雑誌でこの『人間失格』の連載がスタートしたとほぼ同時に、自ら命を絶った太宰治。当時読者は主人公の“自分”に太宰を重ね、連載で毎回遺書を読んでいるような感覚だったのではないでしょうか。あの快活な『走れメロス』と同じ書き手とは信じがたい、悲劇的な内容です。ところで最近は装丁がスタイリッシュになって若い読者が増えているそうですが、「10代の読者には、人間は誰もが失格者なのだということを感じてほしい」と小川さん。ちなみに30代の私は、敏感すぎる生き方の苦労を知り、鈍感であることも時には大切、ということをこの作品から教えられたような気がします。
(アシスタント:藤丸由華) |