さて、年の瀬ということで、来年の干支「いのしし」の話題が多くなっていますが、きょうはまだギリギリ? 今年の干支、犬・ワンちゃんに関する話題です。
場所は宮城県女川町。女川駅前の商業施設「シーパルピア女川」にあるそのお店は、森で生まれた優しい木のぬくもりを、ペットの犬たちのためにと、ワンちゃん専門の、木を使った食器などのアイテムを作っています。犬専門木工房Woodwork Studio Noahの新井千祐さんにお話を伺いました。


 このお店は、犬専門の木工房ということで、1匹1匹のワンちゃんの体型だったり、障害だったりとか、その子にぴったり合うように1つずつ手作りしてつくる工房をやっています。
 犬の種類は800程あるんですが、体型は本当に様々なんですね。その子が一番食べやすい姿勢で食べるのが一番健康につながるというのがあるので、うちではワンちゃん1匹1匹に合わせて高さだったり、角度をつけたり、器自体も手作りで作っています。例えば早食いしちゃう子には内側に山を作ってあげると、一口の食べる量がちょっと緩和されるので早食いしにくくなります。そういうのも飼い主さんと相談をしながら作るというのをやっています。
 木でつくるというのは、人と同じように犬もアレルギーがあるので、プラスチックがダメだったりとかもありますし、ステンレスが反射するのが怖いという子もいるますし、犬によってはかじって食べちゃう子もいるので、そう考えたときに、うちでは木そのものの匂いだったり感触を大事にしたいなと思って作っています。人間の赤ちゃんと同じように安心して使ってもらえるようなものづくりをしています。



~本当に木の香りが素敵なんですが、どんな木を使っているのですか?
 うちでは宮城県産の桜の木と、栗の木、杉の木などを使っています。何に使うのかで向き不向きがあるので、たとえば荷重がかかる部分に関しては広葉樹の栗だったり桜なんかをお勧めしています。杉はうちの方では寄木にして、山をイメージした三角にしています。山とか木をみたいな感じです。器のほうは全部桜にしています。


~なぜ新井さんはこういったお店を女川でスタートしようと思ったんですか?
 もともと隣の石巻市出身だったんですが、私の祖父が木工所を60年以上石巻市で営んでいて、家具と建具をやっていたんですが、津波被害に遭いまして、祖父も高齢だったので、閉鎖、廃業となってしまいました。でも、私自身は家具作りをやりたいと思っていたので、石巻の方で続けていたんです。そして独立を考えたときに、小さい頃から犬を飼っている生活をしていて、今もヨークシャテリアを飼っているんですが、その子のためにご飯テーブルやベットをつくったり、自宅に合わせたフェンスを作ったりとかもともとやっていたということ、あと私自身がデザインや設計の部分もやれるのでこんな店をやりたいと思ったんです。また、女川という場所が、震災の影響があったせいで、やっぱり新しく変わらないといけないという状況にもなりましたし、私がこういう工房をやりたいというお話をいろんな方にさせていただいたところ、すごく好意的に受け取ってもらったので、ここの街の人たちと一緒にだったら、女川がペットに優しい街になるんじゃないかなというのが現実的になってきたので、ここの場所で新しくやりたいなと思うようになりました。 「女川をペットに優しい街にしたいです」といろんな方にお話をさせていただいて、町長やまちづくりの方も、すごく面白いねと言ってくださっています。いま港はまだ工事をしているんですけれども、そこが2020年の春には芝生の公園になるんですね。うちとしてはドックランをぜひ作って欲しいと言っていて、街として作る方向で進んでいます。うちは女川で唯一のペットのお店になっていて、ペットを飼っている方はとても多いんんですけれども動物病院が一軒もないんですね。カットできるようなトリミングサロンもないですし、そういうのもうちのスペースを使って、獣医師の先生とかトリマーさんとかに来ていただいて相談会、コミュニティづくりなんかに活用できればいいなと思っています。また、他のお店さんからもコラボのお話も結構いただいていて、石鹸工房さんとのコラボで犬用の石鹸もあっちに並べているんです。他にも生産加工屋さんと無添加のお魚のおやつをやってみようという話とか、ペット向けのサービスがどんどん増えていくと思います。いろんな店の人がぷらっと来てくれますし、外を歩いているだけで色々と声をかけていただいたいたりとかするんです。街自体がコンパクトになっている分、人と人との関係性が密にとれるので、女川はすごく面白い街ですね。

今日のお話、いかがだったでしょうか。犬専門木工房Woodwork Studio Noahさん、気になった方はぜひfacebookページをチェックしてみてください!
https://www.facebook.com/WWS.Noah/

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Flamingo / 米津玄師
・Good morning / ケツメイシ
アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのお話、今週でラストとなります。
最後は、アーサー・ビナードさんが文章、絵本作家の田島征三さんが絵を担当した絵本、「わたしの森に」の物語のモデルとなった場所で、ビナードさんご自身も長年通い続ける新潟県十日町市の「鉢」という名前の集落の、冬について。雪に包まれた鉢集落のお話です。


 今回の絵本は、読者は自分の近くの森を想像しながらとか、自分の知っている森とつなげて読めばいいんだけど、書く側は完全に鉢集落ですよね。田島さんは僕よりずっと前から住み着いているような感じなので、田島さんが鉢集落の景色を描くときに本当にその森なんだよね。田島さんはすごくいろんな実験をして前衛的な絵画も作り、小さい子が夢中になるような絵本も作り、僕が日本に来た1990年に、もうすでにたくさんの作品を出していたんです。僕は田島さんの作品で1番最初に読んだのは、「ふるやのもり」という昔話。面白いなと思って、でもまさかこれを書いた人が存命だとは思わなかったんだよね。昔の人だと思っていた。「ちからたろう」とか他の作品を読んで田島征三という名前を覚えたけれども、もうとっくにあの世に旅立った人だと思っていたんです。でも「とべ バッタ」という絵本を読んだときに、ちょっと現代的な感覚だったんで、調べてみたら生きていたっていう。まさかその人と一緒に組める日が来るとは思わなかったですね。
 田島さんはすごく実験を繰り返してきた画家なので、彼の鉢集落との関わり、前衛美術と里山と、農村をつなげているんですよね。この絵本の、雪が積もって、杉の木がたくさん雪をかぶって立っているという、この絵が僕にとっては一番鉢集落だなと思います。
 鉢集落の冬は、毎日雪の中で、ウサギとか会えたりするんだよね。普通にみんなかんじきを履いて歩いています。毎日かんじきって楽しいよね。まあでも、青森の友達もみんな、僕が行ってはしゃいで楽しく雪かきをしていると「むかつく」って言われますけど(笑)。でもミシガンも雪深いところだし、子供の頃、冬は雪かきでお小遣いを稼いでいました。近所のおばあちゃんの家に行ったりして、結構稼げる。欲しいものがあると雪降らないかなぁと思ってました。夏は芝刈りで稼ぐんですけどね。雪かきが辛いというのもわかるんだけど、例えば雪が積もるとクロスカントリースキーでどこまでも行けます。森は冬に行動範囲が広がる。しかもマムシを踏むことも考えずにスイスイ行けるんだね。みんな眠っているから。だから昔の人は雪が降ったら雪に合わせて生活する。雪が降ったら雪を謳歌して、溶けたら水の恵みを謳歌して、とやっていたからね。なるべく自分で合わせられるところは合わせて楽しんだほうがいいと思う。
 鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館のほうはビオトープもだいぶ目指している形になってきました。今年も夏に結構いろいろ工夫して、カエルたちも本当に今天国に近い環境になっています。カエルがいっぱいいれば、それを餌とするマムシも増えます。森として目指す方向は、生き物がどんどんどんどん豊かになる、増える方向です。互いに恩恵があって、命が増える方向に全てが進むというのが、多分健康だよね。タニシは稲を食っちゃうと言うんだけど、水の管理をやると雑草を食べてくれる生き物に化けるんです。生き物を生かすにはちょっと手間と工夫がいるんだよね。除草剤は撒けば、それで簡単におわりますけど、でもそれはいつか全部自分に返ってくると思います。


アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館は現在冬季閉館中で、つぎはゴールデンウイークごろから再び会館になるそうです。
鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館→http://ehontokinomi-museum.jp/


『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

【番組内でのオンエア曲】
・道 / 宇多田ヒカル
・Sally / LOVE PSYCHEDELICO
アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのインタビュー。今週で3回目となります。
今日は、ビナードさんが先日発表した絵本『わたしの森に』の舞台となった場所、新潟県十日町市にある「鉢」という名前の集落のお話です。
その名の通り、山あいにあって、すり鉢のような形の集落は、JR十日町駅から「鉢」行きの路線バスに揺られ、市街地を抜け、信濃川を渡り、山を越え、谷を越え、また山を登って、ようやく辿り着くという場所にあるそう。いったいどんな場所なのでしょうか。


『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

 鉢集落に田島さんの美術館があります。美術館といっても廃校になった小学校。真田小学校の生徒が3人になって廃校が決まった時に、田島さんが集落のみんなと美術館に作り替えたんです。その美術館の敷地内にマムシが住み着いているところがあるんですが、田島さんがトリエンナーレの企画展を一緒にやらないかと誘ってくれて、最初の打ち合わせをしているときに田島さんが、すぐ絵を描き出すんです。ここにビオトープがあって、ここに校舎があって、ここが体育館で。そして、ここの草が生えているところにマムシがいますから何とかしなければいけない。マムシがいるから草を刈ると言うんですね。でも僕は「マムシがいて何が悪いんだ」と、蛇の弁護人みたいに言って(笑)そうしたら「そうか、そうか」と。そこからマムシがだんだん主役になってきちゃって、マムシが心地よく訪ねる、来館できる美術館にしようよということになりました。毒蛇だから締め出すって美術として失格じゃんって思うんです。美術って視点を変えてみんなの視野を広げること。マムシを中心に据えて考えると世界が違って見えます。そして、集落の皆さんがマムシとどういう風につながっているかということも聞いたりして、結局巨大マムシを作ったんです。2018年越後妻有アートトリエンナーレにたくさんの人たちが来てくれたんだけど、その時は竹で作った巨大マムシから美術館に入るんです
 嫌われ者で、そういう風に扱われている、人間の社会の中でも忌み嫌われるものには、何か大事な意味があります。嫌われている理由は多くの場合、嫌っている方にる。つまり包容力がないということだったり、権力側の都合で締め出すことにメリットがあるとか。差別というのも利用されて、社会が差別の方向に進むということがあるから、なんで嫌っているのか、嫌われている側に問題があるのか、それともこっちに問題があるのか考える入り口にもなり得るんだよね。マムシほど嫌われている生き物は無いけれども、マムシほど優れた生き物はない。だから嫉妬してんじゃないかと思うんですよ。
 鉢集落は農業と林業と、もともとあった奥山がつながっている集落なんですよね。もちろんそこに住む人たちが減っていて、やれてない田んぼとかがある。それでもちゃんと機能していて、集落の人たちが農業と林業と、ある程度の手入れができているんです。だから針葉樹が多いところは生き物たちにとってどんぐりもないし、食べ物が少ない状態なんだけど、その間に生活圏とか、畑とかがあって全部針葉樹一色じゃないから、野生の生き物がいるんです。昔の話を聞くと、食料が足りない時代、子供が病気になると森に入ってマムシ、ヒキガエル、今は食べない生き物をとって積極的に食べて、病気がちの子供の力になったそうです。「私はマムシで強くなった、育った」と言うお母さんやおばあちゃんもいたんですよね。隣の大島村の友達がマムシをつかまえてくれて持ってきてくれて、去年はしばらくマムシと一緒に暮らしていました。本当に美しい。最後は、、、漬けましたけどね。マムシ酒というのがあるでしょう。ブヨに刺された時はマムシ酒ですよ。うちの妹が日本に来たときにブヨに噛まれたんです。病院に行こうかと言っていたらおばあちゃんは、マムシ酒を塗りましょうとマムシが入っている一升瓶を出してきた。うちの妹は「うわあぁぁ」と言っていたけど、塗ってあげて湿布を巻いたら1時間位で治っちゃった。そしたらうちの妹は、これはミラクルだと言ってました。


来週もアーサー・ビナードさんのお話の続きをお届けします!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Sunday Candy / Donnie Trumpet & the Social Experiment
・Back To December / Taylor Swift
今週は先週に引き続き、アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのお話です。
ビナードさんが先日発表した絵本『わたしの森に』。雪ぶかい、新潟県十日町の森を舞台にした、一匹のメスのマムシが主人公の物語。きょうは、このマムシというちょっと怖い蛇の、知られざる、すごい能力のお話です!


『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

 この絵本ではマムシが交尾をするシーンがあります。普通はオスの精子がメスの体内に入って妊娠するかしないかということでしょう。ところがマムシって違うんですよ。オスの精子がメスの体に入ったら、メスのマムシはそれを体内に備わっている精子バンクに入れるんです。受精卵にしないで精子を取っておくスペースがあって、保存できるんです。そして、冬を越して生活が安定していれば妊娠する。でもちょっと無理だ、食料も足りないし妊娠は厳しいなと思ったらとっておいて翌年妊娠するんです。僕らが知っているデータでは4年以上とっておいたという記録があるんですね。こんなことができたら、人間も助かるよね。「この男いいなぁ、でも今仕事もいろいろ大変。でももらっちゃうか」と言ってもらって、とっておけば、翌年とかに妊娠できる。それを動物学者は遅延受精と呼んでいます。体の何かが判断しているのか、脳で決めているかという議論はあるけれども、明らかに選択肢がある。それは僕ら人間が持っていない離れ業です。命を作り出すすごい才能です。僕はそんなことは一切知らずに、マムシが好きだなぁ、いいなと思って、絵本を作り始めて、田島さんといろんなものを調べてみたら、ええ!?っていう。
 びっくりして故郷のヘビのこともいろいろ調べているとき、ちょうどミシガンにいる母から電話がかかってきて、遅延受援のことを知っていたかと聞いたら「知ってるわよ」と。しかも「白熊もできる」って言われたんです。そんな哺乳類がそんな離れ業なんかできるの?と思ったら実はできるんです。ただ白熊は哺乳類だから仕組みが違います。精子をとっておくのではなくて、受精卵のまま着床させないで保存するんです。凄いでしょう?冬眠に入るときに、子育を成し遂げるだけの体力と、体脂肪と栄養がないと、子供だけじゃなくて母親も犠牲になるから、そこで判断するわけです。冬眠に入るときに、できそうであれば着床する。できないかもしれないときは未着床のまま。それを白熊はやっているんですね。
 ヘビって卵を産むんですが、マムシは卵を体内で孵化させて、子供が成長して一人歩きできるときに生むんです。だからこの絵本の1番の山場は出産です。交尾をして、”まんまんまん”と体内で膨らんでパンパンになっている感覚に読者がなって、それで生まれる。シューシューと出ていくんです。この絵本では3匹なんですけどね。自然界ではもっと多くて10匹ぐらい出てくる時もあります。
 ミシガンにもマムシに近い仲間のガラガラヘビがいて、森に入るときに噛まれたら大変なんです。そういうことを考えると、噛まれないように気をつけようと思いますよね。それがすごく良いことなんですよ。足元をよく見る、誰がいるかなど考えながら進んでいく。そうすると、キノコがあったとか、アメリカもワラビみたいなのがあるんだけど、ワラビが出てきたとか、ヤマアラシの棘があるとか気づけるんです。鹿って角を落とすけど、角がなかなか見つからないんです。あれだけいっぱい落としているのになぜ見つからないのかというと、鹿の角はヤマアラシの好物なんですね。ガリガリガリガリ食べちゃう。だけどヤマアラシが見つける前に見つけられると、それでいろんなものが作れるんだよね。子供にとっては欲しいものなんだけど、なかなか見つからない。でもガラガラヘビに気をつけながら入っていくと見つかるんですね。僕はミシガンでいろんな森の恵みを見つけてきたんだけど、それはガラガラヘビのおかげ。それを心配だとか恐怖と捉えるとマイナスのイメージだけど、本当はすごく大きなプラス。おっかない奴がいるって良いことなんですよ。


アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。気になる方はぜひ「わたしの森に」をチェックしてみてください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Friends / Justin Bieber and BloodPop
・Gravity John Mayer
今週は、スタジオにアメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんをお迎えします。
ビナードさん、新潟県のとある集落に通い続けていまして、雪国の「森」を題材に、一冊の絵本「わたしの森に」を発表されています。きょうはこの絵本に出てくる森と、その森の「ちょっと怖い生き物」のお話、いろいろ伺います!


~「わたしの森に」ではずっと主語が「私」でページが進んでいきますが、私って蛇だったんですね。
 バラしちゃったね(笑)絵本の真ん中あたりで人間が森に入ってくるんだよね。人間て本当に鈍くて、いろんなものを踏んづけてから、「あ、山菜があった。キノコがあった」って気づくんだけど、マムシの場合は踏んづけるとかまれる可能性があって、痛い目にあう。でも踏まれたマムシも痛い目に合ってるんだね。幸いなことにこの絵本では踏んづける前に子供が気がつくんだよね。そこで初めて、この主人公はマムシだったって気づくんですね。それまではずっと「私」、「私」。
 ストーリーとしては、1匹のメスのマムシが新潟の雪深い十日町鉢集落あたりの森にいる。豪雪地帯ですから、雪の下の土の中にいる。動物たちは眠りながら感じるんだね。杉の木に雪がいっぱい積もって、それが温まるとズルズルとずり落ちる。そのドスンと落ちて、その響きを敏感に森を感じながら、その下にいる存在が語っている。雪の下には動物だけではなくて植物もすごい生命力を持ったふきのとうとかコゴミとかいて、それも感じながら語っていくんだよね。そして、雪が溶けて今度はいろんな冬眠していた生き物が出てくる。
 マムシって、僕らがちょっと想像が及ばないような才能を持っているんですよね。マムシの顔をよく見ると、目と鼻の穴の間に不思議な凹みがある。それを英語でピットというんです。僕の故郷にいるガラガラヘビといとこ同士みたいな親戚の関係なんだけど、そのガラガラヘビはピットヴァイパーといいます。顔にきれいにくぼんでいるところが左右の頬に目と鼻の穴の間にあるんです。昔の1950年代の百科事典があるんだけど、ピットの意味は凹み。でもそれが何のためにあるのかわかりませんと書いてあるんです。半世紀前は誰もその凹みの意味がわからなかった。でもその後いろいろ研究が進んで、わかってきたんです。今回の絵本にはそれをこの絵本の絵をかいた田島征三さんと議論しながら、可視化したんです。この凹みはもう一つの目なんです。僕らは光を感知できる目を持っていますが、マムシも光で見る目があるんだけど、目と鼻の穴の間の凹みは赤外線を見る目なんです。彼らは熱を全部ビジュアル的にとらえる。よく米軍の夜の作戦の映像なんかでも出てきますよね、ナイトビジョン。要はこれを体に備えているわけなんです。ちょっとした温度差は全部映像としてビットでわかるんです。
 森の中ではこれがものすごく大事です。特にマムシはネズミとかウサギとかを捕るわけ。このストーリーでは冬眠から目覚めてお腹がすいたところにトガリネズミが来て、「いただきましょう」とあります。そうなると、ピット器官の映像とかが見えてきます。マムシのピット器官は感覚的には何なのか。雪の下ではズシンシンズシンシン、シンシンと感じる。暖かいものが見えると「むんむんむん」が見える。たとえば僕らの体は暖かいから「むんむんむん」が見えてくる。そして、マムシは交尾して妊娠するんだけど、その膨らんでいくのを「まんまんまん」という擬態語のような言葉を繰り返し出て表現しています。「まんまんまん」「むんむんむん」「しんしんしん」という3つの擬態語が中心になっていて、ある時はっと気づいたんです。「マ ム シ」。全然そんなこと意図せずにやったんだけど、はっと気づいて田島さんに「マムシの頭文字になってるけど、これわざとらしい」と言うと、「誰も気づかないからいいんだよ」って。でも今までで小学生で気づいた人がいましたね。大人は絶対に気づかないですね。


~でも絶妙な表現だと思ってました。「むんむんむん」はなんか熱を感じる音に聞こえますし。
読者がマムシの気持ちになってをれを感じたら、それが本当にいちばんこの絵本で伝えたかったことなんです。

アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。来週もインタビューの続きをお届けします!


『わたしの森に』くもん出版
(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

高橋万里恵さんがオープニングで話していた宮城県南三陸町「鮭・いくらまつり福興市」の様子です!



【今週の番組内でのオンエア曲】
・BUILT TO LAST / Melee
・WANT YOU BACK / HAIM
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