「オリンピック、ガンバッテネ!」
台湾の玄関・桃園空港からおよそ1時間、
カタコトの日本語を話す陽気なタクシー運転手に連れられて台北。
12月22日。
街にはマライアのクリスマスソングが流れ、
セブンイレブンやFamilyMartの店先には、
サンタの帽子を身につけたキュートな人々。
見慣れた景色、少しの違和感。
“EARTH × HEART LIVE PROJECT”。
韓国、シンガポールと、アジアを巡ってきた音楽の旅は、ここ台湾でひとまずのフィナーレを迎える。
日本がちょうど17時を迎えた、台湾時間の16時。
ライブハウス“Legacy Taiwan”の扉の前には、19時30分の開場が待ちきれず、
早過ぎる会場入りを果たしてしまった7人のロックキッズ。
中は、ちょうどアジカンのリハーサル真っ最中。
少年たちは、聴こえてくる音に、
「オオオー!(今日はこの曲もやってくれるのかー!)」といちいち歓声をあげ、
ピュアな笑顔を見せ合う。
話を聞くと、彼らは現在20歳。
小学校の時からアジカンを聴き続けてきた、生粋のファン。
「アジカンに憧れて、バンドを始めたんです」
そう言いながらも、偶然外を歩いていたストレイテナーのメンバーに気付き、
ちゃっかり写真を撮ってもらっていたり。要するに、正真正銘のROCK LOVERS。
「今日は本当に楽しみです!」
そんな彼らを含む、この日を待ち望んでいた音楽愛好家たちが
ライブハウスにようやく収まりきった、現地時間の20:00。
ステージに現れたのは、地元台湾の3ピースバンドTizzy Bac。
ボーカル・キーボード(女性)にベースとドラム(ともに男性)、
FUJI ROCKやSUMMER SONICにも出演経験のある、
世界中の音楽マニアから熱い視線を浴びている3人だ。
叫びにも似た美しい歌声。
「彼女たちは主に、“生活”のことを歌っています」
Tizzy Bacの歌詞の意味を聞いた僕に、
現地の音楽プロモーターさんは日本語でこう答えた。
“生活”とはつまり、“人生”のことでもあるだろう。
この日、4曲目に演奏した曲のタイトルは、
『One by One oh We're Gonna Die』(1日1日、私たちは、死に向かっている)。
どれだけ耳を澄ましても、歌詞の内容は分からない。
でも、その音から感じ取れるのはこんなこと。
1秒ずつ終わりに向かっている儚さともろさ。
だからこそ、強烈に感じられる美しさと強さ。
たとえばそれは、女性が泣き顔の直後に見せる笑顔のような—
言葉がわからないのに、なんで伝わるんだろう—?
Tizzy Bacの表情にノックダウンさせられた会場は、
ただただ静まり返るばかり。
音楽は確かに、世界の共通言語だ。
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Taiwan -Tizzy Bac -