- 2018.12.09
「わたしの森に」アーサー・ビナードさんインタビュー2
今週は先週に引き続き、アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのお話です。
ビナードさんが先日発表した絵本『わたしの森に』。雪ぶかい、新潟県十日町の森を舞台にした、一匹のメスのマムシが主人公の物語。きょうは、このマムシというちょっと怖い蛇の、知られざる、すごい能力のお話です!

『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)
この絵本ではマムシが交尾をするシーンがあります。普通はオスの精子がメスの体内に入って妊娠するかしないかということでしょう。ところがマムシって違うんですよ。オスの精子がメスの体に入ったら、メスのマムシはそれを体内に備わっている精子バンクに入れるんです。受精卵にしないで精子を取っておくスペースがあって、保存できるんです。そして、冬を越して生活が安定していれば妊娠する。でもちょっと無理だ、食料も足りないし妊娠は厳しいなと思ったらとっておいて翌年妊娠するんです。僕らが知っているデータでは4年以上とっておいたという記録があるんですね。こんなことができたら、人間も助かるよね。「この男いいなぁ、でも今仕事もいろいろ大変。でももらっちゃうか」と言ってもらって、とっておけば、翌年とかに妊娠できる。それを動物学者は遅延受精と呼んでいます。体の何かが判断しているのか、脳で決めているかという議論はあるけれども、明らかに選択肢がある。それは僕ら人間が持っていない離れ業です。命を作り出すすごい才能です。僕はそんなことは一切知らずに、マムシが好きだなぁ、いいなと思って、絵本を作り始めて、田島さんといろんなものを調べてみたら、ええ!?っていう。
びっくりして故郷のヘビのこともいろいろ調べているとき、ちょうどミシガンにいる母から電話がかかってきて、遅延受援のことを知っていたかと聞いたら「知ってるわよ」と。しかも「白熊もできる」って言われたんです。そんな哺乳類がそんな離れ業なんかできるの?と思ったら実はできるんです。ただ白熊は哺乳類だから仕組みが違います。精子をとっておくのではなくて、受精卵のまま着床させないで保存するんです。凄いでしょう?冬眠に入るときに、子育を成し遂げるだけの体力と、体脂肪と栄養がないと、子供だけじゃなくて母親も犠牲になるから、そこで判断するわけです。冬眠に入るときに、できそうであれば着床する。できないかもしれないときは未着床のまま。それを白熊はやっているんですね。
ヘビって卵を産むんですが、マムシは卵を体内で孵化させて、子供が成長して一人歩きできるときに生むんです。だからこの絵本の1番の山場は出産です。交尾をして、”まんまんまん”と体内で膨らんでパンパンになっている感覚に読者がなって、それで生まれる。シューシューと出ていくんです。この絵本では3匹なんですけどね。自然界ではもっと多くて10匹ぐらい出てくる時もあります。
ミシガンにもマムシに近い仲間のガラガラヘビがいて、森に入るときに噛まれたら大変なんです。そういうことを考えると、噛まれないように気をつけようと思いますよね。それがすごく良いことなんですよ。足元をよく見る、誰がいるかなど考えながら進んでいく。そうすると、キノコがあったとか、アメリカもワラビみたいなのがあるんだけど、ワラビが出てきたとか、ヤマアラシの棘があるとか気づけるんです。鹿って角を落とすけど、角がなかなか見つからないんです。あれだけいっぱい落としているのになぜ見つからないのかというと、鹿の角はヤマアラシの好物なんですね。ガリガリガリガリ食べちゃう。だけどヤマアラシが見つける前に見つけられると、それでいろんなものが作れるんだよね。子供にとっては欲しいものなんだけど、なかなか見つからない。でもガラガラヘビに気をつけながら入っていくと見つかるんですね。僕はミシガンでいろんな森の恵みを見つけてきたんだけど、それはガラガラヘビのおかげ。それを心配だとか恐怖と捉えるとマイナスのイメージだけど、本当はすごく大きなプラス。おっかない奴がいるって良いことなんですよ。
アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。気になる方はぜひ「わたしの森に」をチェックしてみてください!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Friends / Justin Bieber and BloodPop
・Gravity John Mayer
ビナードさんが先日発表した絵本『わたしの森に』。雪ぶかい、新潟県十日町の森を舞台にした、一匹のメスのマムシが主人公の物語。きょうは、このマムシというちょっと怖い蛇の、知られざる、すごい能力のお話です!

『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)
この絵本ではマムシが交尾をするシーンがあります。普通はオスの精子がメスの体内に入って妊娠するかしないかということでしょう。ところがマムシって違うんですよ。オスの精子がメスの体に入ったら、メスのマムシはそれを体内に備わっている精子バンクに入れるんです。受精卵にしないで精子を取っておくスペースがあって、保存できるんです。そして、冬を越して生活が安定していれば妊娠する。でもちょっと無理だ、食料も足りないし妊娠は厳しいなと思ったらとっておいて翌年妊娠するんです。僕らが知っているデータでは4年以上とっておいたという記録があるんですね。こんなことができたら、人間も助かるよね。「この男いいなぁ、でも今仕事もいろいろ大変。でももらっちゃうか」と言ってもらって、とっておけば、翌年とかに妊娠できる。それを動物学者は遅延受精と呼んでいます。体の何かが判断しているのか、脳で決めているかという議論はあるけれども、明らかに選択肢がある。それは僕ら人間が持っていない離れ業です。命を作り出すすごい才能です。僕はそんなことは一切知らずに、マムシが好きだなぁ、いいなと思って、絵本を作り始めて、田島さんといろんなものを調べてみたら、ええ!?っていう。
びっくりして故郷のヘビのこともいろいろ調べているとき、ちょうどミシガンにいる母から電話がかかってきて、遅延受援のことを知っていたかと聞いたら「知ってるわよ」と。しかも「白熊もできる」って言われたんです。そんな哺乳類がそんな離れ業なんかできるの?と思ったら実はできるんです。ただ白熊は哺乳類だから仕組みが違います。精子をとっておくのではなくて、受精卵のまま着床させないで保存するんです。凄いでしょう?冬眠に入るときに、子育を成し遂げるだけの体力と、体脂肪と栄養がないと、子供だけじゃなくて母親も犠牲になるから、そこで判断するわけです。冬眠に入るときに、できそうであれば着床する。できないかもしれないときは未着床のまま。それを白熊はやっているんですね。
ヘビって卵を産むんですが、マムシは卵を体内で孵化させて、子供が成長して一人歩きできるときに生むんです。だからこの絵本の1番の山場は出産です。交尾をして、”まんまんまん”と体内で膨らんでパンパンになっている感覚に読者がなって、それで生まれる。シューシューと出ていくんです。この絵本では3匹なんですけどね。自然界ではもっと多くて10匹ぐらい出てくる時もあります。
ミシガンにもマムシに近い仲間のガラガラヘビがいて、森に入るときに噛まれたら大変なんです。そういうことを考えると、噛まれないように気をつけようと思いますよね。それがすごく良いことなんですよ。足元をよく見る、誰がいるかなど考えながら進んでいく。そうすると、キノコがあったとか、アメリカもワラビみたいなのがあるんだけど、ワラビが出てきたとか、ヤマアラシの棘があるとか気づけるんです。鹿って角を落とすけど、角がなかなか見つからないんです。あれだけいっぱい落としているのになぜ見つからないのかというと、鹿の角はヤマアラシの好物なんですね。ガリガリガリガリ食べちゃう。だけどヤマアラシが見つける前に見つけられると、それでいろんなものが作れるんだよね。子供にとっては欲しいものなんだけど、なかなか見つからない。でもガラガラヘビに気をつけながら入っていくと見つかるんですね。僕はミシガンでいろんな森の恵みを見つけてきたんだけど、それはガラガラヘビのおかげ。それを心配だとか恐怖と捉えるとマイナスのイメージだけど、本当はすごく大きなプラス。おっかない奴がいるって良いことなんですよ。
アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。気になる方はぜひ「わたしの森に」をチェックしてみてください!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Friends / Justin Bieber and BloodPop
・Gravity John Mayer