ナチスドイツの、不治の精神病者へ行う安楽死・・・。救いようも無く暗い題材を扱った作品ですが、さすが「マンボウ先生」。ちょろりちょろりと文章の中に、「ん?」と立ち止まるようなユーモアをちりばめているのです。例えば、主人公のケルセンブロックが「ウオノメ治し」の二階に下宿をしていたり(ウオノメ治しって何?!)、舞台となっている精神病院には「六人の総統(と自分を思い込んでいる患者)がいる」という記述などなど。読み手は、運命のつらさ、残酷さの中にどっぷり漬かってしまう作品ですが、こういった微量のユーモアが、かすかな救いとなってページをめくる力をくれているのかもしれません。
(アシスタント:藤丸由華)
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