聴取期限 2020年11月13日(金)PM 22:00 まで
今回は新授業!『山口探偵への挑戦状』を行います。
音楽にまつわる疑問を山口先生改め、山口探偵が捜査して答えを導くという授業。テーマBGMは名探偵コナンです。
山口「サカナクションの山口一郎改め……真実はいつもひとつ!山口探偵です!ふふふ(笑) 音楽にまつわるさまざまな謎を解決!絶対に犯人を見つけ出す!それが、山口探偵!……じっちゃんの名にかけて!……ははは!(笑)今日も謎が僕を呼んでいる……。音楽の謎、今夜の依頼はこちら!」
『配信ライブの価格を決めた犯人を探せ!』
「今はなかなかライブができない中で、オンラインライブを行うミュージシャンが多い。サカナクションが先日行ったオンラインライブは、4,000〜4,500円という価格でした。ただ、本来のライブはもうちょっと高い値段設定になっていますよね。サカナクションでも7,500円とか7,000円とかかな。もっと高い人もいっぱいいるけど。今は、S席、A席……って席の種類を分ける形に戻っていたりもするんですが。大抵は7,000〜8,000円かな。なぜ配信ライブは本来の価格の半額程度になっているのか、そしてなぜ、1,000円や2,000円ではなく、4,000円のことが多いのか……これには絶対に犯人がいるはず!じっちゃん……オラ、悟空!ははは!(笑) クリリンさーん!(笑) ……犯人っていうか、4,000円代に設定されたのには必ず原因があって、それを決断した最初の人がいるはず。それを今日は山口探偵が推理していこうと思う。」
「サカナクションがなぜ4,000円という価格にしたのかという話をすると、サカナクションのプロデューサーは、音楽制作者連盟(音制連)の理事長でございます。つまり、このコロナ禍でいろんな人が切磋琢磨している状況を全部把握している、ある種……頭ですよね。そういう人が近くにいるので、そういう団体からしてもみんなそういう価格設定でライブをやり始めているので、サカナクションも4,000〜4,500円くらいにならっておかないとな、という。そういう理由ですね。」
「ここからは、山口探偵に集められた探偵ファイルを元に推理していく……じっちゃんの名にかけて!……ふふふ(笑) "じっちゃんの名にかけて"は金田一か。」
<探偵ファイル (1)>
有料配信ライブの先駆けとして6月25日に行われたサザンオールスターズのオンラインライブ通常の公演チケットは9,500円程度。この配信ライブは3,600円。有料チケットの購入者はおよそ18万人。
「うーん、すごい。なるほどね。サザンオールスターズが最初に3,600円でやったというのは一種基準を作ったという疑いはある。なぜならば、『サザンオールスターズのライブが3,600円なのに、おたくのライブ6,000円とか……』という圧力はある……じっちゃんの名にかけて!……ふふふ(笑) それはあるかもしれないな。サザンオールスターズといえばバンド界のピラミッドがあるとしたら……いや、海の食物連鎖があるとしたら、サメのところにいる!サメが3,600円って言っているんだから、僕らみたいなイワシみたいな食物連鎖の下の方にいるミュージシャンからすると、サメが3,600円っておっしゃっていますから、イワシごときの我々がそんな高い値段設定は無理です……っていう状況ではある。そういう無言の圧力みたいなものを感じて値段が決まっていったという推理もある。」
<探偵ファイル (2)>
10月に2日間に渡って行われたBTSのオンラインライブ。価格は4,900円。世界でおよそ99万人が視聴し、1回のライブで46億円の売上を記録。BTSの日本ツアーの通常のチケットは12,000円程度。
「ははー……これはBTSのファン層というのは年齢層が幅広いですよね。若者も多いし、年上も多い。ファン層が広いということですね。そして、女性が多い。普段のチケットが12,000円と非常に高額な中、4,900円という設定は良心的、魅力的に見える。これはBTSが4,900円という設定をしたのは、普段の値段が高い上で配信ライブは4,900円という、値段を低く感じさせる戦略としてはちょうどいい価格ではないか……これはBTSの戦略である。……じっちゃんの名にかけて!………(しばらく沈黙)……なんでだーっ!(笑) 難しいね、探偵のふりするの(笑)。」
<探偵ファイル (3)>
ゆずが9月より5週に渡って、ゆずゆかりの場所より オンラインツアーを開催。「夏色」以外全曲かぶりなしのツアー。1DAYチケットが3,600円。グッズ付き5日間の通しチケットは18,000円。
「これは非常に面白い企画ですね。毎週やるんですもんね。1DAYだと3,600円で、設定は低めと。でも、5日間で18,000円はさらにお得な感じがすると。アコースティックな形態が多いのかな。すると、スタッフの数もそんなに多くなくていいし、楽器の搬入も少ないから、かかるコストが安い分チケットが3,600円という安い帯域で出来るし、移動が楽なのでいろんな場所でやれるという……ゆずのメリットをいかした非常に素晴らしいアイディアですね。こういうことはいいですね。配信ライブの醍醐味というか、配信ライブだからこそできる企画じゃないですかね。これも3,600円とゆずが設定しているということは、4,000〜4,500円という設定ラインに対してちょっと下げる、安く感じさせるという技ですね。だからゆずがこの値段設定をもたらしたという推理には至らない。」
「先ほどのBTSも、4,900円という値段にして、それがルールになったとは思えない。サザンオールスターズが3,600円という基準を1つ作ったという説はあるが、それも一概にサザンオールスターズが犯人とは言い切れない。ここでもうちょっと具体的に推理していこう。」
<探偵ファイル (4)>
電子チケット販売プラットフォームZAIKO調べによると、ライブ配信チケットは、当日購入が全体の3割。ライブ後のアーカイブ期間は5%
視聴方法は、およそ6割がスマートフォンで視聴。
視聴ユーザー層は、1位が26歳から34歳で29.7%、2位が35歳から44歳で24.8%、3位が18歳から25歳で21.5%。
チケット購入までの動線は、およそ4割がTwitterから。
「ほー……これがどういうことかというと、前売りじゃなくて、当日にチケットを買うのが3割もいると。これは普通のコンサートではありえない。前売りが9割で、チケットを当日買うことはほとんどないし、買えないっていう状況になっていますよね。で、ライブ後のアーカイブ期間にチケットを買う人が5%だということは、やっぱり生で観たいんだと。配信でありながら、多くの人がリアルタイムでみんなとシェアしながら観たいという感情を持っているということですね。
視聴方法は6割がスマートフォンだと。スマートフォン以外でいったら、PCだったりとか、それ以外の方法もいろいろあるんだろうと思うけど、スマートフォンが半分以上だと。視聴者層も26歳から36歳という層が多いということで、TwitterをメインのSNSとして使っている人が結構いるかなという層という感じですね。2位は、35歳から44歳と。これは、子どもができてライブに行けなかった人たちが、配信なら観ることができると希望を見出した数値が2位になっているんじゃないかっていう気がしますよね。1位2位のこの層はね。3位が18歳から25歳というのは、普段からよくライブに行ったりしている層。配信ライブでもライブを楽しみたいと思っている人が一番多いのが3位の年齢層なんじゃないかと思いますね。あと、熱心なファンっていうのもあるんじゃないかと思う。
で、4割がTwitterからチケット購入をしているということは、音楽を好きな層、普段ライブのチケットを多く買っている層と変わらないので、ライブに行っていた人たちがスマートフォンを使ってTwitterを導線にしてチケットを買っていると。つまり、我々ライブを行う側としては、今までライブを見てきた層が配信にも流れて欲しいという価格設定を考えていこうというのが動機だなと。当たり前だけども。」
<探偵ファイル (5)>
ロッキング・オンのオンラインフェス「JAPAN ONLINE FESTIVAL 2020」が11月に3日間に渡って開催。
1日のチケット価格は前売りが2,000円。3日間通しチケットが5,000円。
毎日3時間半のライブをお届けする予定。
「これはどういうことかというと、今までROCK IN JAPAN FESTIVALという大規模なフェスをやってきたロッキング・オンがオンラインでやるということを発表したということは、ある種基軸を作ろうとしているというところがあるのかもしれない。低価格な設定ですね。好きなミュージシャンだけ観たいっていう人が結構多いだろうから、チケットを安くすることで短いライブの時間でも体験させるという。1ミュージシャンに対する対価みたいな価格設定にしているんじゃないかなって気はしますね。あと、配信をライトな層に届けたいっていう設定でもあるのかなと。これは、フェスっていうフォーマットの中での配信のひとつのルールを作ろうとしているということなんだな。」
「今までの探偵ファイルを読み取っていくと……うーん……なるほど。……犯人が分かったぞ、じっちゃん!配信ライブの価格を決めた犯人は……」
「あなたたちです!!」
「ははは!(笑) なんかどこかで昔あったお笑い番組の最後みたいになっちゃったけど(笑)。犯人は、あなたたちです。普段ライブに行っているあなたたちが、配信ライブというフォーマットの中で一体いくらなら好きなミュージシャンのコンサートを配信で観るのか……それを運営者側が推測し、あなたたちのために4,000〜4,500円という設定を設けたのだと思う。生のライブに行きたいという気持ちを損なわさせずに、配信ライブも観たい、コロナが落ち着いたらまた生のライブが観たい、音楽というものへの情熱を消させずに、枯渇させた状態でまたライブに戻ってこさせるという非常にバランスのいい価格設定を我々に決めさせたのは……あなたたちです!!」
「これは山口探偵の耳にコロナ禍で飛び込んできた話なんですけど、ライブができなくなって、オンラインライブをみんながやり始めていったんだが、結局最終的には生のライブがいいよねってみんな思うと。配信ライブを観て、やっぱり生のライブに行きたいっていう気持ちが起こるのは別にネガティブではないよねと。そういう意見がありましたね。
コロナ禍の初期は、オンラインライブをやるというのは、音楽に関わる人たちへの支援っていう意味合いも込めてそういったことをやっていることでファンの方たちは応援っていう意味でそれを観るっていうこともありましたし、ちょっとスペシャルなところもありましたけど、最近のオンラインライブは視聴者が減ってきていると。それは、普通にライブハウスとかでやっているのに見飽きてきたっていうのと、生じゃなくて収録されたものを配信するっていうことになってきているので、ミュージシャンごとに温度差があるっていうこともあるのかな。向き合い方というか、そういうものに対して。
なので、より生のライブに対する渇望感が出てきているということがあると思うんですよ。それを損なわせずに、でもライブ配信も観てもらいたいっていう部分での価格設定として4,000円から4,500円というのが業界全体の流れになったんだなと思う。視聴者の方たちのことを考えての、業界全体の判断なのかなと思う。
だから、犯人はあなたたちですって言ったけど、あなたたちでもあり、決定した音楽業界でもあるんだな。……まあ、はっきり犯人言いたいけどね(笑)。ということで、犯人は視聴者の皆さんであり音楽業界であるということでした。……真実はいつもひとつ!じっちゃんもいつも一人!ふふふ(笑) じっちゃん……今夜も山口探偵は、じっちゃんのおかげで謎が解けたぞ。次回の山口探偵の挑戦状は、あなたたちからの疑問を推理していく!じっちゃん……オラ、頑張ってるぞ……!」
ということで、生徒の皆さんから『山口探偵への挑戦状』をお待ちしています。音楽業界に対して疑問に感じることや、音楽の話でよく話題に上るのにはっきり分からないことなど、音楽にまつわる "謎" を送ってください。宿題の提出は [ コチラ ] からお待ちしています。
【 お知らせ 】
サカナLOCKS!の [授業]で一郎先生が選曲した『夜を乗りこなす』プレイリストがLINEミュージックに追加されました。 [ コチラ ] から聴くことができます!
聴取期限 2020年11月13日(金)PM 22:00 まで