子どもの頃から、野に咲く花や自然が大好きだった辻典子さん。生まれ育った京都・大原で、猫じゃらし、すすき、たんぽぽの綿毛など、野に咲く身近な花や植物でリースを作り、その美しさ、大切さを伝えています。
今回のボタニストは、四季の野の草花でリースを作る辻典子さんの、花や植物、地元大原の自然への思いをご紹介します。
辻典子さんの作る野草リースの魅力
すすきに猫じゃらしなど、秋の野草の景色が広がる京都・大原。辻典子さんは、この地に生える季節の花や野草でリースを作っていらっしゃいます。
たとえば、春の代表は「たんぽぽの綿毛のリース」。花が咲き終わった直後、まだ花びらが付いているたんぽぽを乾燥させると綿毛も飛びにくく、ふわふわで可愛いリースが完成します。
たんぽぽの綿毛のリース
緑が生い茂る夏は、豆軍配なずなを使って、夏の草原をそのままリースで再現。
豆軍配なずなのリース
そして、秋は「猫じゃらし」と呼ばれる金えのころ草のリース作り。秋らしい金色の穂は1年たってもほとんど色が変わらずに飾っておくことができるそうです。
野ばらの実、すすき、金えのころ草、えのころ草のリース
そして、冬は、野ばらの枝になった、真っ赤な実を使って。
つるうめもどき、山帰来、野ばらの実のリース
まさに野山の景色をそのまま見せてくれるかのような、自然の趣きと季節感溢れる作品ですね。美しく長く楽しめるリースに仕上げるコツは、その収穫時期。野草の一番綺麗な時期を知る辻さんだからこそ、その命の一番の輝きを、そのまま閉じ込めることができるのかもしれません。
野草のリースで伝えたい大原の自然への感謝の思い
美しい自然の景色が今も広がる京都・大原で生まれ育った辻典子さんは、子どもの頃から植物と触れ合うのが大好きだったそうです。一度は他の仕事に就きますが、花に触れる仕事を諦めきれず、仕事を辞めてフラワーデザイナーの勉強を続け、講師の資格も取得します。ずっと変わらなかったことは、地元大原を離れず生活の場にしてきたということ。どんな野草にも名前があり、美しさがあり、命の意味があります。お花屋さんで売られている花々と比べると、野の草花に華やかさはありませんが、その季節にしか出会えない一期一会の喜びがあります。また、野草は気候次第で採れる量や大きさも毎年変わり、去年は採れたものが今年はまったく採れないということも。だからこそ、どんな野草との出会いにも、宝物を見つけたような思いを感じるそうです。
秋の風景が広がる京都・大原と辻典子さん
自然は、人間にはどうすることもできないもの。辻さんは毎日、大原の野山を散歩しながら「野草は足元の宝もの」という思いで、野草たちの姿を見守っているそうです。そして、ほんの少しだけ自然からおすそ分けをいただき、リース作りで大原の自然の素晴らしさを再現し、感謝の気持ちを伝えているのです。
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辻 典子
京都・大原生まれ。大原在住。フラワーデザイナー。子どもの頃から野の花が大好きで、レンゲやシロツメグサで作った花輪を冠にして育つ。就職したものの、花に携わる仕事があきらめられず、花屋でアルバイトをしながらフラワーデザインを学ぶ。1999年、フラワーデザイナー講師の資格を取得。2018年2月、世界文化社より、たんぽぽ、猫じゃらし、すすきなど身近な野草で作るリースのレシピを紹介した「四季の野草リース」を刊行。
全写真:『四季の野草リース』辻典子(世界文化社 刊)より 撮影:梶山正