音で学ぶ、音を学ぶ、音に学ぶ
"音学"の授業、サカナLOCKS!

「皆さん本当に、11年半、ありがとうございました。」

(放送後記は、今後も見ることができます。)

「『一郎先生に"ノンバイナリー"について知って欲しい』という生徒と話しました。(後編)」

SCHOOL OF LOCK!

AuDeeではサングラスな一郎先生。


音を学ぶ「音学(おんがく)」の授業、サカナLOCKS!。現在は、[AuDee]で修行中です。今回は、11月25日(木)24:00から行った、深夜の公開授業の後編です。話題の鍵となる言葉は "ノンバイナリー"。「男性」と「女性」というような枠組に当たらない、当てはめようとしない考え方、ノンバイナリーについてのお話です。電話でお話しした、mmmさんのお話では───

mmm「ノンバイナリーは、あんまり男とか女とか、性別で区別しない考え方のことを言います。あとは、男と女の二元論で分けるっていう考え方ではなくて、グラデーションなんだっていう。中間の考え方もあれば、中間より男側の感覚……という、グラデーションがあるっていう考え方があるっていうのを私も最近知りまして。それで、これまでずっと違和感を感じていたのが、すごく腑に落ちたんですよね。ノンバイナリーっていう言葉を知って。」

───ということでした。今回はその続きです。

山口「でも、難しいな……どう接したらいいの?見た目は男性だけど、中身が女性である可能性があるわけじゃない。となると、僕が思っている男性は、男性じゃない可能性もあるわけじゃない。だから……どう言ったらいいの?」

mmm「4つくらい表現があって、生まれた性と、表現する性……服装とかですね。あとは、心の性と、恋愛対象の性別で4つくらいに分かれていて、それぞれに最低でも16種類……それ以上に分かれていろんな性別があるっていう風に言われているので、それを突き詰め始めると分からなくなってくるんですが……。人によって違うので、だからといって全部が全部に配慮するのは難しいと思うんです。だけど、私としては、"女性"、"男性"っていうよりは、いち人間として接してほしいっていう気持ちがあります。」

職員(カヲル先生)「それは、心理学の仕事をしているから詳しいのか、それとも、自分の性に対して悩んだからいろいろ調べたのか、どっちなんですか?」

山口「それ聞きたいね。」

mmm「知ったのはたまたまで、きっかけは、Disney+っていう映像配信サービスの『ジェンダー革命』っていう番組を見た時に、自分はそこに出てきたノンバイナリーだっていうことに気づいて。自分がこれまで人生の中でいろいろ悩んできたことで、なんかうまくいかないなっていうところの答え合わせができて。」


山口「何が人を傷つけるか分からなくなっていく中で、私は曲を書かなきゃいけないわけ。」

職員「はい。」

山口「曲の中で"君に会いたくて"って書いた時点で、"君"は、僕の中では女性として置いているわけ。それもだめなのかなって思っちゃうというか……。(即興で歌いながら……)何がだめで何がだめじゃないの〜♪教えて〜諏訪さん(※カヲル先生のことです)〜♪」

職員「教える気がなくなるような歌、やめてもらっていい?(笑)」

山口「(笑)」

職員「でもそれは、だめではないよね。」

mmm「一郎さんが書く"君"とかっていうのは、一郎さん自身は女性を思い描いて書いていると思うんですが、受け取り手によっては男性でもあったり女性でもあったりっていうところで……」

山口「そこは問題じゃないの、僕の中では。僕にとってはどうっていうのが問題だからさ。僕が書き手としてどうなのかっていうのが問題じゃん。傷つけるかもしれないって思って書いているんだったら、それはもう僕の中では大問題だから。」

mmm「あー……」

職員「引っかかってる場所が違う気がする。これって、自分自身のことを解決するっていうよりは、他者をどう思うかっていうところの話だけしかしていない気がしていて。他者に対して気にする……その人が嫌なことを嫌って分かった瞬間にやめるか、嫌って分かったのに『でも俺はこうだから』って思うかの二択じゃないですかね?」

山口「でも、ごめんって言える立場の人だったら言えるじゃん。今みたいに、諏訪さんに指摘されて違うんだって思って。これが今配信されていなかったら2人だけで終わるじゃん。だけど、配信されていたからそうならなかったわけじゃん。」

職員「そうね。確かに、指摘したのはこれが配信されているからっていうのと、難しいし、それぞれの立場が危うくなるから今まで割と避けてきたことだったんですよ。」

山口「避けちゃだめだと思うよ。」

職員「そう。今は、みんなが避けちゃだめだっていう方向をちょうど向いている時期ですよね?mmmさん。」

mmm「そうですね。まだ世界に比べたら全然まだまだですけど、徐々に知り始めている人が増えていると思います。」

職員「その……『人間関係って難しいよ』って言うのと同じように、これは絶対簡単じゃないけど、簡単じゃないからっていって、じゃあ考えるのやめたって思った瞬間に人を傷つけたりする回数は増えるんだろうなって。それでもその人自身は生きていくじゃないですか。人を傷つけようが、人にどう思われようが。」

山口「でも、傷つけたくないじゃん。」

職員「そう、傷つけたくないじゃない。だから、考えるようになってるっていうことなんですかね。」

山口「今mmmさんがいろいろ教えてくれたじゃない?それによって、時代がグラデーションになっていて、言う側が受け取り側の気持ちを考える時代がきていると。いくら僕自身がそういうことを理解しているということだとしても、無意識に傷つけてしまう可能性があるっていう時代だと認識すべきだってことが起きてるってことですよね?」

職員「はい。」

SCHOOL OF LOCK!


山口「思ったことは言葉にするべきなのよ。だけど、どう言葉にするかだと思うのよ。思ったことを言葉にしないっていう選択は、僕は人類にとっての退化だと思う。どう言語化するかだと思う。伝え方みたいなことでしょ。だから、伝え方発明をしていかなきゃいけないんだなとは思う。」

職員「しかも一郎先生は、言葉を発信し続ける人だから特にそう思っているんでしょうね。」

山口「だから、今まで通りいこう。で、"『そうじゃないよ』っていうことを言いやすい社会にしよう"、だよ。」

職員「そうですよね。」

山口「例えば、僕がmmmに『可愛いね』って言った時に、ちょっと傷ついたり、可愛いって言われたくないって思った時に、『一郎さん、私そう言われたくないの』って言いやすい社会を作れれば、『あ、ごめんね。そうだったんだ』って。」

職員「それは本当に超理想。」

山口「『うっかり、うっかり。うっかり八兵衛!』って言えるくらいの。」

職員「リアクション全部昭和だね(笑)。」

山口「昭和だって言ってるじゃない(笑)。」

mmm「(笑)」

山口「そんな風に言える社会を作るために、どうすべきかっていう議論をすべきってことね。コミュニケーションをアップデートしていこうってことですよね。」

職員「はい。」

山口「でもね、僕は今ずっと歌詞を書いていて、言葉と向き合っていて、接続詞を何にするかだけで1〜2ヶ月迷ってきたところから急にこういう場に来ているから、非常にセンシティブになり過ぎている部分もある。だから、僕が今日言っていることは全体の半分くらいを受け取ってもらえればと思うんだけど……"男性"、"女性"とかって、僕の中ではある。絶対あるよ。トイレに行くのにもそうなるし、スタッフにも女性の人がいたら失礼がないようにしようとか、着替える時に周りに女性がいたら着替えないようにしようとか、生きていく上で絶対に意識はするじゃん。単一的に、女性も男性もひとつの感情じゃなくて、いろんな感情があるんだっていうことも認識はしているけど、あまりにも日常的に気にし過ぎていると、八方塞がりで、女性だけじゃなく男性ともコミュニケーションを取れなくなるじゃん。だから、気にしないようにする……もちろん、生きていく上で失礼なことを言っちゃうこともあるかもしれないけど、そういうことを言っていたら、注意してもらえるような人間でいるようにする。」

職員「それは、さっき言っていた"言いやすい環境"っていうこともそうだし、自分も言いやすい人でありたいしっていうこと?」

山口「そう。『一郎くん、それってこういう風に受け取る人もいるんだよ』っていうようなことを言ってもらえるように。そんな人間でいればいいってことだよね。……でも、自分も立場的に指摘してもらえない状況になってきているじゃない。年齢的にもそうだし、周りにいる人たち……マネージメントとかレーベルとかからも怒られないようになってきているから、僕的には敏感になっているわけですよ、正直。そういう部分で、今日こうして話せてよかったなって思うし、悩み相談から悩みを聞いてもらう回になっちゃったけどさ。」

mmm「ふふふ(笑)」

山口「mmmさん、深夜までありがとうございました!」

mmm「こちらこそありがとうございました。」

山口「おやすみなさい、さよなら。」

mmm「おやすみなさい。」

SCHOOL OF LOCK!


山口「いやー……いいわ、AuDee。めちゃくちゃ話せる。」

職員「ね。話せましたね。」

山口「スタジオと、ブースと、YouTubeと……世界が増えるね。正直、これを始める時に際どい話になる可能性があるから、生配信をするのはちょっと冒険だよねって言っていたけど、今回大事なテーマを話したじゃない。やっぱり、こういうことをやりたかったの!修行なんだから!」

職員「修行だね。全然いいよ。早く帰りたいって思っているのは多分ミキサーさんだけだよ。2時間SCHOOL OF LOCK!の生放送をやって、もう1回2時間やると思ってないからね(笑)。」

山口「はははは!(爆笑) でも僕は、常に"愛"だと思う。ジョン・レノンも言うけど、愛……愛し愛され生きるのさ……小沢健二。だと思う。」

職員「ジョン・レノンから小沢健二になったけど(笑)。でも、そうですよ。言った言葉にちゃんと愛が滲み出ているか出ていないかで、多分受け取る側も違うし、この人が今こう言ってくれたのは愛なんだなって思ってくれるかくれないかで刺さり方が全然違うじゃないですか。」

山口「あと、言葉って瞬間なんだけど、それを発するまでの関係性の時間ってあるじゃない。そこがすごく大事なんだと思うんだよね。ひとつひとつの発言の前っていうかね。僕は音楽を作る上で、Instagram Liveで深夜対談をやったり、サカナLOCKS!でいろんな生徒と話をしたりして、今思うと、それをちゃんと音楽にしてきているなと。こうやってAuDeeで話したことも、今回のことも、多分僕の自分の中のテーマになると思う。」

職員「多分、もう1〜2回はきっとこういう形をとると思います。またやりましょう。」

山口「やりましょう。また激しい議論を繰り広げましょうよ。……いやー、面白かった。面白かったし、自分の頭がいかに固いかってことも分かったね。」

職員「固いとも違うと思う……あ、ちょっと、続きはまた今度で(笑)。」

山口「ふふふ(笑)。是非、SCHOOL OF LOCK!のLINEアカウントに登録してもらえるといち早く情報がくると思いますし、サカナクションのLINEアカウントに登録してもらえると、そちらの方からも情報がいくと思います。夜分遅くまで皆さんお付き合いありがとうございました。実験的な部分で不手際もあったかもしれないんですが、どんどんブラッシュアップ、アップデートしていきたいと思いますので、今後ともサカナLOCKS!をよろしくお願いします。それでは皆さんおやすみなさい。さいならっきょー!」

職員「ははは(笑)。やっぱり昭和なんだよなー。」

山口「ふふふ(笑)。昭和ですからね、しょうがないですね。」



ということで、ここまでが、11月25日(木)の深夜に行った公開授業のもようでした。次回の修行(公開授業)の日程は、LINE公式アカウントでお知らせします。SCHOOL OF LOCK! の [ LINE公式アカウント ]をフォローして、次の修行に備えてください。一郎先生があなたの話を直接聞いていきます。

サカナLOCKS! 放送後記

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