一見、楽しいグルメ旅行記なのですが、ふとした一行に檀さんの人生の苦しみが見え隠れする作品です。例えば太宰治と新宿の夜店を歩くシーン。「なんとなく自分達の生きていることそのものに、うんざりしていたような時間であった」。この後太宰は夜店で蟹を買いその場で立喰いを始め、話は蟹のエピソードに移っていくのですが、後に自ら命を断つ太宰の心中を表現しているかのような一行です。暗い思いを抱え新宿を放浪する2人はまるで映画の1シーンのよう。「もしかしたら唐突に蟹を立喰いし始めたのは、劇的な場面をワザと作り出すための太宰の計算だったのでは?」「ははぁ〜、太宰ならやりかねませんね!」と、小川さんと2人盛り上がってしまいました。
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