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ことのいきさつ約束の月曜日約束のアーティスト発表楽曲制作プロジェクト発足

第6回 2月27日更新 back top next
『やま かた山×片』制作日誌
SCHOOL OF LOCK!

前日の夜は、ほとんど眠れなかったという。

片平 里菜“始まりに”。

今後、多くの人々の耳に届くことになるのは、 この日の“声”に他ならない。 都内、某スタジオ。

レコーディング本番。

山田先生、喜多先生。そして、サポートメンバーの方々。
少しずつ見慣れてきた仲間たち、見慣れた風景。

しかし。

「緊張…… してます。」

明らかに、これまでと雰囲気が違う。

SCHOOL OF LOCK!

この日が“本番”なのは、里菜ちゃんだけではない。
ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム。
曲を構成する全ての楽器の音の収録が、この日に行われる。

メンバーが集まる部屋から、ガラス一枚を隔てたその向こう。
まずは、リズム隊の音のレコーディングから。今はドラムの収録中。

コチラの部屋からは、かなり細かい指示が飛び交う。

「ちょっとリズムがズレたね。じゃあ、二小節目からもう一度…」
「うーん、さっきの方がよかったかな? もう一度やってみて。」
「よし、じゃあ一回聴いてみよう……」

スピーカー越しに聴こえてくる一音一音が、 山田先生の厳しい審査にさらされる。

“一音一音”という表現は、大げさではない。

プロのミュージシャンたちが、何度も何度も、 納得いくまで音を鳴らし続ける。

そして、録っては聴いて、違う鳴らし方を試してみる。
さらに、録っては聴いて……

気が遠くなるほど細かい作業を繰り返し、 この難関をくぐり抜けた“音”だけが、リスナーの耳に飛び込む資格を与えられる。

一見穏やかな、しかし、確実にヒリヒリとした空気の中、 レコーディングは続いていく。

「うーん…… もう一回。もう一回だけやってみよう。」

里菜ちゃんは、“緊張の糸”が張り巡らされたスタジオの中、 落ち着かない様子で、自分の出番を待つ。

SCHOOL OF LOCK!

「よし、じゃあ、ドラムはオッケー。続いては……」

続いては、山田先生の出番。

SCHOOL OF LOCK!


コチラも、先ほどのドラムと全く同じ作業。
音を鳴らしては、みんなで検証。以下繰り返し。

たまに笑い声が漏れ聞こえるが、緊張が途切れることはない。
作業は続く。納得のいく作品を生むために。

※ ※ ※ ※

数時間後。
いてもたってもいられなくなった里菜ちゃんが、スタジオの外に出て、 "声出し" を始めて少し経った頃ー

SCHOOL OF LOCK!


「よし、お待たせしました。」

ついに、里菜ちゃんの出番がやってきた。

「よしー。」

カチリとスイッチが切り替わったかのように、 表情が変わった。気がした。
※ ※ ※ ※

SCHOOL OF LOCK!

スピーカーから、里菜ちゃんの声が聴こえてきた瞬間に、 その場にいた全員の胸の中に、言葉にならない感情がよぎる。

一見、かわいらしい女の子が、心の奥底に秘めている“何か”。

繊細でありながら、街中の憂鬱や悲しみを、 丸ごとどこかにぶっ飛ばしていくような、とてつもなく荒々しいエネルギー。

"叫び”。あるいは“魂"。

とんでもなく男臭い言葉で表現してしまいたくなるような、 ブッチギリのパワー。

この声を聴いただけで、里菜ちゃんが、この日に賭けていた想いが伝わってくる。

今だから歌えること。今しか歌えないこと。
その感情が全て、とんでもない勢いで、スピーカーから放射される。

無言でみんながうなづいている。

もちろん、山田先生も。

「オッケイ!」

あっという間に、OKのサイン。しかし。

「いや、今のところ… もう一回歌っていいですか?」

下を向いて緊張していた少女はもう、ここにはいない。

山田先生が嬉しそうにはにかむ。

「うん、いいよ。気が済むまで歌って!」
「…はい!」

※ ※ ※ ※

怒濤(どとう)の一日が、終わった。
あとは、今日レコーディングしたこの音源を整えていく作業(マスタリング)を残すのみ。

里菜ちゃんは、まさしく“全て”を出し切った後のような放心状態。

「たった一ヶ月くらい前にこの話をいただいて、心が落ち着かないまま全てが終わって… 本当に あっという間でしたね。すごい時間でした。まだ、全然整理できていないですけど……」

ーいい作品に、なりそう?

「自分では… 正直、かなり満足しています。山田先生のおかげで、自分が元々思い描いていた情景が、当初のイメージ以上に浮き出てくる曲になったと思います。早く皆さんに聴いてもらいたい ですね。早く……」




ここで重大発表。

片平里菜“始まりに”。

3月5日月曜日。
SCHOOL OF LOCK!で宇宙初オンエア。


つづく

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