22.02.28
ロシアのウクライナ侵攻、経済への影響は?
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan News」副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
【ロシアのウクライナ侵攻、経済への影響は?】
吉田:ロシアのウクライナへの軍事侵攻は世界経済、日本経済への影響も心配されています。そこで今日は、経済への影響、さらに経済制裁の効果について神庭さんに解説してもらいます。まずは、気になる日本企業への影響について教えてもらえますか?
神庭さん:まず直接的な戦火の影響として、ウクライナに拠点を持つ日本企業が工場の操業停止に追い込まれています。帝国データバンクによると、ウクライナに進出している日本企業は今年1月時点で57社。製造業が28社、卸売業が16社と合わせて8割を占めています。日本たばこ産業(JT)はウクライナ中部の工場で「キャメル」を生産していますが、2月24日に操業を止めました。トヨタは24日、現地のトヨタ社の販売会社の営業を停止しました。住友電気工業は西部にある自動車用ワイヤハーネスの工場を25日に止めています。他の国での代替生産も検討しているということで、日本企業にも影響が出ています。
ユージ:ロシアに対する経済制裁の動向について教えてください。
神庭さん:日本とアメリカはロシアに対して、半導体などハイテク製品の輸出規制をかけます。金融面ではアメリカはロシアの最大手の銀行ズベルバンク(日本で言ったら、ゆうちょ銀行のようなところ)や第2位のVTB銀行などを制裁の対象とし、日本はこの2行は外して、中堅の3行に国内資産を凍結する制裁を科す方針だったんですが、昨日大きな動きがありました。アメリカやヨーロッパは国際的な資金決済ネットワーク「SWIFT」から、ロシアの金融機関を締め出すことを決めて、日本もこれに賛同するということで追随しました。
吉田:このSWIFTとは、どんなものなんですか?
神庭さん:SWIFTは「国際銀行間通信協会」。各国の金融機関を結ぶ国際的なネットワークで、ベルギーに本部があります。SWIFTから除外されると国際送金ができなくなってしまうんですね。過去には、イランの金融機関が核開発問題でSWIFTから排除される制裁を受けていて、日経新聞によると、2012年の制裁ではGDPがマイナス7.4%に、2018年にはマイナス6%に下がって大きなダメージを受けました。その強力な効果から「切り札」「金融核兵器」とも呼ばれていて、ロシア経済に大きなダメージを与えることは必至とみられています。
ユージ:これ、制裁としては、効果はありそうですか?
神庭さん:かなり効果はあると思います。ただしその分、副作用も大きいんですね。ロシアはエネルギー大国で、天然ガスの輸出量は世界一。石油も世界2位。ヨーロッパで消費されるガスの4割をロシアが供給していて、特にドイツやイタリアは天然ガスの5割ほどをロシアに依存しています。ロシアがSWIFTから除外されれば、天然ガスを輸入している国々も決済で困るし、ロシアが報復でガスの供給を止める恐れもあります。そうした背景もあってドイツなどは当初、SWIFT排除に後ろ向きだったと報じられているんです。それでも、ロシアの横暴は看過できない、ということで国際社会が「返り血」覚悟で腹を括ったということなんですね。
吉田:最初に日本企業への影響について伺いましたが日本経済への影響というのはどうでしょうか。
神庭さん:ウクライナ侵攻が起きた2月24日の段階で、原油の先物価格は一時1バレル100ドルを超えました。これは7年7ヶ月ぶりの水準。ヨーロッパでの天然ガスの先物価格もこの日、前日から6割値上がりしてるんです。インフレで欧州経済が失速すれば、当然、日本の輸出産業もダメージを受けることになります。SWIFT排除など制裁が決まる前の段階でこの混乱ぶりなので、今後さらに資源高、インフレが加速する可能性があります。日本国内でも電気代、ガス代、ガソリン代の値上がりといった形で跳ね返ってくることが予想されます。
食卓にも影響が出そうで、原油価格が上がればナフサや、ポリプロピレンの価格も上がります。そうすると、パンやお菓子といった食品の包装資材の価格上昇につながります。
また、ロシア・ウクライナは穀倉地帯でもあり、小麦やトウモロコシの高騰が懸念されています。日本は主にアメリカやオーストラリアなどから仕入れていますが、これまでロシアやウクライナから輸入していた国々が調達先をスライドさせれば、相場は上昇する可能性があります。日本も間接的に小麦やトウモロコシの値上がりの影響を受ける可能性があるということです。
ユージ:ますます値上がり、インフレが進みそうですよね。他にも何か影響ありますか?
神庭さん:財務省の貿易統計によると、日本からロシアへの輸出額は8623億円で全体の約1%。輸入額は1兆5431億円で全体の1.8%。主要な貿易相手国というわけではないんです。ただ、ロシアへの制裁が強化されれば、ロシアに拠点を置いていたり、権益を持っている日本企業は大きく影響を受けるおそれがあります。帝国データバンクによると、ロシアに進出している日本企業は347社。2013年から比べると1.6倍に増えています。トヨタや日産などもロシアに工場を持っており、海外から半導体や部品を調達する際に制裁の対象にならないか懸念されています。三井物産や三菱商事といった日本の総合商社はロシアで液化天然ガス事業に参画して、伊藤忠も石油の生産をしていますから、毎日新聞は、SWIFT排除の影響について日本貿易会の会長で、三菱商事の会長でもる小林健氏の「ロシア産の資源を輸出する際の決済手段がなくなる可能性もある」というコメントを紹介しています。
遠いウクライナの地の戦争ではありますが、経済の波及効果は日本にも及ぶということで、戦乱や制裁の影響を注視していく必要があると思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 28, 2022
テーマは、
ロシアのウクライナ侵攻、経済への影響は?について。
現在停戦交渉に合意したと言う報道もされていますが、
まだ終わったわけではないということで、
日本への影響もあるのかというお話をしました。
僕がまず第一に思ったのが、石油です。
ロシアは天然ガスの輸出量が1位、
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 28, 2022
石油も2位というエネルギー大国。
今回の件で各国が経済制裁を加えたとき、
さらにはロシア側がエネルギー資源の輸出をストップしたときに、大きな影響が日本にも及ぶことは間違いありません。
他にも、ロシアに進出している日本の企業が347社もあり、こちらも制裁により何らかの影響を受けることは間違いありません。さらには小麦などが制限により輸出入できなくなるようなことがあれば、日本も間接的な値上がりの影響を受ける可能性があります。
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 28, 2022
これから停戦に向けての話し合いが行われますが、
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 28, 2022
もし停戦にならず続いていくようなことがあれば、
日本が受ける影響は小さくないものになるかもしれません。https://t.co/uSidy4EQXK