聴取期限 2022年5月20日(金)PM 10:00まで
音を学ぶ "音学"の授業、サカナLOCKS!。
2007月5月9日にデビュー、先日15周年を迎えたサカナクション先生。その記念にサカナクションの活動拠点である、東京・目黒の青葉台スタジオにて、3日間にわたって行われた生配信、スタジオセッション『15.0』。今回はこのスタジオセッションを、一郎先生が生徒といっしょに振り返っていきます。
ちなみに、このスタジオセッションは、5月15日(日)まで、購入して観ることができます。
■ サカナクション「デビュー15周年記念 スタジオセッション『15.0』」特設サイト [→ コチラ!]
山口「はい、授業を始めますから席についてください。Twitterを開いている生徒はTwitterを閉じなさい。Instagramを開いてる人はサカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。」
「今回は、先日行われた、サカナクションのスタジオセッション『15.0』についてお話ししていきたいと思います。私たちサカナクションは、今年デビュー15周年を迎えましたが、5月7日より3日間、サカナクションの活動拠点である青葉台スタジオというところでスタジオセッションを生配信しました。5年ずつ振り返って、3日連続でやるというオンラインセッションだったんですけど、普段はきっちりと演出をやりきって隙のないサカナクションのコンサートというのをテーマにやってきている中で、隙だらけの生々しい配信になったと思います。テーマが、ドキュメンタリーをちゃんと見せようというコンセプトでやったので、そのコンセプトはしっかり成就できたのではないかと思います。」
「そして、この配信を観てくれた生徒に直接どうだったか感想を聞きたいので、直接電話をして聞いてみたいと思います。」
山口「こんばんは!サカナクションの山口一郎です。」
チョコスモス(以下、チョコ)「こんばんは!」
山口「チョコスモス、18歳ってことは、いま高校生?」
チョコ「大学1年です。」
山口「おー。大学1年生か。何日目を観てくれたの?」
チョコ「観ました。3日通して。」
山口「3日間全部観た?どうだった?」
チョコ「もう……すごかったです。本当に。いつもは光の演出とかすごいじゃないですか。でも、今回はそれなしで音に集中して聴けて。音質とかめちゃくちゃ良くて、本当にすごいなって。」
山口「普通のライブと違って音が結構クリアに聞こえたでしょう?ほぼレコーディングと同じ環境でのセッションだったから、聞こえ方がライブミックスとは違うよね。」
チョコ「はい。」
山口「特に印象に残っている曲ある?」
チョコ「「human」が。」
山口「おー!サカナクションの中で結構ロックな曲だよね。なんで?」
チョコ「「human」って……一郎先生も言ったけど、すごいロックじゃないですか。しかもサビの壮大感というか……それが僕めちゃくちゃ好きで。なのにライブで全然やってくれなくて。」
山口「ふふふ(笑)」
チョコ「調べても、シンシロツアー(『SAKANAQUARIUM 2009“シンシロ”』)だけかなって。だからライブで聴いてみたくて。」
山口「おー。どうだった?生配信で聴けた「human」。」
チョコ「感慨深いというか……」
山口「音源とはまた違うでしょ?」
チョコ「より壮大で……うまく言葉で言えないんですけど、めっちゃ迫力がありました。」
山口「サカナクションのライブって今まで観たことあったの?」
チョコ「はい。行ったこともあります。10周年ライブの静岡公演(『SAKANAQUARIUM 2017』)と、魚図鑑ゼミナール(『SAKANAQUARIUM2018-2019 "魚図鑑ゼミナール"』)の山梨公演と、名古屋の暗闇(『暗闇 KURAYAMI』)ですね。」
山口「暗闇も来たの!あれどうだった?」
チョコ「なんて言えばいいんだろう……すごいしか言えなくて(笑)。すべてが初体験みたいな感じで。」
山口「そうだよね(笑)。このスタジオセッションって、今まで見てきたサカナクションのリアルライブだったりオンラインライブとは違いを感じた?」
チョコ「違いましたね。いつもだったら演出多めで、今回は本当に音を伝える感じなのかなって。」
山口「そうだね。定期的にこういうのやったら観たいと思う?」
チョコ「めっちゃ観たいです。」
山口「今さ、アルバムごとにやってもいいかなって思ったりしているんだよね。」
チョコ「観たいですね。手元が見れるのが新鮮で。僕ドラムやってるんで、エジー(江島)さんのドラムに見入ってました。」
山口「もうね、レコーディングスタジオの中で江島が本気でバチバチ叩くからうるさいんだよね(笑)。ライブだったらいいんだけどさ。狭い空間ですごい大きい音で叩くから。うるさって久々に思ったわ(笑)。」
チョコ「「さよならはエモーション」のとき、荒ぶってましたもんね(笑)。」
山口「そう、荒ぶるんだよ(笑)。きっとさ、チョコスモスはスタジオに入るときに街スタに入るでしょ?時間貸しの、10畳くらいのところにドラムとかアンプが最初から置いてあってさ。」
チョコ「そうです。」
山口「僕らも当時そういうところでずっと練習していたんだけど、やっぱりメジャーになってきて、大きい場所でやれるようになってくると、スタッフも増えてくるから練習スタジオも30〜40畳とかあるようなすごい大きなスタジオで練習するようになるんだよね。広いから、街スタみたいに密閉した空間でそれぞれ演奏するっていう機会がなくなってくるじゃん。ライブも、ライブハウスじゃなくてアリーナとか大きいところだから、演奏は練習もするし上達するんだけど、バンド5人がそれぞれを感じ合うっていうことが15年やってきてなくなってきていて。でも、今回のスタジオセッションでお互いの演奏を感じ合うっていうことをちょっと思い出せたっていうのは、僕ら的にはやってよかったなって思ったし、定期的にやっていきたいなってちょっと思ったりしてる。だから、観てもらえて本当によかった。ありがとうね。」
チョコ「いや、こちらこそ。観せてもらって本当にありがとうございます。」
山口「せっかくこうやって話す機会だから、質問があったら答えるよ。」
チョコ「サカナクションって、メンバーの脱退なしで15年って結構すごいと思うんですよ。その15年やれた秘訣ってありますか?」
山口「サカナクションって僕が外に露出することが多いから、ワンマンバンドって思われがちだけど、スタジオセッションを観てもらったらわかると思うけど、全然そんなことないじゃん。」
チョコ「5人で、本当に。」
山口「そう。むしろ僕はどちらかというと一歩引いているような感じになっているんだけどさ。昔は全然そんなことなくて、みんなにいろんなものを押し付けたりもしていたし、自分の感覚をみんなに演奏してもらうために説得したりもしていたけど、僕の耳が調子悪くなったあたりから、メンバーのやりたいことを尊重するようにしていったんだよね。それが結構バンドがうまくいく秘訣になったかなと思うし、女の子がメンバーにいることで、男同士だと言いたいことをバンバン言っちゃうじゃん。でも、女の子がいると一歩引くっていうか、みんな聞くっていうムードになるんだよね、多分。それは、僕にとってはね。いい効果になったかなと思うけどね。」
チョコ「あー。」
山口「あと、プロデューサーがいないっていうのもあると思う。楽曲のアレンジとかに口を出してくる人がいないし、自分たちが作って自分たちの表現がそのまま世の中に出るっていう責任感みたいなものも5人の団結力になった気がするね。誰かに任せていると結構手を抜けるっていうかさ。曲を作る人とアレンジャーだけの話になっちゃったりして、プレイヤーはプレイに徹するだけになったりとかしちゃうけど。それぞれがアレンジャーとして楽曲に関わらなきゃいけないっていう状況が常にあるっていう、その緊張感みたいなものもよかったんじゃないかなと思うけどね。」
チョコ「やっぱり、メンバーを頼る場面が増えたってことなんですね。」
山口「そうだね。その分、クリエイティブの部分で少し空いた時間が、音楽の仕組みを考えたり、音楽に対する自分の思いみたいなものを成就させる……曲を作ったりするインプットの時間になったっていうのも大きかったと思う。」
チョコ「僕、静岡から今年上京したんですよ。サカナクションが上京した時と、今の東京に対する考え方の違いって何かありますか?」
山口「あー……東京に出てくる前は、僕らは北海道だったけど、全然北海道で評価されなかったんだよね、自分たちの音楽が。で、東京に出て行ったら、もっと分かってくれる人たちが多いはずだって思ってたの。もっとマイノリティで素晴らしいものを理解してくれる人の母体数が多いはずだって思っていたし、自分たちが納得するものだけを発信していても、それで生きていける場所なんだろうなって思っていたんだけど、東京に来てみたら、意外とミーハーな街なんだなって思ったんだよね。自分がいた札幌よりもめちゃくちゃミーハーだし、流行っているものが流行るっていう。その流行を作るっていうことの流れがめちゃくちゃ強い街なんだって。」
チョコ「あー……。」
山口「それと、なんとなく生きていける街だなって思ったんだよね。地方にいるとさ、20代後半で独身だったりすると、早く結婚しなさいよって親に言われたり、周りが焦らせてきたりすると思うし、夢を追いかけるのも大学卒業までみたいな……そういうプレッシャーがいまだにあるんじゃないかと思うんだけど、東京にいると普通に30代でも40代でもアルバイトしながら夢を追いかけている人がたくさんいるじゃん。だから、良い意味でも悪い意味でも、夢を諦められない街なんだなっていう感覚があったけどね。その当時はそう思っていたけど。でも、僕らが東京に出てきた時は、Twitterとかはあったし、インターネットもあったけど、今みたく誰もがSNSを利用してSNS上で自分の表現をするっていうこともそんなにない時代だったから、夢の種類ってものがすごく限られていたけど、今この時代での夢って、東京にいるいない関係なく、誰もが平等に自分の夢を発信できるようになった中での東京の存在感っていうのは、またちょっと違った形になってきているんじゃないかなって気はしているけどね。だから、そんなに東京にいる理由はないかなって気はちょっとしているけどね。僕がもし今ミュージシャンをやるとしたら、東京に行かないと思う。あと、レーベルと契約もしないと思う。全部インディペンデントで、自分でやっちゃうだろうなって。それ自体も表現になっているじゃん。戦略さえも表現の時代になっているから。音楽を作るだけじゃなくてね。だから、そういう部分では、東京の街の性質は、僕が東京に出てきた時とは全然違うだろうけど。チョコスモスが感じている東京の方がリアルなんじゃないかなと思うけどね。僕が今思っている東京よりも。」
チョコ「あー。自分自身も、東京は憧れの街って感じだったんですよ。それも大分慣れたというか……東京に今住んでいるっていう感じは正直ないというか。」
山口「自分が東京の中にどんどん溶けていく感覚ってあるじゃん?馴染んでいくっていうか。それは悪いことじゃないと思う。だけど、そんな中でも自分の中で変わらない部分を見つけておかないと。ただ単に染まっていくだけになっていっちゃうから。流されていくだけになっちゃうっていうか。無意識でも戦っていったほうがいいかなと思うけど。」
チョコ「ありがとうございます。」
山口「……大丈夫かな?こんな感じで。」
チョコ「本当に貴重な話をありがとうございます。」
山口「ははは(笑)。大袈裟だよ(笑)。」
チョコ「いやいや(笑)。」
今回の授業も終了の時間になりました。
山口「さっきチョコスモスも言ってくれたけど、15年メンバーも変わらずバンドをやることってすごいことだと思うんですって。そう言ってくれてすごく嬉しかった。多分みんなが今のサカナクションを見て感じていること以上に、この15年にはバンドの中でもいろんなことがありました。もちろん喧嘩もしたし、トラブルもあったし。でもそれを乗り越えて今があるんですね。今現在だって何も問題がないなんてことはないです。それを抱えながら、バランスをとって15周年を迎えたという感慨深さがあると思うんですね。ただ、SNSだったりYouTubeだったり、バンドの今のリアルな空気感みたいなものを含めて音楽の表現としていくこれからの時代の中で、そういった側面もみんなは見たいと思う時代なのかなと思っています。だから僕は積極的に音楽を作っていく上での自分の心の動きとか、そういうものもなるべく発信していこうとは思うんですけど、やっぱりそれを見たくないっていう人もいると思うんですよね。そこのバランスみたいなものを探っていくのが、インターネットがなかった時代と、インターネットがある今の時代の双方の時代で音楽をやってきた僕らが発見していかなきゃいけない、バランスを見つけていかなきゃいけないことなのかなって勝手に思っています。でも、時には失敗もするし、みんなが心配になってしまったりすることもあると思うんですけど、それも含めて、そのダイナミクスも音楽の表現だと……Aメロの後の落ちたBメロだと思ってくれれば(笑)。そこも曲の構成の一部なのかなって捉えてもらえると嬉しいなと思います。」
「ユーミン(松任谷由実)さんは今年50周年ですからね。坂本龍一教授も高橋幸宏さんも。だから、大先輩はまだまだ上にいますし、15年ぽっちで何を喚いているんだって先輩たちに怒られちゃいそうですけど、僕ら的には、この15年は……そんなに感慨深いっていう感じでもないけど、節目として、こういったスタジオセッションのライブをやってみんなに観てもらえたということは良かったなと思います。そして、成功する上で、たくさんのスタッフに支えてもらえたっていうことは本当に感謝ですし、ずっと応援してくださっている皆さんにも、本当に感謝の言葉しかありません。16年目以降のサカナクションも、どんどんアクティブに動いていきますので、よろしくお願いいたします。」
聴取期限 2022年5月20日(金)PM 10:00 まで