あと数日で自分が出場するオリンピックが始まる!という話のはずなのに、主人公の頭の中は一目惚れした秋ちんのことでいっぱい。肝心の競技や五輪のことはほとんど語られず、あーでもないこーでもないとひたすら脳内で恋心をこねくり回しています。ロスへ行く鞄の中に石川啄木の歌集をそっとしのばせる主人公は、本当はスポーツマンというより文学青年という方がふさわしかったのかもしれませんね。私は絶対に秋ちんに想いが伝わっていなかったと思うので、こんなに思いつめた手記を読む機会があったとしたら、秋ちん、きっと腰を抜かして驚いたことでしょう。田山花袋の『蒲団』をちょっと思い出しました。
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