文学史の授業でしかお目にかかったことのない徳田秋声でしたが、こんなに味わい深い作品を残した人だったとは!東京から別荘に帰る、その船の中の情景を綴っただけの話なのですが、人間の中にある矛盾、複雑さ、哀しみがひしひしと伝わってくる名短編です。最初はちょっと笑ってしまう存在だった老婆も、その必死さの奥でどんな人生を歩んできたのか想像すると全く違う人物に見えてくるから不思議。自然のまま、ありのままを描くという自然主義ですが、日常のどこにスポットライトを当てて読者に深読みさせるか・・・それが作家の腕の見せどころなのだなぁと感じ入りました。田山花袋の『蒲団』といい、この『夜航船』といい、好きだなぁ自然主義文学っ!!
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