アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのお話、今週でラストとなります。
最後は、アーサー・ビナードさんが文章、絵本作家の田島征三さんが絵を担当した絵本、「わたしの森に」の物語のモデルとなった場所で、ビナードさんご自身も長年通い続ける新潟県十日町市の「鉢」という名前の集落の、冬について。雪に包まれた鉢集落のお話です。


 今回の絵本は、読者は自分の近くの森を想像しながらとか、自分の知っている森とつなげて読めばいいんだけど、書く側は完全に鉢集落ですよね。田島さんは僕よりずっと前から住み着いているような感じなので、田島さんが鉢集落の景色を描くときに本当にその森なんだよね。田島さんはすごくいろんな実験をして前衛的な絵画も作り、小さい子が夢中になるような絵本も作り、僕が日本に来た1990年に、もうすでにたくさんの作品を出していたんです。僕は田島さんの作品で1番最初に読んだのは、「ふるやのもり」という昔話。面白いなと思って、でもまさかこれを書いた人が存命だとは思わなかったんだよね。昔の人だと思っていた。「ちからたろう」とか他の作品を読んで田島征三という名前を覚えたけれども、もうとっくにあの世に旅立った人だと思っていたんです。でも「とべ バッタ」という絵本を読んだときに、ちょっと現代的な感覚だったんで、調べてみたら生きていたっていう。まさかその人と一緒に組める日が来るとは思わなかったですね。
 田島さんはすごく実験を繰り返してきた画家なので、彼の鉢集落との関わり、前衛美術と里山と、農村をつなげているんですよね。この絵本の、雪が積もって、杉の木がたくさん雪をかぶって立っているという、この絵が僕にとっては一番鉢集落だなと思います。
 鉢集落の冬は、毎日雪の中で、ウサギとか会えたりするんだよね。普通にみんなかんじきを履いて歩いています。毎日かんじきって楽しいよね。まあでも、青森の友達もみんな、僕が行ってはしゃいで楽しく雪かきをしていると「むかつく」って言われますけど(笑)。でもミシガンも雪深いところだし、子供の頃、冬は雪かきでお小遣いを稼いでいました。近所のおばあちゃんの家に行ったりして、結構稼げる。欲しいものがあると雪降らないかなぁと思ってました。夏は芝刈りで稼ぐんですけどね。雪かきが辛いというのもわかるんだけど、例えば雪が積もるとクロスカントリースキーでどこまでも行けます。森は冬に行動範囲が広がる。しかもマムシを踏むことも考えずにスイスイ行けるんだね。みんな眠っているから。だから昔の人は雪が降ったら雪に合わせて生活する。雪が降ったら雪を謳歌して、溶けたら水の恵みを謳歌して、とやっていたからね。なるべく自分で合わせられるところは合わせて楽しんだほうがいいと思う。
 鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館のほうはビオトープもだいぶ目指している形になってきました。今年も夏に結構いろいろ工夫して、カエルたちも本当に今天国に近い環境になっています。カエルがいっぱいいれば、それを餌とするマムシも増えます。森として目指す方向は、生き物がどんどんどんどん豊かになる、増える方向です。互いに恩恵があって、命が増える方向に全てが進むというのが、多分健康だよね。タニシは稲を食っちゃうと言うんだけど、水の管理をやると雑草を食べてくれる生き物に化けるんです。生き物を生かすにはちょっと手間と工夫がいるんだよね。除草剤は撒けば、それで簡単におわりますけど、でもそれはいつか全部自分に返ってくると思います。


アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館は現在冬季閉館中で、つぎはゴールデンウイークごろから再び会館になるそうです。
鉢&田島征三・絵本と木の実の美術館→http://ehontokinomi-museum.jp/


『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

【番組内でのオンエア曲】
・道 / 宇多田ヒカル
・Sally / LOVE PSYCHEDELICO

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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