時々、ふと立ち止まって町を見る。ここには五年前、何があった所なのか。
私達は、忘れ始めてないだろうか。
あの日があるから、今の私は居る。
当時は中学一年生。先輩の卒業式を一週間後に控えた水曜日だったと思う。
震災が、当たり前だった日常をぶち壊しに来た。校庭に避難すると、怪我したまま逃げてきた先輩や、怖さで泣いている友達が居た。
この校庭は、数日もすれば避難者の皆さんのための駐車場になった。
私達は、学校に数日通えなかった。私と妹は、電話が使えなくなった代わりに、学校からの連絡を伝えるために同じ学年のクラスメイトの家を回って歩いた。三月なのに雪が降っていた。
あれから5年。
私には夢ができ、東京へ旅立つ事になった。あの日の記憶は今なお色褪せない。
震災を経験した私たちの義務は、伝える事だ。震災は防げない。
時々、ふと立ち止まって町を見る。ここには五年前、何があった所なのか。
私達は、忘れ始めてないだろうか。
いちこ 岩手県 18歳