心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれる夏のオリンピックも近づいています。それにちなんで今回選んだのは、田中英光の小説「オリンポスの果実」。早稲田大学在学中、ボート競技の選手だった彼は、昭和7年に開かれたロサンゼルス・オリンピックに出場。その体験をもとにこの小説を書きました。発表は昭和15年。主人公の手記という形で綴られています。その主人公はすでに28歳になっていて、結婚し子供もひとりいるという設定。そして10年前のオリンピックを振り返ります。その時、彼の心に浮かぶのは競技のことではなく一人の女性。ロサンゼルスに向かう船の中で出会った秋ちんに自分の想いを投げかけるように物語が進んでいきます。
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