題名からも判るように、「死」がテーマの物語。しかし冒頭から、同僚達は主人公の葬式に参列することを面倒くさがり、奥さんにいたっては「どうすれば、少しでも多くの遺族年金を受け取ることができるのか」で頭がいっぱい。これから展開されるストーリィが、キレイごと抜きで容赦がない気配が立ちこめています。死にゆくイリイチの心情は苦しく、目を背けたくなるようなつらいシーンの連続。特に死ぬ間際、カラダとココロがどんな状態に置かれるのかを描写した場面は生々しすぎて、小川さんと、「ここまで書けるなんて、トルストイは生前、死んだことがあったんじゃないか(へんな表現ですが)」と疑ってしまうほどでした。
(アシスタント:藤丸由華/藤丸のブログはこちら!) |