ジブラルタ生命 Heart to Heart ありがとう、先生！ アナザーストーリー

2014年10月19日のショートストーリー

「『いい加減』ではなく、『いい、加減』でね。」

[ストーリー]

「えっ！私ですか？」

上司から新入社員の教育係を命じられ
私は思わず大きな声を出してしまった。

ちょうど５年前。
私は吹奏楽部のキャプテンになった。
いわゆる伝統校と呼ばれる名門。
そのプレッシャーに負けないようにと必死だった。
ふざけて練習している仲間を怒鳴りつけ、
たとえ一分の遅刻も許さなかった。
でも、厳しく接すれば接するほど
部員たちとの距離は遠く離れていった。

一人ぼっちの帰り道。

偶然通りかかった顧問の先生が、こんな言葉をかけてくれた。

「いい加減」ではなく、「いい、加減」でね。

普段、ほとんど練習に顔を出さないくせに
大事な時には何食わぬ顔をして現れて、場を和ませてくれる先生だった。
今思えば、あれも偶然じゃなかったのかもしれない。

この言葉が独りよがりな自分を変えてくれた。

今ならきっと大丈夫。
私は新入社員が待つ会議室へ、ゆっくりと歩き出した。

愛知県「GON」さんの先生の忘れられないコトバでした。
脚本・杉山錠士

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