「山口一郎 パリコレ滞在記 2019 (後編)」

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聴取期限 2019年10月18日(金)PM 11:00 まで



今回の授業では、9月下旬、フランス・パリにて発表されたファッションブランド「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の2020年春夏コレクションの音楽を担当した山口一郎先生が、ショーでの演奏を再現します!

山口「今回もNFの青山くんとパリコレの話をしていきたいんですけど、ANREALAGEというファッションブランドの音楽を僕らは5年担当していて、今回は"ANGLE"というコンセプトで音楽制作をしたっていう話を前回したと思うんですけど。ANGLEっていうのは"視点"。見る視点によって服のデザインって変わるから、それをそのままデザインしてみたいという森永邦彦さんの考え方を音楽で補強しようって形になったんだよね。」

[→前回の放送後記はコチラ!]

青山「そうですね。」

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山口「そのコレクション自体はWEBサイトで見られるようになっていて、ショーも見られるんだよね。それを見ていただけたら、どういうものか考え方もわかると思うんですけど。僕らはそれに基づき、テルミンっていう楽器を使ったら良いんじゃないかと。つまり、立体を手で撫でるように演奏する楽器。それが二次元というか、音に変換されるっていう考え方が、視点が変わるっていうことでいいんじゃないかということで、テルミンを急遽ヤフオクでゲットして(笑)。パリに持ち込み、演奏しました。」

青山「はい(笑)。」

山口「今日は青山くんもいるので、実際にパリコレクションの音楽を再現してみようと思う。テルミンを演奏しながらね。パリコレクションの音楽は、1部、2部、3部、フィナーレという4部構成だったんですよ。1部は、1つのデザインで3つの視点があるから、3人同時に出てくるっていうところ。2部が1人ずつ出てくるところで、3部はまた3人ずつ出てくるところ。フィナーレは全員出てくるっていう構成だったんですよ。テルミンを使ったのは2部からだったんですね。1人ずつ出てくるところ。なので、その1部と2部の切り替え……1部のおしりからテルミンが入ってきて、テルミンだけになって、2部のリズムが入ってくるところを今日は再現してみよう!翔ちゃん!」

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青山「はい(笑)。再現しましょう。」

山口「僕はテルミンを担当していて、青山くんはラップトップでトラックを出していたっていう感じですね。」

青山「はい。」

山口「ちょっと1回、テルミンがどんな音がするか聴いてみる?」

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(テルミンを演奏しながら……)

山口「テルミンっていうのは、ロシアの楽器で、世界最古の電子楽器だと言われているんですね。テルミン博士っていう人が開発した楽器で、1本のバーがあって、そのバーに手を近づけると音が高くなっていくんですね。今バーに近づけています……離しています……こういう感じね。(細かく音を出しながら……)お腹が鳴ってるみたいだよね、これ(笑)。で、右手は立っているアンテナみたいなバーに近づけながら音階を調整して、左手はボリューム。近づけると下がって、離すとボリュームが上がる。手を震わせるとこうなるの。これをパリコレクションで使って演奏したんですね。」

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山口「これにエフェクトをかけていて、ディレイっていうエフェクトなんだけど。かけてみると……ふふふ(笑)。(音を震わせながら……) 『変身!!』っていう、仮面ライダーの変身の時みたいな(笑)。要するに……暴走族がエンジンをふかすみたいな感じだね(笑)。本当はこれでメロディーを演奏できるんだけど、僕はちょっとその技術がないので、効果音的な使い方をしていました。」

山口「じゃあ、ちょっと実際にどういう感じだったのかをやってみよっか。僕が今からテルミンの独奏に入るから、本番みたくリズムインしてきてね。」

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青山「はい、分かりました。」

山口「じゃあ、パリコレクション ANREALAGE 2020 S/S "ANGLE"の2部のところ、やるよ。」

♪ ANREALAGE 2020 S/S COLLECTION 再現LIVE/山口一郎+青山翔太郎

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ANREALAGE 2020 S/S COLLECTION ‘’ANGLE’’ -full ver.-

山口「思い出すねー(笑)。だけど、電圧が日本とパリで違ったから、テルミンの音が違ったんですよ。なので、パリの方がもうちょっと歪んでいたよね。」

青山「そうですね、もっと威力がありましたね。」

山口「日本で鳴らすと少し線が細くて、良い意味で頼りない、不安定な感じがあったけど、パリはもう少しガツンと。」

青山「ファットな感じでしたね。」

山口「僕は日本にいる時のこの不安定な感じが良いかなって思ったけど、実際にパリでファットな感じでも、やっていくうちに良くなったよね。電圧って大事なんだなってことも感じました。でも、電気のコンセントも大雑把だよね(笑)。パリのって、ガツーンって感じだもんね。日本みたいに、チュッって感じじゃなくて、バコーン!って感じ(笑)。」

青山「丸くてバコって入りますよね。」

山口「なんかフランスっぽいわーって思った(笑)。でもあれはフランスだけじゃないのか。」

青山「はい、ヨーロッパは何カ国かありますね。」

山口「どこが電圧すごいんだっけ?韓国はすごいんだよね?アジアでは。」

青山「韓国も確かすごいですね。」

山口「だから、日本の楽器は全部100Vか。日本に入ってくる時点で100V用にカスタムされたりしている楽器も多いんだよね。」

青山「そうですね、おそらくアダプタが違うんじゃないかなと。」

山口「ギターアンプも海外で鳴らすと音が変わるとかで、僕も中国に行った時にモッチ(岩寺基晴先生)のギターの音が結構変わって、エフェクトを再設定しないといけなかったりとか。電気ってエネルギーだから、楽器にとってはすごい大切なことだなって感じましたね。スピーカーとか……今はみんなアンプとかって持ってないと思うけど、僕らの世代は、音楽を再生するためにアンプがあってスピーカーがあって、アンプの電源タップを変えると音質が変わるっていうのがあったんですよ。」

青山「あー、ありましたねー。」

山口「まあ、今もそうだけど(笑)。だから、電源を供給する場所っていうのが大切だというのがはっきりわかるね。っていうことはだよ、人間にとってのエネルギーは何なのかっていう話になると、食べ物だよね。だから、食べ物って大事なんだなって思った。で、僕ね、パリで何年か振りになんですけど、1日3食食べたんですよ。毎日。」

青山「朝昼晩。」

山口「青山くんが朝ベーグルを買ってきて、昼何か食べに行く、で、夜しっかり食べるっていう……3食の生活をしていたらやっぱりメンタルがよくなって帰ってきましたね。」

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今回の授業も終了の時間になりました。

山口「パリコレクションっていうものや、ファッションに興味がない人もいっぱいいると思うんですけど、みんながよく着ているファッションの原型というか。何を元にそれが生まれているかっていうと、パリコレクションとかで生み出された服に対してアプローチしているのが、みんなが手に入るようなブランドの服だったりするんですよ。だから、ルーツみたいなものだと思ってくれれば良いと思うんですけど。そういうコレクションみたいなものがあって、みんなが着ている洋服があるんだっていうのが分かると、1着何万円もする服なんてありえないって思うかもしれないけど、それが産まれる工程や素材、人が手作りで作っていることや、ブランドの価値だったりとか。そういうのがあるっていうことを、僕らが今回パリコレクションの音楽をやったことがきっかけで、ちょっと興味を持ってくれたり、調べてくれたりすると面白いかなと思います。遊びだから、全部。ファッションも音楽もつながっているのでね。興味を持ってもらえたらと思いました。青山くんもNFでDJをやっていますけど、トラックも作っていて。」

青山「はい。そうですね。」

山口「だから、青山くんも今度NF Recordsでリリースをする予定です!青山翔太郎として独り立ち(笑)。皆さんその辺も注目してもらえたらと思います。ということで、今回の講義はここまで。音を学ぶ、音で学ぶ、音に学ぶ、"音学"の講義、サカナクションの山口一郎と、」

青山「青山翔太郎でした。」

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