元ちとせさんが奄美のシマ唄を歌ったニューアルバムを語る!(2018/11/24 放送)
今週は、歌手の元ちとせ(はじめ ちとせ)さんをお迎えしました。
鹿児島県の奄美大島出身で、現在も奄美を拠点に活動している元さんは、今月11月14日に二ューアルバム『元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~』をリリース。シマ唄だけのアルバムはデビューしてから初めてだそうで、全部で300曲以上あると言われている奄美のシマ唄の中から「自分が最初に心を打たれて これ歌いたい!って思い始めた唄を7曲に絞った」そうです。
鹿児島県の奄美大島出身で、現在も奄美を拠点に活動している元さんは、今月11月14日に二ューアルバム『元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~』をリリース。シマ唄だけのアルバムはデビューしてから初めてだそうで、全部で300曲以上あると言われている奄美のシマ唄の中から「自分が最初に心を打たれて これ歌いたい!って思い始めた唄を7曲に絞った」そうです。
そして、元さんが“島唄”ではなく“シマ唄”とカタカナ表記にしているのには、こんな理由があるんだとか。
「間違ってはないんですけど、“島唄”という表記だとアイランドソングって思われるので。私はカタカナで“シマ”っていうふうに表記してるんですけど、本来、奄美の民謡のシマ唄は同じ唄でも集落によって微妙に違うんですよ。で、例えばみんなが集まる祭りとかでその人の唄を聴くと、自己紹介ばりに『あ、あのシマの人だな』とかってわかるようになってて。ある意味、縄張りっていう意味のシマなんですよ。」
また、元さんは奄美でシマ唄が生まれた理由についてこんなことをおっしゃっていました。
「やっぱり娯楽がなかったのと、あとは薩摩藩の圧政とかがあって、サトウキビ畑とかでずっと働いている人たちが、働きながら物語とか人の噂話を唄に乗せてやり取りをしていて…」「で、その場所の方言の訛りっていうのがメロディーに変わっていって。だから、あんたはどこどこのシマの訛りだね、って感じに聞こえるようになっていくんです。」「方言一つでも全然違ったり。奄美大島の北と南は全然違いますね。」
ちなみに、恵さんは鹿児島出身ですが、元さんによると奄美の方言は鹿児島とは全然違うそうです。
ニューアルバム『元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~』の1曲目に収録されている「朝花節」は、即興に近い形で歌われることが多いという唄です。
「奄美大島で一番ポピュラーというか一番最初に習うんですけど、宴の始まりに必ずこの唄って歌われるんですよ。じゃあ、そろそろ唄でも歌おうかってなったら、まずこれが流れてくる唄なんです。」
「当たり前に、そろそろ歌おうか!ってなるんですよ。三味線と太鼓は床の間に飾られてて、家主さんが必ず持ち出してきて、弾けなくてもジャンジャカジャンジャカやり始めると、弾ける人が、じゃあ貸してごらん、みたいになって…。」
「じゃあ僕が歌います!みたいな挨拶唄で。歌い継がれて来て残ったものがベースですけど、その人によってその日の夜にしか生まれない歌詞もあるってことです。」
今回、そんな「朝花節」で元さんと共演しているのは、同じく奄美大島出身の中孝介(あたり こうすけ)さん。元さんは、中さんとの繋がりについてこう話してくれました。
「私は高校を卒業する頃に民謡大賞をとっていて。彼はクラシックをずっとやっていたみたいです。ピアノとか。で、ある日、私がクラリネット奏者の方とコラボレーションするっていうコンサートがあって、彼はそれを見に来ていたんです。」
「そしたら、シマ唄ってなんだ?って。島にいながらも街で育ったので知らなかったんですって。で、こういう音楽があるんだって。凄くカッコいい音楽があるんだなって目覚めたらしく、私の音源を聞いてくれたりして。音楽の才能っていうか楽器の才能が凄いので、独学で覚えて歌い始めて。」
「で、私は彼の存在を知らなかったんです。そのまま卒業して島を出たので。そしたらある日、母が『夏休みになったら帰れないのか?』って。『飛行機代出すからそれでも帰って聞いてほしいシマ唄がある』と。『その中君が歌うから聞きに帰ってこい』ってわざわざ言われて。」
「それで(中さんの歌を)聞いたら私にまったくそっくりで、完コピして出てきたんですよ。母は、唄が歌い継がれる意味っていうのを教えたかったみたいです。私は自分が歌ってきたものが誰かに渡ったのを目の当たりにして、大事にしたいなって凄く思ったんですよね。」
やがてデビューが決まった中さんと元さんは交流するようになったそうで、2011年からは“お中元”というユニットでも活動しています。
全国的にはまだまだ“島唄=沖縄のもの”というイメージが強いかも知れませんが、奄美と沖縄の島唄にはいろいろな違いがあるそうです。
「沖縄は(三味線の弾き方が)ダウン(下向き)しかないんですよ。奄美はアップダウンするんです。だからちょっと速いんですよね。で、沖縄(の三味線)はピアノで言ったら黒鍵で全部弾けるようになる音階なんですよ。だから、あれをポンポンポンポン触ってたら、弾けなくても沖縄の音楽になるんです。沖縄に行った気になれるんですよ(笑)。あと、ファルセット(裏声)を使う民謡っていうのは奄美ぐらいですね。」
また、元さんは奄美についてこんなこともおっしゃっていました。
「沖縄をみなさんが凄く知ってるということに対して、奄美の人たちも嫉妬するとかではなく…。私もデビューした当時は奄美大島って誰も知らなかったので。聞くと、私の先輩とかは、奄美大島出身だって言うのが恥ずかしかったんですって。説明するにも何が凄いのか自分たちでもわかってなかったし、沖縄?って聞かれても、うーん…みたいに曖昧に答えてきた自分たちがいたって。」
「だから、私っていうのが出てきて、目印というか、『元ちとせ知ってる?』って聞いて『ああ、あの人』って返ってきたら『あの人と同じ出身地』って言えるようになったって。それが凄く嬉しかったですね。」
「今回、奄美が世界自然遺産登録みたいなこともありつつ…まぁ見送られたんですけど、見送られたことで一致団結して、島のアーティストがみんな集結したりとかする時間が増えて、どういうふうに奄美を伝えていくかっていう話もできて。すっごくいい時間ですね、今。」
↓こちらがニューアルバム『元唄(はじめうた)~元ちとせ 奄美シマ唄集~』
来週も引き続き、元ちとせさんをお迎えします!