聴取期限 2021年2月5日(金)PM 10:00 まで
山口「はい、授業を始めますから席についてください。Twitterを開いている人はTwitterを閉じなさい。Instagramを開いている人は、 サカナLOCKS!のインスタアカウント(@sakanalocks_official)をフォローしなさい。授業が始まりますよ。サカナLOCKS!は、今日もリモートでお送りします。今回は、SNSなどで話題になっている、ニューウェーブ/テクノバンドのLAUSBUBを紹介したいと思います。LAUSBUBは、北海道在住の高校生2人組なんですよ。「telefon」という楽曲の演奏動画をSNSにアップしたところ、たくさんの人たちから注目を集めるようになりました。レーベルであったり、マネジメントであったり、いま話題騒然で引っ張りだこ。彼女たちはどんなやつらなんだ……ってすごい状況になっています。今日は北海道の先輩という権力を使って(笑)、彼女たちにインタビューをさせていただこうかなと思っております。「telefon」っていう曲がSoundCloudにもアップされていて、なんとSoundCloudの週刊チャートの"Top 50: All musicジャンル"で1位を獲得するというね。すごいことですよ、これ。やばいことになってますよ。なので、今日はレーベルが大注目のLAUSBUBにインタビューをします。まずはその曲を聴いていただきましょう。」
「僕ね、この曲をとある方から『こんな子たちが出てきたよ』って送ってもらって聴いた時にびっくりしちゃって。曲のクオリティの高さに。どんな子たちなんですかって聴いたら、北海道の高校生2人組だって聴いてさらにびっくりしちゃって。どんな子たちなんだろう、話してみたい……っていうことで、今回お願いしてお話させていただくことになりました。今日はオンラインでお話しするんですけど、いちばん最初に唾を付けてるんじゃないかな、僕ら(笑)。」
山口「ということで、LAUSBUBとリモートでお話していきたいと思います。こんばんは、サカナクションの山口一郎です。」
リコ「LAUSBUBのイワイリコです。」
メイ「LAUSBUBのタカハシメイです。」
山口「よろしくお願いします。」
2人「よろしくお願いします。」
山口「今、札幌在住?」
メイ「はい、在住です。」
山口「何歳?リコちゃんは?」
リコ「17歳です。」
山口「メイちゃんは?」
メイ「17歳です。」
山口「ということは、高校2年生?2人で活動するようになったのはいつからなの?」
リコ「はい。去年の3月ごろからですね。」
山口「え!?まだ1年経ってないってこと?」
メイ「そうですね。コロナの時期に一緒にやり始めました。」
山口「どういう経緯でやり始めることになったの?」
リコ「もともと軽音部のバンドとしてやっていたんですけど、ドラムの人が抜けちゃったのと、コロナでの休校期間とかが重なって、家で出来る音楽ってなったときに、たまたま自分たちがテクノにはまっていたっていうこともあって、こんな感じのものを作るようになりました。」
山口「おー(笑)。テクノにはまったきっかけは何だったの?」
リコ「きっかけ……その時急にはまったわけではなくて、中学生の時から好きだったんですけど。YouTubeでYMO(YELLOW MAGIC ORCHESTRA)の動画を見て、そこからですね。」
山口「YMOからだったんだ。YMOから入ってどういうところにいったわけ?」
リコ「ジャンル的には、YMOの最近のライブのサポートをしている人とか、周辺から掘っていって、ドイツとかの昔のテクノミュージックとか、ダンスミュージックにもはまっていきました。」
山口「サウンドメイキングをしていくにあたって、機材とかの情報はインターネットで調べていったの?」
リコ「インターネットか雑誌で調べました。」
山口「ほー。これはどっちがプログラム(バックトラックを作る)をしているの?2人でやっているの?」
リコ「音は基本的に私がやっていますね。」
山口「どうやって学んでいったの?ソフトは何を使ってる?」
リコ「ソフトは、Garage Bandです。」
山口「あ、Garage Bandで作ってるんだ!何か学んだりしたの?独学でやったの?」
リコ「独学というか……使っているうちに、だんだんやり方が分かっていったというか……全く勉強しようとかそういう感じではなかったですね。」
山口「とりあえず触って分かる感じでやっていこう、みたいなね。その、バンドとプログラミングで音楽を作っていくのって全然感覚的に違う?」
リコ「うーん……もともと打ち込みの経験が前のバンドであったので、そこからの延長戦って感じでした。」
山口「今、SoundCloudに曲を3曲アップしているじゃないですか。他にもいろんなところに音楽を発表していく場所ってあるじゃないですか。SoundCloudをチョイスした理由ってあるんですか?」
リコ「SoundCloudの本社がベルリンにあって。あと、やっぱり海外のサイトの方が国外の人に聞いてもらえる可能性が高いので、そこに魅力を感じてSoundCloudにしました。」
山口「グローバルに考えていたんだ。」
リコ「Eggsの方にも上げさせていただいていて。両方でやろうって思っていました。」
山口「そっかそっか。」
山口「楽曲の全てを作っているのはリコちゃんなの?」
リコ「はい、そうです。」
山口「本当に……SoundCloudの話を聴いた時点で、グローバルなところに目標を置いてやっているところがすごいなって思ったし、僕らが片足つっこんで戦っているのって日本のエンターテイメントシーンの音楽に向き合ってやっているから、LAUSBUBがチャレンジしようとしているジャンル感って僕たちの憧れではあるけど、それをエンターテイメント側に持ち込もうとするとすごくマイノリティになって、セールスっていうのが追いつかなくていつもやきもきするんだけど……もう、潔くそのシーンに対してグローバルにアプローチしているっていうのは素晴らしいなって思うし、その姿勢で続けていってほしいと思います。」
2人「ありがとうございます。」
山口「今、正直、めちゃくちゃたくさんの人に聴かれてるじゃん。」
リコ「そうですね(笑)。」
山口「僕だけじゃなくて、いろんなミュージシャンの人が注目しているし、レーベルだったりマネジメントだったり、日本のマーケットで勝負できるって思っている大人たちがいっぱい集まってきているんだけど、それってどう思う?」
メイ「嬉しいですね、すごい。」
リコ「というか、もう……聴いてもらえただけで嬉しいなっていう(笑)。全く売り出す気はなかったので、完全に全部無料でやっていて、だからこそ聴かれたというのもあると思いますね。」
山口「ははは!(笑) 今自分たちが作りたいと思って素直に作ったものが評価されるっていうのは、自分たちの才能に対して自信を持っていいと思うんだよね。ただ、すごい大人が集まってくるから……まあ、これから音楽で食べていくとかミュージシャンになりたいとか、どういう風に考えるかなんてまだ考えなくていいと思うんだけど、その姿勢を変えないでほしいなって。良いと思うものを……人に受け入れられるものじゃなくて、自分たちが面白いって思うものをただ淡々と作っている方が今はまだ良い気がする。今の段階でも、グローバルで戦っていけるくらいのセンスがあるから、自信持ってほしいなっていうのは伝えたかったんだよね。」
2人「ありがとうございます。」
山口「いやー、もう、本当にすごいよ今。びっくり。東京で今みんなあなたたちを獲得したがっているよ。」
2人「えー……!」
山口「でも、変な大人に騙されたらだめだよ!来るから、マジで。巧妙な手口で(笑)。」
2人「(笑)」
山口「でも、なんかあるわけ?将来どうなりたいかとか、音楽で食べていけるなら食べていきたいとか……」
リコ「うーん……音源は作ってどんどん出して行きたいなという思いがあるんですけど、やっぱり自分たちは海外の音楽が結構好きなので、そういう人たちと一緒にフェスとか出られたら……もう、最高だなって思っていて。そっちの方向に駒を進めて行きたいなって感じです。」
山口「うん、それがいいかもね。でも、英語を喋れなきゃね。」
メイ「いやー……」
山口「僕、パリ・コレクションの音楽をやった時に、すごく評判が良くて、ショーが終わった後に囲み取材って言ってさ、マイクを突きつけてくるやつあるじゃん。海外のメディアがバーって集まってきて、囲み取材が突如起きたのよ。やったーって思ってたら、みんな英語で質問してくるわけ。僕全然英語を喋れないから、『英語喋れないんですー』って言ったら、みんな一斉に散っていったからね(笑)。だから、グローバルで活躍していこうって思うと、やっぱり英語は喋れた方がいいだろうなって思うね。」
メイ「はい。」
山口「大学とかはどうするの?」
メイ「大学は、2人とも札幌の大学に進学しようと思っています。」
山口「目指してるんだ。学校の成績はどうなの、2人とも。」
2人「ふふふ(笑)」
山口「あ、じゃあさ、自分のことを言うのはあれだから……リコちゃんから見て、メイちゃんの成績はどうなの?」
リコ「ふふふ(笑)。ちょっと自分が言えたことじゃないんですけど、もう少し……(笑)。」
メイ「すいません(笑)。」
山口「ははは!(笑) じゃあ、メイちゃんから見てリコちゃんはどうなの?」
リコ「いや、本当に……自分が言えたことじゃないんですけど、もうちょっと頑張った方がいいかな(笑)。」
山口「ははは!(笑) なるほどね。しょうがないね、それは(笑)。でも、どんなこともそうだけど、音楽でやっていてもそうだけど、どうしても立ち向かわないといけない時ってあるじゃん。向き合う時って。自分のリアルと向き合う時が一番ドキドキするから、受験勉強って、僕はそういう自分のリアルと向き合う鍛錬っていうか、練習のような気がするんだよね。だから、音楽も勉強も楽しみながら頑張ってほしいと思います。」
2人「はい。」
山口「なんか僕、一方的にぶわーって質問しちゃったけど、何か聞きたいことはある?」
リコ「2人とも、今の状況もあるんですけど……サカナクションさんは、もともと札幌で活動されていたと思うんですけど、東京に上京されたじゃないですか。今はインターネットとかで活動できるような環境でも、上京することにメリットはあるのか……どっちがいいのかと思っていて。」
山口「あー……僕らが東京に上京した理由っていうのは、コンサート、ライブをちゃんと東京でやりたいって思ったからだったんだよね。今はコロナだからライブっていうものの重要性っていうのは変異してきているけど。当時はフェスに出たり、活動の拠点を東京に移すっていうことは、ライブが大きな理由だったんだよね。そういうライブっていうものを考えていくんだったら、東京に来た方がいいって僕は思う。でも、僕がいた時代と今って全然ツールの種類も違うし状況も違うから、北海道に居ながら制作して活動するっていうことでも全然問題ないと思うけどね。僕らがいたときよりは。逆に、東京に来ると楽しいから(笑)。例えば、ディズニーランド明日行こうっていったら行けるしさ、石野卓球さんがライブをやってるから行こうとかさ、それこそ、Kraftwerkが来るんだ……とかさ。だから、遊びに行くとそこに行って友達ができるじゃん。そういう友達……東京に擦れきっている遊びのプロがいっぱいいるわけじゃん(笑)。そうすると、なんかこう……北海道にいた時の自分たちの感覚とは全く違うものになるんだよね。それが良いのか悪いのかは分かんないけど、そこの判断みたいなものは結構重要かなって思う。」
リコ「はい。」
山口「僕が東京に来て大きな変化だなって思ったのは、北海道って雪が降ると、すごく音がデッドになるじゃん。反響しなくなって、街がしーんとする感じがあるじゃん。その感じが東京に来るとなくなるんだよね。風が強くて、雪が降らなくて、寒くて……デッドな空間がないというか。レコーディングスタジオにしかデッドな空間がないっていうことに慣れるのに時間がかかったかな。感情はすごい変化すると思う。それはすごいあったけどね。ただ、あんまり拠点をどこにするとか気にしなくて良いと思う。東京に来るくらいだったら海外に行った方がいいと思う。絶対。……って僕は思う、勝手に。」
2人「ありがとうございます。」
山口「あとね、すごいリアルな話をしておこうか。CDって、メジャーレーベルに所属して、マネジメントと契約してCDを出すとするじゃん。すると、著作権印税っていって、入ってくるのは3%なんだよね。CDの売り上げの3%が自分の収入になるのよ。たった3%だよ?」
リコ「3%……」
山口「そう。アーティスト印税っていうのが別途あるけど、それも5%〜10%なんだよね。それを2人で割って、売れた枚数に対する売り上げになるから、結構な数が売れないと自分たちの収入にならないじゃん。で、CDの原盤権っていうのは制作する上でかかった経費を支払った人が原盤権を保持するんだけど、大抵はレーベルとマネジメントがその原盤権を持つから、全体の売り上げから自分たちに入ってくるのが3%〜10%なんだよね。全体で10%いけばいいくらいかな。でも、自分で制作して自分でリリースしてって、自分でやればさ、例えばメジャーで10万枚売れた時に入ってくる収入と、自分でやって1万枚売れた時に入ってくる収入が一緒だったりするわけ。だから、どっちがいいとは言わないし、もちろんマネジメントが付いてくれるとプロモーションもしてくれるし、窓口にもなってくれていろんなことをしてくれるけど、今はエージェントっていって、自分で誰かを雇って契約するっていうやり方もいろいろある。そういう内情が分かった方がいいかもしれないよね。自分たちのスタイルっていうのはどういう道筋がいいのかっていうのは、内情を知らないと判断できないじゃん。そういうのを詳しく教えてくれる人とかがいるといいかもしれないね。」
リコ「全然まだ……そういったレコードとかを出す上でのシステムがどうなっているかとかも分からない状態で。とりあえず自分たちで管理できるシステムの中で今までやってきたので、これからどうするか話し合って決めていかなきゃなって思います。」
山口「そうだね。自分たちで何かをしなきゃいけないっていう負担は結構あるから。何が良いかっていうのは一概には言えないけど、制作に集中したいんだったらいろんな人に助けてもらいながらやればいいし、自分たちが全部やりながら制作もするっていう風に思うんだったらそのやり方もいいかなって思う。」
山口「LAUSBUBはグッズもたくさん出しているんだよね?」
メイ「はい。SUZURIっていうアプリで。」
山口「自分たちでデザインしてやっているんだ?」
リコ「そうです。」
山口「今、結構動いてる?」
リコ「今まで全然見たことない額の感じで動いていて……すごいありがたいなって思っています。」
山口「そういうのが機材を買ったり、活動資金になっているんだよね。」
リコ「そうですね。」
山口「是非、サカナLOCKS!の生徒の皆さんも音源を聴いて、グッズも是非手に入れていただきたいと思います。」
2人「ありがとうございます。」
山口「ごめんね、学校終わって夜遅くまで付き合っていただきましてありがとうございます。もしまた新しい曲とかが出来たら聴かせてください。」
2人「はい、ありがとうございます。」
山口「じゃあ、勉強もがんばってね(笑)。」
2人「はい(笑)。」
山口「それでは、さよなら。」
2人「さよなら。」
そろそろ今回の授業も終了の時間になりました。
山口「いやー……なんかこう、北海道の先輩としてっていう感覚でお話ししようと思っていたんですけど、話をしていると、大事にしたくなるね(笑)。まだ高校2年生なんでね。大学に行ったり、当たり前の幸せっていうものも経験しながら音楽と付き合っていくのも大事かなって思う。まあ、本人たち次第かなって思うんですけど。これからも北海道の先輩として何かアドバイスできることがあればしていきたいなと思っています。」
聴取期限 2021年2月5日(金)PM 22:00 まで