今回の授業は、「学校の先輩におすすめの音楽を教えてほしい。と言われたのでサカナクションを聞かせた」という生徒からのある『相談』に、一郎先生がのっていきます。まずは生徒からの着込みを紹介します。
★わからん
先輩におすすめのアーティストを教えてほしいって言われたのでサカナクションをおすすめしたのですが、僕がおすすめする曲が合わなかったみたいで違うって言われました。そこで諦めるかと思ったらなぜかサカナクションの曲が好きな気がするからもっと教えてほしいって言われてもう4ヶ月です。
僕は「シーラカンスと僕」や「『バッハの旋律を夜に聞いたせいです。』」など聞いてもらったんですが違うみたいです。
一郎先生ならどの曲をおすすめしますか?
男性/13歳/埼玉県
山口「ははは!(笑) あのね……サカナクションの曲をおすすめする際に、「シーラカンスと僕」と「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」を最初に紹介するのはちょっと難易度高いかなって思うぞ(笑)。失礼な先輩だなと思う人もいるかもしれませんが、そういう時ってよくあると思うんですよ。ということで、今回はこの生徒に電話をして、サカナクションのメンバーである私がこの先輩におすすめするサカナソングをいっしょに考えていきたいと思うぞ。」
山口「もしもし!サカナクションの山口一郎です。」
がちむきのトマト「もしもし!がちむきのトマトです。」
山口「早速だけど、まずは、サカナクションの楽曲を他の人に勧めてくれてありがとう!」
トマト「(笑)」
山口「この話、どういう流れでなったの?」
トマト「もともと先輩の好きなアーティストを教えてもらって。「俺は教えたから、お前のを教えてくれ。」っていう、半分強制的な取引になったんですよ。」
山口「取引になったんだ(笑)。ちなみに、その先輩から教えてもらったのは誰なの?」
トマト「欅坂46です。」
山口「欅坂を教えてくれたんだ。その先輩はアイドル系が好きなわけ?」
トマト「はい。そうらしいです。」
山口「そうなんだ。先輩いくつ?」
トマト「先輩は15です。」
山口「15ってことは……2個上?がちむきのトマトは何年生?」
トマト「中1です。」
山口「あ、がちむきのトマトは中1で、先輩は中3なんだ。」
トマト「はい。」
山口「それは、部活?」
トマト「はい、部活の先輩です。」
山口「何部?」
トマト「卓球部。」
山口「卓球部の中3の先輩で、欅坂とかが好きな人なんだな。」
トマト「はい。」
山口「書き込みにもあったけど、サカナクションのどの曲をおすすめしたの?」
トマト「「シーラカンスと僕」とか、「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」とか、「仮面の街」とか……」
山口「ちょっと、お前さ(笑)。欅坂が好きな先輩だろ?その先輩にこの曲はちょっと合わないだろ、どう考えても(笑)。もうちょっとなんか……考えろよ(笑)。それはセレクトミスだよ。」
トマト「(笑)」
山口「でも、その曲を選んだ理由はなんなの?まずそれを聞くわ、俺は。」
トマト「自分がもともとそういう曲調が好きで、先輩も欅坂でも静かな方の曲が好きだって言うから、音数少ないし、落ち着いている感じだから「シーラカンスと僕」と、「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』」は良いかなって。」
山口「あー、なるほど、なるほど。まず、欅坂の中でも、ある種深海的な曲を好きな先輩だ。だからがちむきのトマトはシーラカンスかな……ちょっと攻めてバッハかなみたいな感じだったわけだな(笑)。なるほどな、そういう読みな。でも、それを紹介した時のリアクションはどうだったのよ?先輩は。」
トマト「「ふーん……。」みたいな、なんか微妙な反応。」
山口「微妙な反応だったんだ。その場で聴かせたわけ?」
トマト「はい、そうです。」
山口「でも、先輩は今興味を持ってくれているんだよね?」
トマト「はい。」
山口「どういう感じなの?興味を持ってるって……どういう雰囲気?」
トマト「なんか……「俺に刺さるまで教えてくれ」って……。」
山口「あー。」
山口「ちょっとリサーチしても良い?」
トマト「はい。」
山口「先輩は、欅坂の他にはどんな人が好きなの?」
トマト「あと、乃木坂とか……やっぱアイドルが好きって言ってました。」
山口「アイドル系なんだ。アニメとかも好きなのかな?」
トマト「アニメも好きって言ってました。」
山口「アニメは何系が好きなのかな?」
トマト「なんか……『ラブライブ!』が好きって言ってました。」
山口「あー。『ラブライブ!』ね。」
トマト「うちの部活が、"卓球部に入るとアニオタになる"っていう、暗黙の了解があって……」
山口「ははは(笑)。入ったらもう、「お前らはこれからアニオタになるからな」みたいな。」
トマト「そうなんですよ。」
山口「先輩はどういう性格の人?部活の中でも部長とか……」
トマト「あ、部長です。」
山口「部長!責任感ある感じ?」
トマト「あんまないです。」
山口「ははは!(笑) それは、部員は何人いる部の部長なの?」
トマト「部員……40人くらいかな。あ、でも、3年生が引退した……」
山口「そんなにいるの?でもまあ、3年生入れて40人くらいいた部の部長なんだ。」
トマト「はい。」
山口「高校はもう決まっているのかな、部長は。」
トマト「高校、わかんないです。」
山口「あー……激しめの曲で、サカナクションの曲は聴かせてない?」
トマト「あ、1曲「アイデンティティ」を聴いてもらいました。」
山口「お、その時はどうだった?」
トマト「その時はなかなか良かったみたいです。」
山口「おー。「アイデンティティ」は良かったんだ……じゃあ、そっち系じゃないか?」
山口「そしたら、サカナクションの戦略を教えてやるよ、がちむきにこっそりと。」
トマト「はい。」
山口「サカナクションの戦略としては、「アイデンティティ」とか、「新宝島」とか、「セントレイ」とか、そういった曲でサカナクション良いかもって入ってきた人たちが、「三日月サンセット」とか「ネイティブダンサー」とかもちょっと良いかもって思うわけだよ。で、「ネイティブダンサー」とか、ちょっとダンスな曲も好きだなって聴いていくうちに、「シーラカンスと僕」だとか「ユリイカ」だとか、そういうちょっと深い……深海の曲を好きになっていくっていう、入り口があり、たどり着くくらい曲があるっていうのが、サカナクションの戦略なんだよな。今の時代、戦略すら表現の一部だからな(笑)。」
トマト「(笑) はい。」
山口「なのに、がちむきは、いきなりどん底の深海側から先輩を連れて行こうとしたんだよ(笑)。いきなり深海に先輩を沈めたんだよ(笑)。」
トマト「(笑)」
山口「だから、ここは、サカナクションの戦略に沿ってだな……浅瀬の曲から行き、中層に行き、深海に行くっていうストーリーで行ってみよう。」
トマト「はい。」
山口「じゃあ、最初の1曲を決めていこう。「アイデンティティ」は聴かせたんだよな?」
トマト「聴かせました。」
山口「反応が1から10まであるとしたらどのくらいだった?」
トマト「5くらいです。」
山口「「アイデンティティ」で5ってことは……結構苦戦しそうだな(笑)。それは、音楽だけ聴かせたのか?ミュージックビデオを見せたのか?」
トマト「ミュージックビデオを。」
山口「ちなみに、その先輩はサカナクションを全く知らなかったのか?」
トマト「はい、全然知らなかったらしいです。」
山口「じゃあ、1曲目は「新宝島」をいってみようか?」
サカナクション / 新宝島
山口「「新宝島」のミュージックビデオを、イヤホンを付けて見せようか。」
トマト「はい。」
山口「出来ればでいいんだけど、2サビまでは聴かせたいな。ミュージックビデオ的に、2Aくらいからちょっとおちゃらけてくるのよ。」
トマト「はい、はい。」
山口「おちゃらけてくるところの反応を……サカナクションってこういう明るい曲もあるし、コミカルな要素もあるバンドなんだなって最初に思わせて油断させるんだよ。」
トマト「はい。」
山口「で、これで反応が5以上の場合、次の曲にいってみようよ。バッハいってるんだよな。」
トマト「バッハ、いってます。」
山口「じゃあ、「夜の踊り子」どうだ?」
トマト「あー!」
山口「その手はありだろ?」
トマト「あります。良いかもしれない。」
山口「「新宝島」とは違う、少しナウな感じの……(笑)。ナウい感じの曲……「夜の踊り子」を提案すると。ミュージックビデオもちょっとずつ寄っていくっていう。」
サカナクション - 夜の踊り子(MUSIC VIDEO)
山口「そのミュージックビデオの1サビまででいいよ、とりあえず。1サビ終わりまで聴かせれば……サビまでが長いから。最後までサビとってあったんだ……って感じだからな。だから、「夜の踊り子」を聞かせるときに、「サビまでがすごい長いんですけど、ご褒美がくるので、我慢して聴いてください!」って言うんだよ。」
トマト「はい(笑)。」
山口「そしたら、「わかった」って先輩言うだろ?ここまでで、印象が良かった場合、次の曲にいってみようよ。」
山口「なんだろうな……浅瀬的な要素で「アイデンティティ」は武器だったんだけど……これどうだ?「ミュージック」のライブバージョンの映像を見せるっていうのはどうだ?」
トマト「あー……「ミュージック」いいですね。」
山口「「ミュージック」いいでしょ?ミュージックビデオだと、「ミュージック」って少し暗いんだよ。でも、ラップトップを並べているライブ映像を見せたら、ちょっとドキッとするんじゃないかな?先輩。」
トマト「あー。」
山口「がちむきはサカナクションのライブを観たことあるか?」
トマト「はい、観たことあります。」
山口「「ミュージック」って、最初パソコンが並ぶだろ?それが最後バンドになるだろ。それっておもしろくない?(笑)」
トマト「おもしろいです!」
山口「おもしろいよな?初めての人が見てもドキッとするかもしれないよな。」
トマト「はい。」
サカナクション / LIVE Blu-ray、DVD「SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY 〜」 Digest Movie
山口「それを、「新宝島」でコミカルな部分もあるんだなって思わせて、「夜の踊り子」で、アンニュイな部分もあるのかなって思って、「ミュージック」で、あれ?バンドじゃないの?って思うっていう作戦でいこうよ!」
トマト「はい!」
山口「ちなみに、ライブ映像をスマホで見せられる状況にあるか?ない?」
トマト「ないです。」
山口「ないか……なんかいい方法ないかな?」
トマト「あ、うちまで先輩を連れて来れば見せられるかな。」
山口「先輩連れて来れる?家まで。」
トマト「わかんないです(笑)。」
山口「よし、呼ぼう!3曲目に「ミュージック」のライブバージョンを見せよう。で、ライブを見せるのはライブDVDとかBlu-rayか?」
トマト「あの……地上波でやったやつです。」
山口「あ、NHKか!じゃあ、それそのまま流しちゃおうかな(笑)。3曲聴いて、サカナクションってこういう感じなんだ……ってふわっとしている中で、シーラカンスやバッハも見ているわけだよな。で、あのNHKの番組って少しドキュメンタリーちっくな要素もあるよね。だから、今度はその人柄的なところを見せていこうよ(笑)。」
トマト「(笑)」
山口「人柄の方に入って、どういう反応があるかを見ていこうか。じゃあ、その戦略でいこっか。」
トマト「はい。」
山口「じゃあ、復習するぞ……」
・2曲目:「夜の踊り子」のMVを1サビ終わりまで観せる。
「1サビ終わりまで」でよいが、先輩がいい感じだったら止める必要はない。
・そして、「先輩卒業だし、うちで遊びませんか?」と家に誘う。
さりげなくサカナクションのライブ映像で、3曲目:「ミュージック」を観せて、話などをしながら、テレビ番組内のドキュメンタリー的な部分も観せる。
山口「……それで、「先輩サカナクションのこと好きになりましたか?」って聞いて、「1から10だったらなんですか?」って聞こう。で、その結果をまた電話で話そう。もう1回サカナLOCKS!出てくれるか?作戦を実行して、結果報告の回をやるから。」
トマト「はい、OKです。」
山口「よし、がちむきの任務は、先輩の卒業までに、サカナクション好きにさせるっていうミッションをサカナLOCKS!から与える!今日から、がちむきはサカナクション布教委員会の委員!」
トマト「はい!」
山口「じゃあ、頑張ってくれよ。サカナクション布教委員、がちむきのトマト。よろしく頼むぞ!」
トマト「はい、頑張ります。」
山口「よろしく!また連絡取り合おう。じゃあな!」
山口「がちむきには頑張っていただくということで、この結果報告がいつ来るのか……家に先輩を呼ぶっていうのもちょっとドキドキだからね。これは楽しみにしたいと思う!」