今週も「森林ジャーナリスト」田中敦夫さんのお話をお届けします。
先週は、昨年の台風による千葉県の大規模停電は、言い方を変えると「大規模倒木」であり、林業の衰退が一つの要因だったのでは…というお話でした。
実はこれ、日本の林業が抱える問題の一部にすぎないんです。
長年、林業を取材してきた田中さん、あまり知られていない、林業の実態を明かしてくれます。


森林ジャーナリストとして森林を取材をするという事は、林業を取材するということにつながっていくんですよね。ほぼ30年ぐらい続けているわけですが、残念なことばかりが目に付くんですね。まず、林業は今、成長産業だと言っていますが、ちゃんと儲かっているのかを調べてみました。そうしたら、例えば木材の売上高は2000億ちょっとあるんですが、そこに補助金が2000~3000億位突っ込んでるんですね。赤字なんですよ。それじゃあ林業がちゃんと立ち直ったと言えないじゃないかという話になりますよね。税金をつぎ込んでいるだけで赤字を垂れ流している状態ですね。木を植える、苗を植える、草を狩る、干ばつをする、何をするにも全て補助金でやっています。「補助金が出るからやろうか。」ということなんです。本当だったら育った木を売って、その利益で林業経営をしなきゃいけないのに、ひたすら補助金が出ることでやっている状態です。
それには、木材の値段が下がったというのも第一にはあります。それに木材の使い道も変わりましたね。いま日本の人口がどんどん減っているわけですから、住宅建築はどんどん減っています。そういう需要がなくなってきているんですね。使い道がないからってバイオマス発電所で燃やすとか、そういう使い道になっちゃうと、値段も安いし、60年育てた木を一瞬で燃やしてしまうのか、ということになりますよね。そうしたら山主さんも林業をやる気がなくなっちゃう。
その補助金のことも含めて、とりあえず林業をやりたい若者が増えているというのは事実なんですけど、残念ながら年以内に半分以上が辞めています。もちろん給料が安いとか、そういう問題もあるんです。月給のところは少なく、日給制がほとんどです。働いた日、働いた分しかもらえない。そういう意味ではあんまり儲からない。非常に体力を使う仕事なんですけど、報われないということになりますね。さらに事故が多いんですよ。全国で45,000人ぐらいしか林業従事者はいないんですが、それで毎年2桁、多い時は30人ぐらい作業中の事故で亡くなっています。事故率という計算方法があって、1000人のうちの何人が事故を起こすかなんですが、全産業の事故率と、林業を比べたら、林業の事故率は十数倍です。むちゃくちゃ高いです。命がけの仕事になっちゃってますよね。しかもそれに報われるだけの給料がもらえないとなったらみんな辞めて行きますよね。


~林業は危険な仕事なんですか?
もちろんそもそも危ないんです。地形は千差万別で、斜面で木を切る作業では、非常に足場が悪いという事はありますし、そういうように条件も悪いんですけど、本当はそれを完全にこなすためには安全教育が欠かせないんです。残念ながら皆さんがちゃんとそこまで教育を受けているのかは怪しいという事ですね。チェーンソーという刃物は扱うのに、ちゃんと安全教育を受けなかったら、何かの拍子で自分で足を切っちゃうという事故も起きてしまいますよね。

~林業が正常になるにはどうすればいいのでしょうか?
本当に難しいんです。一種の政策の問題になっちゃう。ちゃんと自立するためには教育もしっかりして、安全教育も必要ですし、木を育てる教育もきっちり教えて、ちゃんと守るということも必要です。さらに、現在は、政策的には木をどんどん切っているけど使い道が決まっていなかったりするんですね。だから市場でだぶついて値段が下がっちゃう。そうじゃなくて、ちゃんと使い道をわかった上で生産していかないと値段は上がらないですよね。この木は住宅のどこの部分に使うんだから、高さ3メートル、あるいは6メートル欲しいということをちゃんと計算してやっていけば値段も高くなるのに、とりあえず出して木材市場で売っていたら値段はどんどん下がっちゃってます。そういう仕組み作りが必要になっていくんだと思いますね。ちゃんと高く買ってくれる使い道を作っていかなくちゃいけない。ただ、いま住宅需要がどんどん減っているからこれまでの需要はどんどん縮んでいるんですね。だから新しい需要を作らなければいけない。残念ながら今の日本の林業界は新しい、しかも高く売れる需要が生まれていないですね。結果的にはバイオマス発電みたいに、安くても燃やすだけみたいな重要になっちゃっている。もったいないですよね。住宅も外材の方が多いわけですし、しかも木造住宅と言いながら、部屋に入ってもどこにも木が見えない。みんなクロス貼っちゃっていて見えないですよね。だったら何を使っても構わないでじゃないですか。傷だらけの木を使っても良いし、あるいは鉄骨を使っても上にクロスを貼ったらわからないじゃない。そう考えたらなぜ木造なのということになってしまいますよね。

~また、所有者不明の山がニュースになったりもしていますね。
日本中の所有者不明の土地が、九州よりも広いという状態なんです。そのほとんどが山林なんですね。結局、所有者が儲かる時代はちゃんと相続をしてやるんですが、儲からないからほったらかしになっている。所有者が亡くなって、相続者が誰だかわからなくなっちゃう。そしたら手をつけられないですよね。もう一つ厄介なのが、大体この山は私のものだというのがわかっていて、相続者も大体わかっていたとしても、境界線がわからないんです。ここからここは自分でここからここは他人の土地という境界線がどこにあるかわからなくなっちゃっています。木を植えたときは、大体覚えているんですが育ってしまうと景色が変わっちゃいますからね。だからわからない。本当はしょっちゅう通って変化を見ておかなくちゃいけないんだけど、今は不在地主になってしまっているので相続者が街に出て山に1度も行っていないとか、そういう人ばっかりになっています。そうすると境界線を見ようにもわからないんです。他人の山の木を切ったら犯罪行為になりますからね。だから切れないなとなっちゃいます。そもそも林業は儲からないと言われていますから、そこまで無理して切る必要はないんじゃないとなりますよね。所有者不明の山は本当に大問題で、何とかそれを整理しようと思っているんですが、残念ながら政府もお手上げ状態ということになりますね。

「森林ジャーナリスト」田中敦夫さんにお話をうかがいました。
田中さんは、日本の林業に関する新刊を出されています。

『絶望の林業』新泉社

今日のお話はもちろん、もっと「うそでしょ?」ということも書いてあります。そんな『絶望の林業』を3冊プレゼント用に頂きました!
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【今週の番組内でのオンエア曲】
・花が咲く道 / THE CHARM PARK
・若葉 / スピッツ
     ポッドキャストを聴く  
今週も先週に引き続き、「森林ジャーナリスト」の田中敦夫さんをお迎えして、ここ最近の「森」をめぐるニュース、出来事をお話しいただきます。今週は、昨年 千葉県をはじめ各地を襲った台風被害についてです。


~房総半島での大停電は倒木が原因だったということなんですが、それは倒木の処理がうまくいかないっていうことなんですか?
そうですね。もちろん倒木の数が多かったというのが第一にあるんですが、一般の方は倒木ってすぐに片付ければいいじゃないかと思うんですけれども、じつはそんなに簡単ではないんですね。特に今回の場合は、完全に地面に倒れるのではなく、隣の木に引っかかる、あるいは電線に引っかかるという倒れ方ですよね。かかり木っていうんですけれども、こういう木の処理の仕方って非常に難しいんですね。下手に切ったらどう動くかわかないんです。パーンと遠くにはねてしまうこともありますし、枝が飛んできてしまうこともありますし、非常に危険なんですね。実は林業界でも毎年何十人か死んでいるんですけれども、その事故の殆どはそういう伐採時に倒木の処理を失敗したりとか、かかり木の処理を失敗したケースが多いですよね。私も自衛隊の処理をテレビで見ていたんですが、もう危なっかしくてしょうがなかったというのはあります。やっぱりさすがの自衛隊もそんな細かな伐採技術は持ってないわけですよね。立っている木を切るほうがよほど安全で、倒れかけている木を切るというのはものすごく危険なんです。だから丁寧に丁寧にやっていかないといけないので、それが今回の処理が長引いた一つの理由だと思います。

~台風の時期に倒木があったときは、技術者の数が大事になってきますね。
数もそうですし、技術を身に着けていただかないといけない。プロである林業家でも事故を起こしわけですから、いかに安全にできるかっていうのは、これから考えていかなくちゃいけないことでしょうね。

~水害に関しては「緑のダム」というのが有効だという意見もあると聞きましたが、緑のダムというのはどういうものですか?
この言葉はよく使われるのですが、基本的には緑というのは森林、山林のことですね。山に木が生えていると、土に水を貯める保水力があるといいますね。じゃあ本当に水が溜まっているのかというと、森林というのは生き物ですよね。生き物っていうのは生きていくために水を吸いますよね。だから、水を貯めるんじゃなくて、水を吸って使ってしまうわけですから、水を減らしてしまいますよね。だから、緑のダムに水を貯めるのではなく、水を減らしていくというのが本来の見方じゃないかと思います。しかも雨が降ったら全部地面に染み込むわけではなく、枝とか葉、幹に水が付きますよね。仮に雨が降った翌日に晴れたら、枝についた水滴は地面に落ちる前に蒸発してしまいます。だから、実は水というのは、地面に到達する前になくなってしまうケースも結構多いんですね。研究結果によっては6%といったり、20%とかいろいろあるんですけれども、でも1割前後の降水は枝葉についていて、地面に落ちていないんです。地面に落ちても、植物である樹木が吸収して蒸発させてしまう分もある。それだけ水を減らすわけですから、洪水を防ぐ効果は若干はあることになりますよね。でもあまり過大な期待をしないほうがいいというのがあります。みんな緑のダムがあれば洪水を防げるんだと思い込んでしまうこともあるんですけれども、それほどの効果があるのかというとちょっとあやしい。よくたとえで言うのですが、雨が降ったら傘をさしますよね。傘をさせば普通ならばそれで濡れないけれども、台風のような豪雨になってしまったら、傘をさしても傘は飛ぶし濡れちゃいますよね。だから、緑のダムというのは傘程度の役に立つのではないかということなんです。普通の雨だったら濡れずに済ませます。でも大災害を起こすような豪雨になったときは、もう緑のダムも効果がなくなってしまうので、そういうときにまで緑のダムがあるから安全だとは言い切れない。危険なときは危険なので、避難もしなければいけないですし、場合によってはコンクリートのダムも必要かもしれないですよね。

~話は変わりますが、田中さんは昨年岩手県の釜石のラグビー場、釜石鵜住居復興スタジアムを取材されているということなんですが、実は知る人ぞ知る木材が使われているんですよね。
もともとこのスタジアムをつくるときに、できる限り地元の木を使おうということになっていたんですね。だから、かなり木の多いスタジアムになるのは最初からの計画なんですが、実は3~4年前ですかね、山火事が起きたんですね。そこで400ha以上の山が焼けてしまっています。だから、本当はそこの山の杉の木をスタジアムに使おうと思っていたのが、焼けちゃったんですね。しかも、その山主からしても、自分たちの財産である山の木が燃えてしまったから林業をやめるというような、そういう事態に追い込まれてしまった時がありました。でも、オーストラリアのケースでも言いましたけれども、山火事が起こったらたしかに山は真っ黒になってしまう。でもよく見るとすべて燃えたわけじゃないですね。表面だけが燃えているわけですね。幹の部分はちゃんと残っていて、製材して、四角に切ったら、中は十分優秀な木材がちゃんと残っていて、焼けていないというのがほとんどだったんですね。

~じゃあ山火事があった山の木を使ってたんですか?
そうなんですね。森林組合の方々が苦労して、これは十分使えるということで、山火事の災害から立ち直るためにもここの木を使いましょうということになって、一般の木材よりも高く買い取ったんですね。1割位高く買ったと聞いてますけれども、お金を山主に還元することによって、その山主さんは、じゃあもう一度次の山をつくるために植林しましょうという気持ちになりますよね。全部お金にならなかったら、50~60年育てたものが全部焼けて1銭にもならなかったら、もう林業をやる気がなくなっちゃいますよね。でもちゃんとお金になったんだということであれば、もう一度植えようという気持ちになるじゃないですか。

~しかもそれが鵜住居復興スタジアムのように、地域の人の誇りになるようなスタジアムになるんですもんね。
そうですね。だからあれは本当に復興のシンボルのようなところがありますからね。

森林ジャーナリスト田中敦夫さんのお話、いかがだったでしょうか。
田中さんは、日本の林業に関する新刊を出されています。

『絶望の林業』新泉社

今日のお話もそうでしたが、さらに日本の林業の問題がはっきりわかる内容です。ぜひチェックしてみてください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・強く儚い者たち / COCCO
・Family Song / 星野源
     ポッドキャストを聴く  
さて今週は、昨年から今年にかけて、海外、日本それぞれで発生した、「森」をめぐる大きな出来事について、考えていきます。
オーストラリアの森林火災、そして房総半島を襲った台風被害です。
スタジオにお越しいただくのは、森林ジャーナリストの田中淳夫さん。日本で唯一、この肩書を名乗り、森と人の関係をテーマに取材を続けている方です。ジャーナリストの視点でこの2つの出来事をどうご覧になったのか、伺っていきます!


~オーストラリアの大規模森林火災について、田中さんはどう見られましたか?
 確かに本当に大規模で大変な災害だと思うんですね。どうしてこれほど大きくなったのかと言えば、よく言われる地球温暖化、気象変化があった、乾燥していたからとかいろいろ言われていますね。それ自体はおそらくそうなんだろうと思うんですが、去年だけではなくて、実は毎年山火事が起こっているんですね。特に去年はアマゾンがなりましたし、他にもシベリアだとかインドネシアとかあちこちで火事が起こっているんですね。去年だけ急に世界中が燃えたというわけではなくて、実はずっと何らかの形で燃えていて、それはあまりニュースにならなかったのが、去年は規模が大きかったからみんなが急に注目したというのがまず第一にあるんじゃないかなと思いますね。

~自然界の森林としては、山火事とか火事も必要なサイクルの1つなのですか?
 もちろん確かに燃えたのは事実で、かなり面積も大きかったんですが、火事というと本当にすべての木が燃え尽くして炭になったと言う印象で見ちゃうんですが、実は炎にあおられても表面だけが燃えていることが多いんですね。要するに外は燃えても芯は生きていたり、土の中はほとんど温度は上がっていないんですね。だから種が落ちていたらその種子は燃えずに残っているもんで、火事があっても新しい芽生えも生まれるということが起きています。研究分野でも、ファイヤーエコロジーという分野がありまして、「火事の生態学」ということなんですが、燃えることによって種が発芽するような種類もあるんですよね。殻が硬くて、そのままだと種子が割れないんですよ。自分では割れないという不思議な種子があるんですね。燃えてくれた方が破れて芽生えができるという。だから初めから火事が定期的に起こることを前提とした植物もあるんですね。もちろん災害は災害なんですが、あまり深刻にせずに、これも長い歴史の一部だと思って、再生するのを待つのがいちばん良いんじゃないかなと思いますね。

~では、植林などせずに焼け跡はそのままにしておいた方が良いということですか?
 私はそう思いますね。特に天然林で自然の森だったら、また自然の森にかえって欲しいですよね。という事は人は手を出さないで、時間をかけて戻ってくるのを待つというのが正解なんじゃないかと思いますね。そこに植樹をしたら天然林が人工林になっちゃいますからね。

~ニュースでよく流れていたのに、ユーカリは燃えやすいというのがあったじゃないですか。燃えやすい木がなぜあんなオーストラリアの暑いところにあるのかなと思ったんですが…
 確かにユーカリは油を含んでいます。ユーカリ油という油が取れるくらいですから燃えやすいのは事実ですが、何も火事を起こすために生えているわけでは無いわけで、植物の生理的に油を持つ方が良いし、生態系も一定時期ごとにユーカリは燃えるという前提で生きてるような自然だったりしますよね。

~そういう風に火災を見るとちょっと冷静に見ることもできるなという感じがしますね。昨年は海外だけではなく日本でも、自然災害がすごくて、千葉県房総半島などは相次ぐ台風に見舞われてしまって、特に台風15号による千葉県全域の大停電については、倒木のことなどがニュースでも流れていました。
 台風の後すぐに千葉に行くことがありましたので、災害現場をみては回ったんですけど、やはりバタバタ木が倒れているんですよね。倒木があったから電線が切れたり電柱が倒れたりして停電になったわけですから、まずなぜ木が倒れたのかを考えていくべきかなと思いますね。風が強ければどこの木でも倒れるのは間違いないんですが、私も見たんですが、例えば街路樹が根っこから倒れているんですね。これは他の地域でもよく見ますし、確かに風が強かったら倒れるんです。千葉の特徴は、途中の部分から折れているんです。幹の高さが4~5メートルの所からぽきっと折れている。それが非常に目立ちましたね。中が腐っているんですよね。主にそれは杉なんですが、病気になった杉だったために、中が腐って、それでぽきっと折れてしまったケースをよく見ましたね。千葉県は山武杉という杉が有名です。非常に優秀で材質が良く、人気の杉だったので千葉県じゅうに植えたということがあるんですが、植えてからわかったんですが実は非常に病気に弱かった。特にみぞくされ病という病気に非常に弱かったんです。それが蔓延してしまったということがありますね。それも本来手入れをちゃんとしていれば救える杉も放置してしまっていた。密生して真っ暗になってしまって、光があまり当たらないとひ弱になりますよね。そうすると病気はすぐ蔓延するんですね。小さな傷から内部に入って病原菌が広がると、杉の中心部が腐っていくんですが、だから近かったら近いほどよくうつりますよね。もともと山武林業といいますが、江戸時代から続いていまして、その時はそんな病気はあまり発生していないんですよね。やっぱりそれは昔から地元の方がその地域の特質を知っていて、もともと房総半島は花崗岩で非常に痩せた土地なんです。だからいきなり杉を植えても育たない。だからまず松を植える。そしてその松の落ち葉が集まって溜まってきて、肥えてきたら杉を植える。杉と松を混植する。そうやってサイクルを作って育ってきたんですね。でも戦後は一気に全部杉を植えるというやり方をしてしまったために、昔の伝統的な林業技術を無視してしまったから余計に弱くなったという面があると思います。
 森林というと普通に、景観が良いとか、木材が生産できるとかいいますが、もう一つ防災の機能があることをやっぱり忘れてはいけない。そのためにもやっぱりちゃんと世話をして、健全に育てなきゃいけないんじゃないかなと思いますね。


森林ジャーナリストの田中敦夫さんのお話、いかがだったでしょうか。
田中さんは、日本の林業に関する新刊『絶望の林業』(新泉社)を出されています。こちらもぜひチェックしてみてください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・言葉はさんかく こころは四角 / くるり
・Head Over Feet / Alanis Morissette
     ポッドキャストを聴く  
  • 2020.03.08

チバニアン2


前回に引き続き「チバニアン」のレポートです。
地球の歴史における77万年前から12万年前にかけての時代を「チバニアン」と命名する根拠となった、千葉県市原市「養老川流域・田淵の地磁気逆転地層」。
こちらで実施されているガイドツアーに参加してきました!

ガイド・清水収さんの案内で、ビジターセンターから養老川へ向かう、結構な急こう配の谷を下って下って、下って下って。
途中、清水さんの熱心な説明で、地球のS極・N極はあっちゃこっちゃに動いていた時代があり、時には今と正反対。南極がN極、北極がS極に反転した時代があったこともなんとか理解して~なんてことしてるうちに、どこからか川のせせらぎが・・・・。
ということではるか昔。チバニアン・千葉時代の地層まで、あとちょっとです!


では、下に降りて実物を見てみましょう。養老川の河床が見えますけど、そこは78万年前の、深海、水深500メートルから1000メートルの海底だったらしいです。それがうんと隆起したんです。
養老川というのは、房総半島中央を東京湾側へ向かって流れています。


これがよく、新聞やテレビで見る崖です。穴がいっぱい空いているでしょう。これはみんな研究者たちが開けた穴です。穴を開けてサンプルを研究室へ持ち帰って、磁極がどちらかというのを測定されているんですね。

最初はどこに磁極の反転があるのかわからないんですよ。ひとつは養老川の上流から10メートルおきに研究者がサンプルをとっていた。そうしたらこの辺に磁極の反転があるのを見つけて、その後に縦20センチ間隔くらいに穴が開いているんですが、これは研究者が、どこで反転したかを採取したあとなんです。それでだんだん階段の方で行くと、黄色い杭、緑の杭、赤い杭がありますよね。大体赤の杭の辺りは、磁極が反対だった場所…逆磁極。黄色の杭はあのあたりで反対に変動し始めた。緑の杭は今と同じ正磁極のところです。

砂泥岩、砂と泥の堆積岩です。房総半島の東側にフィリピン海プレート、太平洋プレートという海洋プレートが2つあります。これが重なって沈みこんで隆起したんですが、こっちが黒潮でこっちは親潮。海流の流れもあって、ここに海底に積もっていた泥砂が集まってきたんだと思います。見ていただくと、こういうのは78万年前の貝殻の化石です。

生跡化石といって、生物が生きた証、ミミズのような生物が泥の中を這い回るとそこに穴ができて、這った後がそのまま堆積して化石になるんです。こういうのも見られます。しかも年代がわかる。ここは本当に奇跡の場所です。世界で1カ所。例えば、磁極がいつまた逆転するかというのはわからないんですが、ある人の説では2000年後にはまた反転するんじゃないかという説もあるのですが、その時の生物の状態とかを調べようと思うと、この崖で調べれば。研究材料にはすごく最適の場所なんですね。



~初めてチバニアン来てすごく楽しかったのですが、これからチバニアンに来ようと思っている人にオススメのポイントはありますか?
来る前に下調べをしてこられるとさらに良いと思うんです。来てもらって自然を感じてもらってチバニアンのこの大切な地層を目の前で見る、例えば研究者の執念というかそういうところも見て、チバニアンの重要性を確かめてもらえればと思います。周りの環境もものすごく良くて、今から春先になると緑もきれいだし、川も水も綺麗なので、自然を楽しんでいただければと思います。私も毎回来るたびに自然のパワーをもらえたような感じで良いところです。観光地化されていない今が一つのポイントかなとも思いますね。ここはまだ国の天然記念物になって1年ちょっとだし、チバニアンの決定もまだ1ヵ月ほどなんですね。まだまだ整備されていない。自然のままがまだ残っていますからね。ここが一番のセールスポイントだと思います。今いるところは天然記念物の上に立っているんですもんね。

できたら、有料のチバニアンガイドをつけてもらえればより楽しめると思います。15人まで1500円です。ビジターセンターができるまでは無料でやっていたんです。ただ活動を継続してやるには少しお金も必要なので、少しだけいただくことになりました。ここに来る人は本格的な研究者の方も見に来られるんですけど、ブラタモリっぽい地形や地質はどうかなと見に来ている人も結構いると思います。天然記念物のリーフレットにも書いてあるんですけど、皆さんに見てもらうために、この貴重な天然記念物、チバニアンを壊さないで欲しいなと思います。ゴールデンスパイクは火山灰層のところに打つそうです。来年か今年中かちょっとわからないですが、近いうちにゴールデンスパイクを打つと思います。次回、ゴールデンスパイクが来たときにもう一回来てくださいね。


チバニアンのレポートいかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聴きください。

【今週の番組内電オンエア曲】
・木綿のハンカチーフ / 椎名林檎
・Castle On The Hill / Ed Sheeran
     ポッドキャストを聴く  
  • 2020.03.01

チバニアン1


今年の1月17日、国際地質科学連合が、およそ77万年前の地層の名前を「チバニアン」に決定したというのがニュースで報じられましたよね。ということで、今回は”チバニアン”のレポートです。今回取材したのは、千葉県市原市田淵の養老川沿いの崖。昨年オープンしたばかりの「チバニアンビジターセンター」のガイド・清水収さんに案内していただきました。


チバニアンの特徴、まずひとつは、地上に現れた海底の地層ということで、約770,000年前の海底の深海の地層が急激に隆起して房総半島が地上に出てきたんですね。その地表がここで見れる。世界的にも珍しく、房総半島とイタリア南部しかないそうです。

地層というのは、地球誕生から現在までに起きたことを表すいわば「地面に残された年表」。いろんな時代の名前がつけられています。例えば映画ジュラシックパークで知られるジュラ紀とか、白亜紀などがありますね。そこにチバニアン・・・日本語では「千葉時代」という名前が付いたんです。
その根拠となったのが、今回取材した千葉県市原市田淵の養老川沿いの崖なんです!

~川の音が聞こえてきましたね
これが養老川です。とてもきれいな川です。養老川というのは房総半島の南側から北側に向かって流れています。そしてその水路のところが国の天然記念物ということになります。養老川流域、田淵の地磁気逆転地層という国の天然記念物になっています。約30,000平方メートルあります。結構広いですね。

今回なぜチバニアンという名前がなぜついたのかということですが、地球の歴史を46億年を1年間を地球の歴史に例えると、チバニアンという時代の77万年前は、今の時代にすると12月31日の午後10時30分ごろになります。人類の歴史ってそんなもんなんですよね。77万年前というのは北京原人がいるかいないかの頃です。私たちはホモサピエンスですよね、つまり新人。その前には旧人と原人と猿人といます。人間の歴史というのは地球の歴史で言ったら本当に終わりの頃なんです。その時代にチバニアンという名前がつきました。

その時期は、地磁気が逆転していました。この田淵の地層がそれを示す決めてとなりました。北のほうにN極がありますよね、これが正磁極。その反対の逆磁極の時代があったと。Sの方位磁針の針が北向いていた時代があったということなんです。360万年前ですけれども、11~12回は地磁気が逆転したんです。地球の自転は今と同じようにしていましたが、地球の磁場が逆転したんです。最後に地磁気が逆転したのが77万年前。それを1つの時代の区分にしようとしたのが、チバニアンで、このがけのところがその根拠になったということなんです。最後に、77万年前に地磁気が逆転して今の正磁極になってから、12万9千年前の時代をチバニアンと決めました。そして千葉の養老川沿いの崖のところが、世界でいちばん、その様子がわかる地層なんです。ここを研究すれば、磁極が反対だった頃の化石類や痕跡がわかる。しかも今の正磁極と同じようになった時もわかる地層なんです。時代で言えばチバニアンになる前のカラブリヤンからチバニアンに移る前と後の間の地層がここ、養老川の流域で見られます。じつはイタリアに2カ所競合相手があったんですが、堆積速度がここはものすごく厚くて研究の対象には素晴らしいということでここが選ばれました。


ジュラ紀、白亜紀のように「千葉時代・チバニアン」という。実は日本の土地の名前が付くのはこれが初なんです。もうほとんどの時代に名前がついているので、本当に最後のチャンスだったそう。
そして、ガイドの清水さんのお話に合った「地磁気逆転地層」。地球を大きな磁石に例えると、S極とN極が南極と北極に固定されず動いていた時代があり、77万年前のあたりは今と正反対だった・・・。なかなか想像のつかない話ですが、清水さん、地球のS極が動いていた時代のグラフとともに解説してくれました。


地磁気がなぜ逆転したのかはわかりません。周期も一定ではありません。これは78万年から76万年前の間の地球上のS極の位置なんです。例えば南のほうにSがあるという事は今とは磁極が逆だということですよね。それが77万年前位になると、S極が世界中を飛び回っている。それが、現在と同じような北極にS極が集まって今と同じような正磁極になる。この変動期間は2000年位かかります。完全に安定するには5000年から1万年ぐらいかかるんです。磁極が反転したかそうでないかは、岩石を分析することでわかります。例えば溶岩は磁鉄鉱、鉄分をたくさん含んでいるんですが、溶岩だったら熱い溶岩が固まる時に、地球の磁気の方向に鉄の粒分が向くそうです。堆積岩も同じで、海底の堆積物は鉄分は少ないらしいんですが、地球の磁場に向かって少しずつ堆積するんです。これを分析していくと磁場がどっちを向いていたかわかるんです。


来週はいよいよその地層を実際に見ます。お楽しみに!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・愛をこめて花束を / Superfly
・It's Not Easy / Puss n Boots
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高橋万里恵
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