- 2015.08.30
山の不思議なお話~マタギカメラマン田中康弘さん 1
今週はちょっと、背筋がひやっとする、「怖い話」をお届けします。
お話を伺ったのは『山怪 山人が語る不思議な話』という本の著者で、長年マタギを追いかけているカメラマン田中康弘さんです。

特に秋田のマタギの取材をライフワークとしていて、長年、秋田県の阿仁という土地へ通い続けています。
◆マタギを取材するようになったのは
今は廃刊になってしまったのですが、ナイフの専門誌がありまして、その取材のときにマタギの人と知り合うきっかけがあったんです。それで、秋田県の阿仁というところに通うようになりました。3日前も行ってましたね。
マタギの人に出会うまでは、「マタギ」っていう言葉は知ってましたが、具体的にはどういう人なのかということは知りませんでした。それで興味があったんで、阿仁へ取材に行ったんですよ。そうしたら、そのマタギの方が非常に面倒見のいい方で、私が頼むと、じゃあ一緒に山行こうと言って山へ一緒に連れて行ってくれる。キノコ採りから山菜採りから、らうさぎ狩り、熊撃ちとかね。そういうの全部連れて行ってもらって、それがとてもおもしろかったんです。
私は九州の出身なので、雪のある光景もそれまであまり見たことがありませんでした。それが山の中だと、深い場所は4mくらいあるわけです。そういう中で生活してる人たちと初めて出会って、それでもうおもしろくて、今に続いてきたというわけですね。
ひと呼んでマタギカメラマン・田中さん。
といっても、ご自身はマタギの生活を写真に収めるのが専門。日本各地で山の猟師を取材している田中さんによれば、各地で、猟の仕方・自然に対する考え方が違うそうで、そうした猟師の方々を客観的に見つめるために、あえて彼らの仕事をやってみる、というところまでは踏み込まないのだそうです。
そんな田中さんが、もう何十年も通い、マタギの方と交流しているのが秋田県・阿仁です。こちらは今も「マタギの里」と呼ばれ、その文化が残っています。
◆阿仁のマタギ
阿仁は秋田県の内陸部で、北秋田って言われてるとこなんですね。山の周囲にマタギの集落がいくつか点在しているんです。歴史は古くて、かつては銅山があったので人の流れは多かったですね。文化も京都とかの文化がいっぱい入って来てるところです。
阿仁は山の中で、ものすごい雪深いんだけど、閉ざされた空間ではないんです。マタギの人たちは、肉は自分たちで取って食べるにしても、例えば毛皮であるとか、熊の胆ですとた、色んな薬を作るわけです。その薬を近場で売ることができるので、マタギは昔から商売をやる人が多くて、行商をやって、外の世界に行って、新しい文化を持ってくるというような開けた人たちだと私は思います
自分たちで取りに行って、加工して、売るので、いまでいえば六次産業ですが、それを全部昔からやってたんですよ。ただ段々、薬事法ができたりとか、色んなことがあってそういうことができなくなって、今はもうほとんど行商をしてる人はいませんが、昔はすごい盛んでした。
現在、秋田県阿仁には、かつてのように、マタギを生業としている人はいません。今は、別に本業を持ちながら、マタギの知恵と技術を受け継いで、時おり山で猟をする・・・というのが現代の秋田のマタギだと言います。
そして、田中さんの本『山怪 山人が語る不思議な話』には、秋田のマタギ、そして各地の猟師たちが森・山の中で体験した、世にも奇妙なお話がたくさん集められているんです。
◆うみの日
マタギの人が、「この間山にすごい蛇がいた。」って言うんです。どんな蛇ですかと聞くと、獣道になにかあって、最初土管があるんだと思ったそうなんです。山の中ですから、なんでこんなところに土管があるのかなと思って見てたら、それが動いたって言うんですよ。で、これは土管じゃなくて蛇だと。大きさはおそらく5m以上あるだろうという。
これを最初聞いたときにはほら話だと思いました。いくらなんでも5mの蛇なんかいないと思ったんですけども、別の人に聞くと、「いや、いるよ!」って言う人もいるし、「そんなのはいない!」っていう人もいたんですよ。それが私は面白かった。いると言う人といないと言う人が明らかに同じ場所にいるのに不思議だなあと思いました。
そこで、今度は阿仁以外の狩猟の現場に行ったときに「何か山で不思議なことありましたか?」と聞いたんです。そうしたら、鳥取の山に猟に仲間と行って、追い出された獲物を待って打つ場所を待ち場というんですが、そこに入った。そこは竹藪だったんですが、その中に入って猟が始まるのを待ってたわけですよ。そうしたら、いきなり周りの竹藪がものすごい音を立てて揺れ始めたんだそうです。台風が来たみたいな感じで、ガランガラン音がして、竹がものすごい揺れるんですって。
最初は風が吹いたのかな?と思って見てたんだけど、その日は天気も良く、風も吹いてなかった。ところがそんな状態にいきなりなったから、これはおかしいと思って逃げ出したんだそうです。藪から逃げ出して、ちょっと行ったところで振り返るとシーンとしていて、揺れてもいない。で、あれ?と思って、なんか気のせいだったのかな?と思ってもういっぺんそこの待ち場に入ったらまた同じことがあった。
これはまずいと思ってまた逃げ出して、それでもうその竹藪には入らなかったっていう話を聞いたんですよ。その日は地元でいう「うみの日」。何で山なのに海なのかわからないんですけども、その日は竹藪には入っちゃいけないって地元では言われてたんだそうです。
だから何なんだそれ!と思って、ひょっとしたら全国どこにでも山に入る人たちっていうのはこういう経験してるんじゃないのかなと思ったんです。それで聞き出すと出てくるんですよね、これが
やはりその地区で、たぬきがメインになるところがあったり、キツネがメインになるところがあったりと、差があるんですよね。でも差はあるんだけど、起こる現象はすごく似ていて、神隠し的なものが東北から四国でも同じようにあるんですよ。でもこれはおそらく日本の山の中、森が持っている力がどこにも共通してあって、そこで暮らしてきた人々の歴史の違いとか文化の違いで感じ方が違うのかなって思ったんですね。
今回はマタギカメラマン 田中康弘さんが語る、秋田のマタギから聞いた不思議な話しをお届けしましたがいかがっだったでしょうか。
来週も、マタギの方々が語った「怖い話」です。どうぞお楽しみに!

『山怪 山人が語る不思議な話』 田中康弘(山と溪谷社)
【今週の番組内でのオンエア曲】
・MUTOPIA / BIGMAMA
・Slow & Easy / 平井大
お話を伺ったのは『山怪 山人が語る不思議な話』という本の著者で、長年マタギを追いかけているカメラマン田中康弘さんです。

特に秋田のマタギの取材をライフワークとしていて、長年、秋田県の阿仁という土地へ通い続けています。
◆マタギを取材するようになったのは
今は廃刊になってしまったのですが、ナイフの専門誌がありまして、その取材のときにマタギの人と知り合うきっかけがあったんです。それで、秋田県の阿仁というところに通うようになりました。3日前も行ってましたね。
マタギの人に出会うまでは、「マタギ」っていう言葉は知ってましたが、具体的にはどういう人なのかということは知りませんでした。それで興味があったんで、阿仁へ取材に行ったんですよ。そうしたら、そのマタギの方が非常に面倒見のいい方で、私が頼むと、じゃあ一緒に山行こうと言って山へ一緒に連れて行ってくれる。キノコ採りから山菜採りから、らうさぎ狩り、熊撃ちとかね。そういうの全部連れて行ってもらって、それがとてもおもしろかったんです。
私は九州の出身なので、雪のある光景もそれまであまり見たことがありませんでした。それが山の中だと、深い場所は4mくらいあるわけです。そういう中で生活してる人たちと初めて出会って、それでもうおもしろくて、今に続いてきたというわけですね。
ひと呼んでマタギカメラマン・田中さん。
といっても、ご自身はマタギの生活を写真に収めるのが専門。日本各地で山の猟師を取材している田中さんによれば、各地で、猟の仕方・自然に対する考え方が違うそうで、そうした猟師の方々を客観的に見つめるために、あえて彼らの仕事をやってみる、というところまでは踏み込まないのだそうです。
そんな田中さんが、もう何十年も通い、マタギの方と交流しているのが秋田県・阿仁です。こちらは今も「マタギの里」と呼ばれ、その文化が残っています。
◆阿仁のマタギ
阿仁は秋田県の内陸部で、北秋田って言われてるとこなんですね。山の周囲にマタギの集落がいくつか点在しているんです。歴史は古くて、かつては銅山があったので人の流れは多かったですね。文化も京都とかの文化がいっぱい入って来てるところです。
阿仁は山の中で、ものすごい雪深いんだけど、閉ざされた空間ではないんです。マタギの人たちは、肉は自分たちで取って食べるにしても、例えば毛皮であるとか、熊の胆ですとた、色んな薬を作るわけです。その薬を近場で売ることができるので、マタギは昔から商売をやる人が多くて、行商をやって、外の世界に行って、新しい文化を持ってくるというような開けた人たちだと私は思います
自分たちで取りに行って、加工して、売るので、いまでいえば六次産業ですが、それを全部昔からやってたんですよ。ただ段々、薬事法ができたりとか、色んなことがあってそういうことができなくなって、今はもうほとんど行商をしてる人はいませんが、昔はすごい盛んでした。
現在、秋田県阿仁には、かつてのように、マタギを生業としている人はいません。今は、別に本業を持ちながら、マタギの知恵と技術を受け継いで、時おり山で猟をする・・・というのが現代の秋田のマタギだと言います。
そして、田中さんの本『山怪 山人が語る不思議な話』には、秋田のマタギ、そして各地の猟師たちが森・山の中で体験した、世にも奇妙なお話がたくさん集められているんです。
◆うみの日
マタギの人が、「この間山にすごい蛇がいた。」って言うんです。どんな蛇ですかと聞くと、獣道になにかあって、最初土管があるんだと思ったそうなんです。山の中ですから、なんでこんなところに土管があるのかなと思って見てたら、それが動いたって言うんですよ。で、これは土管じゃなくて蛇だと。大きさはおそらく5m以上あるだろうという。
これを最初聞いたときにはほら話だと思いました。いくらなんでも5mの蛇なんかいないと思ったんですけども、別の人に聞くと、「いや、いるよ!」って言う人もいるし、「そんなのはいない!」っていう人もいたんですよ。それが私は面白かった。いると言う人といないと言う人が明らかに同じ場所にいるのに不思議だなあと思いました。
そこで、今度は阿仁以外の狩猟の現場に行ったときに「何か山で不思議なことありましたか?」と聞いたんです。そうしたら、鳥取の山に猟に仲間と行って、追い出された獲物を待って打つ場所を待ち場というんですが、そこに入った。そこは竹藪だったんですが、その中に入って猟が始まるのを待ってたわけですよ。そうしたら、いきなり周りの竹藪がものすごい音を立てて揺れ始めたんだそうです。台風が来たみたいな感じで、ガランガラン音がして、竹がものすごい揺れるんですって。
最初は風が吹いたのかな?と思って見てたんだけど、その日は天気も良く、風も吹いてなかった。ところがそんな状態にいきなりなったから、これはおかしいと思って逃げ出したんだそうです。藪から逃げ出して、ちょっと行ったところで振り返るとシーンとしていて、揺れてもいない。で、あれ?と思って、なんか気のせいだったのかな?と思ってもういっぺんそこの待ち場に入ったらまた同じことがあった。
これはまずいと思ってまた逃げ出して、それでもうその竹藪には入らなかったっていう話を聞いたんですよ。その日は地元でいう「うみの日」。何で山なのに海なのかわからないんですけども、その日は竹藪には入っちゃいけないって地元では言われてたんだそうです。
だから何なんだそれ!と思って、ひょっとしたら全国どこにでも山に入る人たちっていうのはこういう経験してるんじゃないのかなと思ったんです。それで聞き出すと出てくるんですよね、これが
やはりその地区で、たぬきがメインになるところがあったり、キツネがメインになるところがあったりと、差があるんですよね。でも差はあるんだけど、起こる現象はすごく似ていて、神隠し的なものが東北から四国でも同じようにあるんですよ。でもこれはおそらく日本の山の中、森が持っている力がどこにも共通してあって、そこで暮らしてきた人々の歴史の違いとか文化の違いで感じ方が違うのかなって思ったんですね。
今回はマタギカメラマン 田中康弘さんが語る、秋田のマタギから聞いた不思議な話しをお届けしましたがいかがっだったでしょうか。
来週も、マタギの方々が語った「怖い話」です。どうぞお楽しみに!

『山怪 山人が語る不思議な話』 田中康弘(山と溪谷社)
【今週の番組内でのオンエア曲】
・MUTOPIA / BIGMAMA
・Slow & Easy / 平井大