1623年、当時の琉球に清の国から製糖技術が伝わり、今年2024年は401年目。
さとうきびは、今や沖縄の耕地面積の約半分を占める県の名産品です。
このさとうきびから、沖縄本島では白糖が作られる一方、
伊平屋島、伊江島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島の
8つの島では、土産物としても有名な「沖縄黒糖」が作られます。
実はこの黒糖、島ごとに、味、香り、色、食感などが違うってご存知でしたか?
そんな自然の恵み・沖縄黒糖が誕生する場所を一目見たいと、
今回の「あぐり紀行」は、この8つの島の一つ「伊江島」に向かいました。
沖縄を代表する観光スポット・美ら海水族館に近い本部港からフェリーで30分。
伊江島のシンボルとも言える城山(ぐすくやま)の印象的な姿が、
出港するとすぐ視界に現れます。
フェリーの中で予習として味見したのが、8つの島の黒糖食べ比べセット。
あくまで個人的な感想ですが、粟国島の黒糖は一番優しい甘さ、
与那国島のはチョコレートのようなビターな味わい、そして伊江島はどことなく塩味も感じる甘さ!
人によって感想は異なるかも知れませんが、色も含めて確かに全然違う!!!
「こっちの黒糖はこんな感じ!」「いや私はむしろ…」と、取材メンバーは興味津々。
コーヒーやワインのように、テイスティングの楽しさが沖縄黒糖にはあるんです。
伊江島でさとうきび畑を案内して下さったのは、
伊江村さとうきび生産組合・組合長の内間優さんです。
伊江島は、船上からも見えた城山を除くと「平地が多く農業がしやすい島」と内間さん。
そんな島内に広がる畑で、さとうきびは背丈3mにも育つそうです。
南国の太陽と大地の恵み、そして内間さんたち生産者さんの手入れのおかげで、
グングンと大きくなるんですね。
お話を伺ったのは、9月から栽培をスタートさせる「夏植え」のさとうきび畑の前。
夏植えの場合、収穫は翌年の12月頃から。(他に「春植え」「株出し」もあります)
後ろに見えるさとうきびが正に収穫目前のものですが、
これらは去年9月に育て始めたもの…ということになります。
ところで、さとうきびの収穫をいつするかを決めるのは一体誰でしょう?
なんと、生産者さんではありません。
新鮮な原料が黒糖の美味しさの決め手となるため、
実は、製糖工場が収穫を依頼すると、
工場と生産者が連携をとりながら収穫を進める流れなんです。
その収穫期が始まるのが毎年12月。
他の農産物にはあまりない、さとうきび生産ならではの特徴かも知れません。
では、第2問!
さとうきびは、最初に何を植えて発芽させるでしょう?
内間さんに質問すると、すぐに近くのさとうきびを一本バサッと切って
説明して下さいました。
下の写真をご覧下さい。節の近くにプックリした膨らみがあるのが分かりますか。
ここから新しい芽が出るんです。
(つまり、これがさとうきびの「種子」というか、「苗」というか…)
このプックリがある茎を30cm程度に切って植えるのが、さとうきび栽培の始まり。
これも、他の農産物にはあまり見られないスタイルですね。
現在、伊江村さとうきび生産組合の生産者さんは137名。
最近は、沖縄県外から移住して生産に従事する若い方も現れているそうです。
そんな伊江島のさとうきび生産のリーダー・内間さんは、生産者歴40年。
沖縄の基幹産業であるさとうきびの生産に力を注ぐ一方、
収穫後の畑で島らっきょうやサツマイモを栽培する輪作に取り組むことが、
400年続いてきた歴史を将来に繋げていくために重要だと、
さとうきび生産の今後を見据えていらっしゃいました。
子供の頃は、暑い夏に家族で植え付けを手伝わされるのが嫌だったという内間さん。
そんな家族総出で取り組んできたさとうきびの仕事が、
いつしか「さとうきび=家族」という想いになっていったそうです。
この家族愛にも似た「さとうきび愛」が、伊江島のさとうきびの味なのかも知れません。
島ごとの個性豊かな味や香りが楽しめる、この沖縄黒糖。
沖縄旅行のお土産として皆さんもよくご存知だと思いますが、
今回の「あぐり紀行」に同行して下さったJAおきなわの栢野英理子さんによると、
ここ数年、沖縄黒糖を使ったスイーツや料理レシピが次々と開発されているそうです。
そして、JA全農ではニッポンエールプロジェクト協議会で沖縄県産黒糖を応援中だとか。
確かに検索してみると、企業の商品から日々の食事に使えるレシピまで、
沖縄黒糖を使った美味しそうな情報が色々出てきます。
私たち日本人の食をより豊かにしてくれる沖縄黒糖。
その産地・沖縄とともに注目していきたいですね。