横溝正史作品、久しぶりにじっくり堪能しましたが、2020年の今の世なら、どんなに都市から離れた山奥の事件であっても、ネットやテレビなどですぐに白日の下に晒されるわけで、こういう閉ざされた場所でのねっとりとした事件というのは、小説の中でももう起こらないのかもしれませんね。そういう意味でも“文学遺産”な作品です。戦国時代に端を発する連続殺人事件。最初はホラーなのかとも思いますが、最後には全て辻褄があいすっきりします。しかしよくよく考えると落ち武者たちが引き寄せた事件とも言えるわけで…やっぱり不気味な読後感。この、割り切れない不穏さこそが“The横溝正史”なんですよね。そうそう、小川さんお気に入りの双子のおばあちゃん。不気味なんだかお茶目なんだか、置物なんだか活発なんだか、こちらも言いようのない不可解な存在でした。
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