書いてご応募ください!