先日取り上げた武田百合子の「富士日記」には、ビールばかり飲んで奥さんに怒られる“おちゃめなおじさん”として登場していた大岡昇平。彼が男として惚れ込んだ陸軍中将・岡田資の生き様を描いたこの「ながい旅」は、とても真面目な、深い内容なのですが、大岡昇平のコミカルな人柄も垣間見られるノンフィクションです。例えば、岡田中将の遺書の解釈で、大岡昇平が断言する『中将はモテた!』などという部分は、まさにその一端。このユーモアが、この作品の後味を清々しいものにしている一因なのではないでしょうか。(アシスタント:藤丸由華) |