心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
12月4日は中島敦の命日。昭和17年、持病の喘息がひどくなり33歳の若さで亡くなっています。その少し前に「弟子」「李陵」「名人伝」を立て続けに書き、亡くなったあと発表されました。今回取り上げたのは、その中から「名人伝」。中国の古典「列子」に収められている寓話をもとに書かれたと言われる短編小説です。物語の舞台は、中国の戦国時代にあった国「趙」の都「邯鄲」。主人公は、天下第一の弓の名人になろうと志を立てた紀昌という男です。彼は飛衛という人物の弟子になり、その飛衛はこう命じます。「瞬きせざることを学べ」。それを受けて紀昌が取った行動はなんと妻の機織台の下に潜り込むことだったのです。
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