私たちが当たり前に使っている言葉まで解説し、日本語の美しさ、短い言葉に凝縮された深い世界を見せてくれる大岡信さんの『折々のうた』。元日に取り上げた冬編に続いて今回は夏編でしたが明るく色鮮やか、そして躍動感あふれる楽しい詩歌が多かったですね。私は葛飾北斎の「ひと魂で ゆく気散じや 夏の原」という辞世の句に注目。死の床にありながら「死んだら人魂になって夏の原っぱをのんびり行くよ〜」とは、なんという余裕!なんというおちゃめさ!偉大な芸術家なのにこの世に未練を感じないのは、あの世とこの世の境目がなかったからなのでしょうか。江戸っ子の“粋”も伝わってきて、北斎がぐっと身近に感じられる一句です。
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