“洋梨”というより“ラ・フランス”。
そんな独自のブランドを築いた山形県の名産品
「ラ・フランス」。
生産量日本一の天童市には、収穫された
ラ・フランスを一手に引き受ける選果場
「ラ・フランスセンター」があります。
洋梨の選果場としては
日本最大規模というこの施設にあったのは、
圧倒的な数の果実と堂々たる産地としての自信でした。
「選果場」…馴染みのない地域で暮らす方にはイメージしづらいかもしれませんが、
収穫した農作物を生産者さんが搬入し、品質やサイズをもとに選別。その後、
箱詰めなどをして各地へ出荷する施設のこと。大きめのガレージのような所から、
機械化された大規模な建物まで様々なサイズがあります。
その中でも、JAてんどうの「ラ・フランスセンター」は驚きの特大サイズ。
この中を「毎日1万歩は歩いている」というセンター長の吉野翔太さんに施設を案内して頂きました。
敷地の総面積は20000㎡以上。
施設の中では、一階に集められたラ・フランスが、
まるでエスカレーターのように一個ずつベルトコンベアに乗って二階へと上り、
光センサーによるチェックなど選果の行程を経て、再び一階へ降りてくるシステム。
そこを大量のラ・フランスが何列にも連なって流れるように移動していきます。
また、ベストタイミングで出荷するための巨大冷蔵室も完備。
100坪クラスが3室、50坪クラスが6室あり、
私たちの遥か頭上まで果実の入ったケースが積み上げられている光景は
圧巻!全国生産の8割を占めるという山形のラ・フランス生産の一大拠点となっています。
また、「日本一安全・安心で高品質な
商品を消費者に届ける」ことを目標に、
日本初のトレーサビリティシステムを
確立したことでも知られるこのセンターでは、
コード化したラベルを果実一個ごとに
貼り付けて生産者や選果日などの情報を登録。
果実の内容や栽培履歴など消費者からの
問い合わせにも
対応可能な体制を整えています。
ラ・フランスと言えば、とろけるような果肉と
上品な香りから「果物の女王」とも称される
高級フルーツですが、私たちに届けられるまでの間も、
このようにプレミアム待遇の品質管理で
大切に扱われているのです。
「大好きなフルーツは、やっぱりラ・フランス」
という吉野さんに、その美味しさの秘密を
教えて頂きました。
収穫したばかりのラ・フランスは
1.6〜1.8%程度のでんぷんを含んでいますが、
まだ酸が多く糖分が少ない状態のため
食べるのには適していません。
しかし追熟が進むと、このでんぷんが分解されて
果糖・ショ糖・ブドウ糖などの糖分が増加して
コクがある甘味が増加。また果肉中のペクチンは、
追熟が進むにつれて水溶性の比重を増すために
トロリとした舌触りを生み出し、この内部変化の両輪が
ラ・フランス独特の美味しさを作り出すんだそうです。
食べ頃のサインは、果実上部の軸の周りにシワが出てきた時。
形状的に皮を剥きにくい…と感じるかも知れませんが、オススメの食べ方は、
縦に半分に切ってスプーンですくって食べるスタイル。
これだと皮を剥く手間もありません。
今年は夏の猛暑で去年よりも糖度が高いという山形のラ・フランス。
吉野さん曰く、「トゥルン!…と口の中でとろける食感を楽しんで欲しい」とのことです。
1800年代にフランスで発見されたラ・フランスですが、その栽培の大変さから、
本家・フランスでは1900年代に絶滅してしまいました。
現在ラ・フランスを栽培しているのは、実は世界中で日本だけなんだそうです。
その中心地がここ山形県天童市。
関係者の皆さんが地球上で
オンリーワンの美味しさを
作り出してくれているわけですから、
ラ・フランス…
日本人として食べない手はないですよね!