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高校の現代文の授業で読み解いた覚えのある懐かしい『名人伝』。わかりやすい文章でスラスラっと読めますが、読み終わった後に残る謎も多い作品です。主人公の紀昌が「不射之射」を体得したのかも気になるところですが、小川さんは紀昌の奥さんが気の毒でならない様子。確かに、旦那がいきなり機織台の下に潜ってきて2年経っちゃうわ、さらに虱を眺めて3年も経っちゃうわ、知らない間とはいえ睫毛を矢で射られるわ、ようやく修業を終えて旦那が帰ってきたと思ったら腑抜けのようになっているわ…。そもそも経済力皆無の夫ですから奥さん、苦労に苦労を重ねて一生を終えたのではないでしょうか。名人の道を極めるには、道端に数々の犠牲者もまた倒れていそうです。

(アシスタント:藤丸由華/藤丸のブログはこちら!

2016年11月27日
森茉莉
『枯葉の寝床』

2016年11月20日
ロアルド・ダール
『すばらしき父さん狐』

2016年11月13日
円地文子『鬼』
2016年11月6日
サリンジャー
『フラニーとズーイ』

アーカイブ
マスター・オブ・アイズ/アレサ・フランクリン
紀昌が行った瞬きした修練にちなんで選びました。
蚤の歌/ムソルグスキー作曲、シャリアピン(バス)
昭和11年にロシアのオペラ歌手シャリアピンが、日本で録音したSPレコード。中島敦はこのときの日比谷公会堂の公演を聞きに行って、短歌も残しています。「北国の歌の王者を聴く宵は 雪降り出でぬ ふさはしと思ふ」「如月の日比谷の雪を急ぎ行けば ティケット・ブローカー言ひ寄り来るも」 「眉白く眼鋭どに鼻とがるシャリアーピンは老いしメフィスト」
 
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