「野菜」や「ハーブ」を使ったメニューや料理のコツを、人気シェフや料理家といった“食のプロ”に教えていただく「ボタニカル・レシピ」。
今回から2回に渡ってお届けするテーマは、国際中医師・国際中医薬膳師の大田ゆう子先生に教えていただく「花薬膳」。中国に昔から伝わる“花の効用”を身体に取り入れる、美しい知恵を生かしたレシピです。
女性に幸せと美しさをもたらす! 花に宿る力
美しく凛とした姿に、魅惑の香り。眺めたり、愛でたり、贈られたり…。花はその多くのシチュエーションで、私たちの心に安らぎを与えてくれます。同時に女性の体調を整え、気持ちを支えてくれる特別な存在でもあります。
例えば花の香り。自然の花の香りは、心と身体をリラックスさせる効果があり、古くから体調管理や身近な養生に役立てられていたそう。特にバラの甘くてゴージャスな香りには、癒やしだけでなく、女性ならではの魅力を高める効果も。その他、花と暮らすことによってもたらされる幸福感や、花のエキスやアロマなど、花に宿るパワーは女性を幸せに導いてくれるものばかりです。
「花薬膳」は、この花の力をダイレクトに身体に取り入れる方法としておすすめしたい“花養生”のひとつ。中国の薬食同源にもとづく薬膳料理では、自然の産物である花を大切な素材として捉え、日々の健康や美容のために取り入れてきました。薬膳と聞くと、ちょっと難しいイメージを抱いてしまいがちですが、教えていただいた花薬膳のレシピは手軽で簡単。今回、まず最初のステップとしてご紹介するのは、スイーツや料理に幅広く活用できる花の甘味料「ハニー桂花(ケイカ)」です。
金木犀(キンモクセイ)でつくる甘味料「ハニー桂花(ケイカ)」
秋が深まってきたこの時期。見て楽しむだけでなく、香り豊かな花としても楽しめるのが「金木犀(キンモクセイ)」。この花の薬膳での呼び名は「桂花」。身体を温める作用が特徴の桂花は、少しずつ寒さを感じる今の季節に進んで取り入れたい花食材のひとつ。花薬膳に使うのは、乾燥させた状態のもので、中国茶の専門店などで手に入れることができます。
この「桂花」を用いた、花の甘味料が「ハニー桂花」。作り方は、保存容器に蜂蜜(100cc)を入れ、そこに乾燥させた桂花(大さじ1)を入れて1時間置くだけ。拍子抜けしてしまうぐらい簡単ですが、これで1週間ほど保存しておくことができます。
使い方は多種多様。紅茶に入れたり、ヨーグルトに足したり、ジャムとしてパンに塗るのもおすすめ。またオリーブオイルとも相性が良く、ドレッシングに合わせてサラダと一緒にいただくことも。蜂蜜の甘さに桂花のほろ苦さと上品な香りがプラスされ、大人の味わいを楽しむことができるでしょう。蜂蜜には、殺菌作用やのどを潤す作用があるので、桂花がもつ身体を温める作用と合わせれば、風邪をひきやすいこの時期にぴったりです。
心と身体を整える! ハニー桂花のデザートレシピ
ハニー桂花の魅力に触れたところで、これをベースにしたデザートレシピを3つ紹介します。
「ハニー桂花と杏仁豆腐」は、ハニー桂花をシロップ替わりに杏仁豆腐と合わせ、香りや花の姿を楽しむデザート。水で溶いてゆるめたハニー桂花と、杏仁豆腐を層になるように交互に盛りつけてできあがり。お好みのフルーツでデコレーションすると、より一層華やかに。のどの乾燥による咳、便秘などに効果的と言われています。
消化を助けてお腹を守る「りんごと白玉のハニー桂花煮」は、食後のデザートにぴったり。作り方は、ボウルに白玉粉を入れ、水を少しずつ加えて耳たぶくらいの柔らかさに練り、直径1?ほどの団子に丸めます。鍋にお湯を沸かし、つくった団子を入れ、浮いてきたらすくい上げて、水を張ったボウルに取ります。りんごは皮をむいてタテ4つに切り、芯を除いて1センチの厚さにカット。鍋にりんごと白玉、ハニー桂花、水、薄いピンク色をつけるためにむいた皮も入れて8分煮て、皮を取りだし汁ごと器に盛りつけます。そして、食卓に出す直前にハニー桂花を少しかけると出来上がり。白玉に桂花がアクセントになって見た目にも楽しめます。
3つ目のレシピは「ハニー桂花と抹茶」。まず、粉末抹茶にお湯を少しずつ加えて溶かしておきます。そして、耐熱グラスにハニー桂花を入れ、温かい抹茶を注いで完成。こちらも食卓に出してから抹茶を加えると、その場で桂花がグラスの中から浮かび上がり、お花が揺らいでいるのを楽しむことができます。すっきりした苦みと花の香りでリフレッシュすることができ、飲み終えた後は口臭予防にもなるそうです。
おいしく簡単につくれて、身体も喜ぶ「ハニー桂花」とそれを使ったデザートたち。どれも簡単につくれるものばかりなので、ぜひ自分の体調に合わせて取り入れてみてはいかがでしょうか。花の力を上手に借りて、生き生きとした美しい暮らしを手に入れましょう。
TOKYO FM
「クロノス」では、毎週金曜日、8時38分から、毎週週替わりのテーマでボタニカルな暮らしをご紹介するノエビア「BOTANICAL LIFE」をオンエアしています。
また、TOKYO FMで毎週土曜日、9時から放送している
ノエビア「Color of Life」。10月は女優のとよた真帆さんを迎えてお届けしています。どうぞ、お聞き逃しなく。
大田ゆう子(おおた・ゆうこ)
国際中医師・国際中医薬膳師。自家菜園で育てた野菜を取り入れて、身体の力を高める薬膳の料理教室「洗足薬膳お料理教室」を主宰。また、薬膳の素材としての花の効能を研究し、日々の食卓に取り入れることを提案。中国料理店「聘珍楼(へいちんろう)」薬膳顧問も務めている。
日本に現存する最古の中国料理の名店「聘珍樓」で2010年よりスタートした「季節の薬膳セミナー」。そのセミナーをもとに、身近な薬膳レシピを提案しているのが、『聘珍樓のいちばんやさしい薬膳』(大田ゆう子さん監修 PHP研究所)。
10月22日(土)には東京溜池山王聘珍楼でお昼12時から、大田ゆう子さんがセミナー講師を務める「聘珍楼 秋の薬膳セミナー」も行われます。詳しくは溜池山王聘珍楼(03-3593-7322)まで。