作品から作家の本質みたいなものに触れることは出来ると思いますが、その人物研究から見えてくるのは、作品が生み出された具体的な背景。私たち読者との距離もぐっと近づいてくるというものです。「断腸亭日乗」を読めば、荷風の日々の暮らしや想いが手に取るようにわかるけれど、その描写を川本三郎さんが詳しく解説、考察していて、しかも今回は荷風が愛した街を一緒に歩いていただいたのですから、当時の情景が単なる想像にとどまらず、まるで荷風が知り合いのおじさんであったかのような親近感すら憶えます。荷風の足跡を辿って実にいろんなところへ出向き、歩き、そしてゆかりの人々に話をきいていらっしゃる川本さんにとっては、もうほとんど身内感覚ではないかと。。。「老いの荷風」って素敵なタイトルですよね。独居の寂しさやわびしさに苛まれることなく、愛した街で穏やかに晩年を過ごすなんて憧れます。
(アシスタント:小山ジャネット愛子/今週も市川レポートはブログをご覧ください)
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