以前に一度「追跡」で取り上げた、
欧米では一般的なドーナツ状の交差点「ラウンドアバウト」。

日本でも試験導入されていましたが、
去年9月施行の道路交通法改正で「環状交差点」と定義され本格的な運用がスタート。
全国の警察に指定されることとなりました。
2015年5月現在で、その数は「45」。少しずつ増えています。

そこで、今週はラウンドアバウトの現状と安全性を追跡。
コメントは長年「ラウンドアバウト」の研究と普及に取り組む
名古屋大学大学院 交通工学が専門の中村英樹 教授でした。

あらためて「ラウンドアバウト」は、中央に円形の区域があり、
その周りをドーナツ状に道路が通る、信号のない交差点。
ドーナツ状の道路には、複数の道路が垂直に交差。
この接続した道路から左折してドーナツ状の道路に入り、
時計まわりに徐行、目的とする交差道路から抜け出る方式です。
優先されるのは円の道路に入るクルマではなく円の道路を走っているクルマ。

丸い交差点という意味で言うとロータリーが広場から始まって100年以上前からありました。
それを1996年にイギリスで、その丸い交差点の中の交通を優先にすると、
安全で処理能力も高くなるという事が分かり、近代的なラウンドアバウトが始まりました。


「ラウンドアバウト」の最大の利点は「安全性」。

通常の交差点では速度がそれなりにあるので、
出会いがしらの事故や対抗右折車と直進車が大事故になり、
運転者や同乗者にダメージが生ずることが非常に多いものです。
でもランドアバウトの場合は、合流で進入し、進行方向が同じ方向なので、
速度も落ちていて仮に車がラウンドアバウトの中で接触したとしても、
大事故にはならないというのが大きなメリットになります。


例えば2年前の3月からスタートした
長野県 飯田市の東和町ラウンドアバウトでは、
これまでのところ人身事故は起こっていません。
「ラウンドアバウト」以前、信号交差点時代を同じ期間遡ると、
2件の人身事故があったといいます。
同じように、物損事故はあるものの、
今のところ「ラウンドアバウト」に指定された他の交差点でも、
人身事故は起こっていないそうです。

ただ、まだ慣れない交通システム。
「ラウンドアバウト」には、横断歩道もあるので、
ドライバーも、歩行者も、十分な注意が必要です。

ラウンドアバウトには横断歩道が付いている所もありますから、
交差点の出入り口には信号のない横断歩道が付いています。
そういう意味では、信号が無い分、ドライバーの方でも気を付けなければいけませんが、
通常の交差点よりも車両の速度がかなり落ちています。

また、交差点の構造も横断歩行者の方が安全に渡れるような横断歩道の構造、
横断歩道の真ん中に島を作って2段階で横断するというようにすれば、
1回の横断距離が短くなって安全確認も最初は右だけを見る。
真中から先は左だけを見るということで、歩行者は渡りやすく、
安全性を高めると言われています。


「ラウンドアバウト」の他の要素を見るとメリットとディメリットがあります。


<メリット>   
信号待ちが無くなり、円滑な交通を生む可能性があります
1日の交通量が15,000台程度の交差点であればメリットあり


<ディメリット> 
交通量の多い交差点では威力を発揮できず渋滞を生む
都市部よりは郊外や地方向き


<メリット>   
信号機の初期投資 維持管理コストがいらない


<ディメリット> 
導入に適した交差点にはふつう信号機があり
改良するには相応のコストがかかる 


他にも「広い敷地が必要」「道路を管理する地方自治体の情報と知識」
「利用する市民への周知と教育」など課題はいろいろ。
それでもいま「ラウンドアバウト」への関心は高まっています。



島根県 西部の益田市に驚きの自動車教習所があります。
Mランド、益田ドライビングスクール。

人口5万人を切った過疎が進む地域に
毎年6千人の教習生が、合宿で免許を取りに、全国から集まります。

卒業生の数も、全国1,300の自動車教習所の中で、
平成23年は3位、24年と25年は5位・・・毎年ベスト10入り!

今年92歳になる代表取締役の小河二郎会長が、
地元、益田の若者のために自動車教習所を設立したのは昭和39年。
その後10年ほどは業績が伸びたものの、
景気の低迷や人口の現象で経営は厳しくなります。
そこで、都市部から人を呼び込もうと、合宿形式に方向転換。
経営方針も変え、さまざまな取り組みを始めました。

まず唯一のルールは「挨拶」。
教習生をゲスト、教官をインストラクターと呼び、
教官は指導する立場、教習生は指導される立場という主従関係を解体。
その上でゲストとインストラクターも、ゲスト同士にも、挨拶することを求めます。

このルールを導入したのは会長の経験から。
ある時、外国人はエレベータであっても気軽に挨拶をするのに日本人は黙っている。
情けないと感じて、この状況を変えたいと思ったのがきっかけだったそうです。

そして、奨励しているのがトイレをはじめとする清掃。
清掃によってゲストの人間性も磨かれ、
観察眼も身につき、交通安全に役立つというのです。

用意しているのは「挨拶」「清掃」の義務的なことだけではありません。
教習所内ではMマネーと言われる通貨が流通。
Mマネーは窓口でお金と替えるか、清掃あるいは
ゲストが教習所内でお世話になった人に感謝の気持ちを記し、
指定のポストに投函するサンキューレターによってゲットできます。

それは茶室、テニス、ゴルフ、岩盤浴、バトミントン、
カラオケ、ネイルサロンといったアミューズメント施設で使うことができます。

人間的な成長を促す中に「交通安全」の要素も盛り込み、
挨拶や掃除を通して友人もできて、
用意されたアミューズメントで思い出づくりもできる、
それがMランドの人気の秘訣なのでしょう。
      
毎年夏には益田市民にも開放する、手作りMDSまつりも開催。
およそ3万人が集まり、去年は100人以上の、
OB、OGも足を運んだそうです。


今年は統一地方選挙の影響で、
例年は4月にある「春の交通安全運動」の期間が5月になりました。
5月11日(月)から20日(水)の10日間で今がまさにその時期。

今朝は警察庁 交通局 交通企画課 課長補佐
西村和市さんをお迎えして2015年「春の交通安全運動」について追跡しました。





「春の全国安全運動」で重点に置かれていることは、
「子供と高齢者の交通事故防止」を基本として3つあります。

○ 自転車の安全利用の推進(特に、自転車安全利用五則の周知徹底) 

○ 全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底

○ 飲酒運転の根絶

全国的な交通事故実態等を踏まえて、
この重点項目は平成19年から続いています。

なぜ自転車が重点として定められているのか。
自転車は、幼児から高齢者まで誰もが利用できる身近な交通手段で、
最近は通勤手段としても利用されるようになっているから。
しかし、昨年は自転車が関係する交通事故が約11万件で交通事故全体の約2割。
しかも、これらの事故では、自転車運転者の5分の3以上が、
信号無視や一時不停止など、何らかの法令違反をしているのです。
これらのことから、自転車を安全に使うよう、注意を促すためです。
自転車には「自転車安全利用五則」という5つのルールがあります。


1)自転車は、車道が原則、歩道は例外

  自転車は道路交通法上、車両として位置づけられています。
  車道と歩道が区分されている場所では車道を通行します。
  歩道を通行できるのは道路標識で自転車が通行できることが示されている場所や、
  運転者が幼児・児童、70歳以上の高齢者、身体が不自由な方である場合、
  自動車の交通量が多くて危険である場合などに限られています。


2)車道は左側を通行

  自転車は車道通行が原則。
  道路の左端に沿って走行しなければいけません。
  路側帯についても自転車が走行できるのは道路の左側にある路側帯に限られています。
  右側通行は自動車や他の自転車と正面衝突するおそれもあり危険です。


3)歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行

  自転車は標識のある場所などでは歩道を走行することができますが、
  その場合でも有線は必ず歩行者。
  歩道ではすぐに止まれないような速度で走り、歩行者の通行を妨げてはいけません。


4)安全ルールを守る

  自転車に乗るときに守るべき交通ルールはたくさんあります。
  例えば飲酒しての運転や2台以上が並んで走ることは禁止。
  6歳未満の子供を幼児用座席に乗せる場合などを除いて2人乗りは禁止。
  夜間はライトを点灯、交差点では一時停止をして安全を確認、などのルールもあります。
  事故を起こさないため、また、自分の身を守るため、交通ルールをしっかり守ることが重要。


5)子供はヘルメットを着用

  保護者には子供に乗車用ヘルメットをかぶらせるように努める義務があります。
  自転車で事故に遭った場合に、少しでも被害を軽くするため、
  13歳未満の子供にはヘルメットをかぶらせるようにして下さい。


平成25年に道路交通法が改正され来月から自転車の講習制度が施行。
信号無視や一時不停止などの危険な違反行為をくり返した自転車運転者は、
講習を受けることが義務付けられます。

「春の全国交通安全運動」をきっかけに、
いま以上に交通安全を心がけるようにしましょう。
特におそらくあなたが思っているよりも危険な自転車の運転に気を付けて下さい。


今週のテーマは身近な人は頻繁に見かけるでしょう。
縁のない人はその存在を知らなかった人も?
ドライバーに子供の道路への飛び出し注意を喚起する看板「飛び出し坊や」を追跡しました。

「飛び出し君」「飛び出し小僧」などとも呼ばれる「飛び出し坊や」。
発祥は昭和40年代、滋賀県、今の東近江市でのことです。
自動車が急激に増えて、全国交通事故が多発する中、
社会福祉協議会から子供を事故から守る啓発看板を作ってほしいとの依頼を受けて
看板製作業 久田工芸の社長 久田泰平さんがつくったことから始まりでした。

子供の飛び出しそうな所に置く看板であれば
文字でなく見てすぐ分かるようなモノを・・・と考えた末、
久田さんがつくったのは子供の絵を描いた木の看板。
それを小学校PTAが通学路に置いたことから
男の子の看板が他の街にも広がっていったのです。

下の写真は久田泰平さんと奥様と息子さん。
写っているのは0系と呼ばれる、オリジナルの系譜を継ぐ、久田さんの作品。
久田さん自身は、この看板に「とび太くん」と名付けています。





「とび太くん」から派生した様々なタイプが各地に広がる中、
それらをまとめて「飛び出し坊や」として紹介し、全国区にしたのが、
「マイブーム」から多くの「ブーム」を生む 、みうらじゅん さん。
みうらさんが、初代新幹線になぞらえ、
久田さんの「とび太くん」を「0系」と表現したのです。

各地の「飛び出し坊や」をウォッチするファンも出てきました。
情報交換コミュニティ「飛び出し坊や研究所」を運営する今井貴裕さんによると
関西より西には飛び出し坊やで交通安全を喚起するというアイデアをもらい、
地域ごとにさまざまなタイプがあって楽しいとのこと。
今井さんが撮影した「飛び出し坊や」の写真を何枚か掲載しましょう。

まずは関西〜中部に広がる市販のもの。
裏と表が男の子と女の子。






滋賀県野洲町(現 野洲市)のおばあちゃん「飛び出し坊や」。
高齢者の交通安全を喚起したもの。




奈良県の聖徳太子。




京都のパンダ。なぜパンダ。
しかもちょっとぶちゃいく。




と、まあ地域ごとに個性のある「飛び出し坊や」があるわけです。
そして、去年8月にはタカラトミーアーツが、
0系をモデルにした「飛び出し坊や」ガチャコレクションを発売したところヒット。
今年7月には第2弾が発売になる予定です。

「ドライバーの方が、この人形を見て、近くには路地があり、
子供が飛び出すかもしれないので気を付けてくださいという思いで、
子供を交通事故から守れたらと作っています」と久田さんが語る「飛び出し坊や」。

ガチャもきっかけになって「飛び出し坊や」と
そこに込められた“思い”が全国に広がるといいですね。
あなたの暮らす街には「飛び出し坊や」ありますか?