東京・銀座にある「野の花司(ののはなつかさ)」は、都会にありながら古民家のような佇まいをみせるお花屋さん。店内には、日本各地から送られてくる山野草や花でアレンジされた花束、鉢、寄せ植えが並び、季節感に溢れています。
植物と素敵に関わる人を紹介する「ボタニスト」。今回は銀座にある、野草・茶花の専門店「野の花司」をご紹介します。
四季を生きる。日本の「野の花」の魅力
銀座「野の花司」は、日本各地の山中などに自生する野の花や山野草を取り揃えた、野草・茶花の専門店です。店頭や店内に並べられた花たちは繊細で奥ゆかしいものばかり。一目で鮮やかさが飛び込んでくる洋花のフラワーショップのような派手さはありませんが、青々とした野草の寄せ植えの中に白いお花が可憐に顔を出していたり、クネクネと曲がった枝のあちこちに、爪の先ほどの小花が咲いていたり、かわいらしい実がなっていたりと、まるで自然の中で佇んでいるようなたくさんの発見があります。温室ではなく自然の中で育つ野の花。日本各地から、その季節・その土地でしか採れないものばかりを取り揃えるため、品揃えは季節によって大きく変わります。野の花の一番の魅力は季節感を伝えてくれること。足を止めて夢中になって花を覗き込んでいると、都会にいることを忘れ、いつの間にか心が穏やかに癒されていくのが実感できます。
「日本の自然」を追求するアレンジメントや花束
「野の花司」は、もともと骨董や古民具が好きだったオーナーが、「骨董や古民具に合う花がなかなか手に入らないので、自分で集めよう」と始めた花屋さんです。店内は常に50〜60種類の自然の草花で溢れています。そのまま贈るにはかぼそかったり、曲がっていたりするものもありますが、アレンジメントや花束になることで、温室で栽培された花にはない、たくましい生命力に溢れた存在に変わってゆきます。ここに務めるスタッフの一人大澤央枝さんは以前は、結婚式や披露宴を彩るブライダルフラワーアレンジメントを手がけていましたが、そこでは色・形のバランスを美しく、華やかに魅せることに徹してきました。それに対して「野の花司」のアレンジメントの特徴は、「そこに山や野原があるように見え、ひとつひとつの花が生きていること」。一本一本と対話しながら、花の咲いていた場所、それぞれの表情、生命力を感じ取る。そんな丁寧な仕事によって、自然の野の花がより輝いて見えるのです。
銀座だからこそ広がる「野の花」の愉しみ方
「銀座という立地を生かして、多くの方に自然の花の魅力を伝えていきたい」と大澤さんはおっしゃいます。郊外で野の花の魅力を伝えようとしても、近くに生えていて見慣れているため、当たり前に感じてしまいますが、ビルに囲まれた大都会では、野の花に感銘を受けてもらえ、手にとって感動していただきやすいのだとか。さらに、様々な一流の店が並ぶのも銀座ならでは。和食をはじめとした色々なお店の方が、上品で癒しを与える存在として、店内に飾る野の花を買いに訪れるのだそうです。「店内のお花を『かわいいね』と言ってもらえると、まるで自分の子どもが褒められたかのように嬉しい気持ちになります。気軽に店内に入っていただいて、野の花の世界に触れてもらいたいですね」
野山や庭に咲く花で四季の移り変わりを実感していたという、幼い頃の記憶。銀座にいながらそんな体験を楽しむことができるのも「野の花司」の魅力。花屋としてだけでなく、季節の野の花を生けるアレンジメント教室、絵手紙・ステンシルなど植物を題材にした手芸教室にも力を入れていらっしゃいます。野の花を愛でながら食事を楽しめる「野の花茶房」なども併設。可憐な美しさの中に、自然の生命力と力強さを感じさせてくれる「野の花」に会いに、一度訪れてみてはいかがでしょう。
TOKYO FM
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野草・茶花専門店 「野の花司」
営業時間 10:00〜19:00/日曜・祭日11:00〜18:00
住所 東京都中央区銀座3-7-21
TEL 03-3535-6929/FAX 03-3535-6930
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