「ムッパッ」。たった4文字で母・シズコさんが別人になる瞬間を鮮やかに描き出したシーンは、佐野洋子さんの表現力の凄さが味わえる部分です。厚化粧を施すことでいつもよりさらに遠い存在になってしまう母。それを見ている佐野さんの冷え切った心の内も伝わってきます。ところで絵本『100万回生きたねこ』を読んだ時、「大人でも理解するのが難しい・・・」と感じましたが、佐野さんの人生の苦しみ=母との関係を知った上で読むと、新たに見えてくるものがあるように思えます。「愛する」ということを知り、遂に生き返ることがなかったねこ。佐野さんもお母さんを愛することができるようになって、安心してこの世を去ることができたのではないでしょうか。
(アシスタント:藤丸由華/藤丸のブログはこちら!) |