240年以上に渡り、世界で愛されてきた陶磁器「ロイヤルコペンハーゲン」。至高のブルーといわれる印象的な青で描かれたテーブルウエアは、高貴で文化的世界遺産とさえ言われています。そして、そこに描かれたボタニカルな文様は、デンマークの野に咲く小さな花が出発点でした。
植物に関しての名著や、写真集、そしてグッズなどをご紹介するボタニカルブックス&グッズ。今回は、デンマークの世界的な陶磁器ブランド「ロイヤルコペンハーゲン」に描かれたボタニカルデザインの魅力をご紹介します。
ロイヤルコペンハーゲンの歴史を支えるボタニカルアート
ロイヤルコペンハーゲンは1775年、当時のデンマーク王室の保護のもと王室での使用、親交のある王族への贈答用のため、陶磁器を製造する王室御用達製陶所としてコペンハーゲンに発足しました。そして、最初に作られたのが「ブルーフルーテッド」と言われる青を基調にしたデザインです。王室を象徴し、海洋国デンマークをイメージしたブルー。その青で描かれる図柄の最初のモチーフとなったのが、デンマークの野に咲くバラ科の多年草キジムシロと野菊でした。その後も多くのボタニカルなブルーフルーテッドの図柄が描かれますが、どれもがその地の野に咲く花々を題材にしたものでした。
実際に図柄を描くペインターたちはデザイナーの作りだした基調デザインを守りながらも、ある程度自由にそれぞれの思いを込めて花を描いていくそうです。それはペインターが心に持つ「花」を描く作業ということで、「ペインターの心の花束」とも呼ばれています。白地に王室を象徴する高貴なブルーで描かれたボタニカルなデザイン。それを生んだデンマークの人々の野に咲く花を愛する心は、240年以上経った今でも世界中の人を虜にしています。
植物図鑑から生まれたフローラ・ダニカコレクション
抽象的な花や植物を描くデザイン、ブルーフルーテッドに対して写実的に花や植物を描いたのが、1790年に制作が始まった「フローラ・ダニカ」です。フローラ・ダニカとは18世紀に作られたデンマークの植物図鑑。デンマーク領土内のすべての植物3000種類を収めた手彩色銅版画の植物図鑑で、フローラ・ダニカコレクションはその植物図鑑に絵柄のモチーフを求めました。一点一点異なる植物のモチーフが選ばれ、厳選された熟練の職人の手によって制作が行われています。こういった食器が王室の晩餐会に使われたのは、そこに描かれた花や植物によってデンマーク領土の豊かさや美しさをアピールする意図が込められていたから。普段、身近に野に咲く花がデンマークの美しさを象徴していたとは感慨深いですね。
実は日本にも江戸時代に作られた、日本の自生植物を収めた植物図鑑「フローラ・ヤポニカ」があります。2017年には、日本とデンマークの国交150周年記念として、この「フローラ・ヤポニカ」から日本にしか自生してない花〜山吹と、デンマークにしか自生していない花〜デルフィニウムが描かれた特別限定コーヒーセットが生まれ、デンマークと日本の絆を花で繋いでいます。
日本の工芸品や浮世絵は、ロイヤルコペンハーゲンの開窯当時、その図柄やタッチに大きな影響を与えたといいます。ブルーフルーテッドプレインの美しさは、西洋と東洋の出会い、豊かな文化の交わりによっても作りだされたもの。それを思うと、ロイヤルコペンハーゲンを使用した食事やお茶の時間がいっそう特別なものになりそうです。
TOKYO FM
「クロノス」では、毎週金曜日、8時38分から、毎週週替わりのテーマでボタニカルな暮らしをご紹介するノエビア「BOTANICAL LIFE」をオンエアしています。
また、TOKYO FMで毎週土曜日、9時から放送している
ノエビア「Color of Life」。1月13日まで女優の小西真奈美さんを迎えてお届けしています。どうぞ、お聞き逃しなく。