フリースタイルスキー・モーグル元選手 上村愛子さんと「雪」の話
- 2023/01/15
上村愛子さんをお迎えして
宇賀「薫堂さん、先週は急遽、サッカー日本代表の吉田麻也選手が来てくださいましたけども、今週はフリースタイルスキー・モーグルの選手として5度に渡って冬季オリンピックに出場された、上村愛子さんをお迎えしました。上村さんは2014年に引退されたということなんですけれど、今でも滑ってらっしゃるんですか?」
上村「はい、滑ってます」
小山「やっぱり雪が降るとワクワクするんですか?」
上村「そうですね、選手を引退したあとも冬になって雪が降って、その雪景色を見ると『飛び込みたい』という気持ちが湧いてきて、スキーしています」
宇賀「ちょうど1年前に冬季オリンピックがありましたが、どうご覧になっていましたか?」
上村「私が引退して2大会オリンピックがあって、どんどん選手の人たちの精神的な部分も進化しているし、技術に対するアプローチの仕方というのも、昔はもっと遠回りしていたなと思うことがすごく多くて。今の選手たちを見ていると早くに自分なりの答えとかを見つけながらやっている選手が多いような気がしていて。若いのに強いなとか、すごくコメントがしっかりされているなとか、感心することと、すごくワクワクさせてくれるところを両方感じながら観戦していました」
小山「練習方法は変わってきているんですか?」
上村「モーグルの競技でいうと、昔はジャッジの人の採点方式も年々ルールが変わったりとか、ジャンプの種類がどんどん増えていったりとか、あまり指標になるものが少なかったんですね。自分たちで『これでいけるんじゃないか』というのを探りながら、毎年毎年採点してもらって、答え合わせをしていくというのがずっと続いていたんですけど。バンクーバー、ソチあたりからは、『モーグルで一番いい滑りはこれですよ』というのがすごくわかりやすくなって。1つ、答え合わせがちゃんと出ているのかなという気はします」
小山「審査にもトレンドがあったということなんですか?」
上村「そうです。昔はトレンドがあって、毎年変わっていく」
小山「えっ、じゃあやりにくいですよね」
上村「すごくやりにくかったですね。勝てると思っていつも準備をするんですけど、シーズンが明けて蓋を開けてみると、『私、選ばれない側だな』ということもありましたし」
小山「こういうジャンプは最近は評価されないんだ、とか」
上村「そうです。1年前は自分の滑りがすごく評価されていたのが、次の年には……自分の評価は変わらないのかもしれないんですけど、他の技術もすごく評価されるようになって。武器が薄れてしまうというか。でもそれがまた、『今回こう変わったのか。じゃあ来年、私はまたそこに向けて頑張ろう』と、とにかくポジティブに捉えればチャレンジすることのオンパレードだったので、楽しみながら悔しい思いもしながら続けていましたね」
宇賀「相当プレッシャーもあるでしょうし、そういう時に何が支えになっていたというか、エネルギーになっていたんですか?」
上村「やっぱり応援してもらえる選手であることが、すごく私は奇跡的なことだなと思っていて。『頑張れ』と言うことがプレッシャーになるんじゃないかと気を遣っていただいたりとか、そういう声をいただくことが多かったんですけど。でも、私の中では応援してもらえない選手よりも、やっぱり応援してもらえる選手でいれる方が、背中を押してもらえる機会はすごく多いですし。もちろん、メダルを目指してやっていきたいという気持ちがまず第一にあるんですけど、苦しくなる時とか、(メダルを)獲れるかなあとか心配になる時に、やっぱり皆さんの応援とか、期待してもらえているというそのこと自体が背中をポンと押してくれていたと思うので。私はやっぱり、自分の滑りとか結果を楽しみにしてくださる方、皆さんの気持ちがすごくパワーになっていたなと思います」
宇賀「上村さんは現在、様々なスポーツ解説であったりとか、ご活躍されていますけれども、環境問題改善の社会活動もされているんですね。そんな環境問題に関する絵本『ゆきゆきだいすき』が、出版されました」
小山「僕、ずっと勘違いをしていて。上村さんは文章を書かれたかと思ったら、絵を描かれたんですね!」
上村「作画なんです」
小山「すごくかわいいですよね」
宇賀「かわいいですよね!」
小山「物語の最後には、『あいこちゃんのなんでなんで?』というコラムみたいなものがあって、『なんで冬になると寒くなるの?』とか『なんで冬になると雪が降るの?』とか、ちゃんとお勉強もできるような本になっていますからね」
上村「そこはすごくこだわって作りましたね」
宇賀「雪はやっぱり減ってきているんですよね」
上村「全体的に見ると氷河が小さくなっているとか、雪の降り方が変わっているとすごく言われていて。日本は日本海に囲まれていて、水蒸気が島の上に集まりやすい場所で、シベリアからの冷たい空気が流れてくるので、雪が降りやすい国らしいんですね。日本で雪が降らなくなったら世界中で降らなくなるんじゃないかと、そういう話が出てきているということを聞いて。日本は冬になれば雪が降る場所があって、大雪で生活が困る方もいらっしゃったりとか、そんなにポジティブな印象ばかりじゃないんですけど、世界中で見た時に雪が降ってくれる土地はそんなにあるわけじゃなくて。雪が降るという意味ではすごく恵まれている場所なんだなというのは、絵本を作りながら私たちも学んで。そういったことも知識として入れながら、皆さんにお伝えしていけるといいなと考えています」
小山「日本の雪質はやっぱりいいんですか?」
上村「いいというのもありますし、北米、ヨーロッパでもたくさん雪がある場所とか、スキー場はあるんですけど、いろんな雪質をこの距離感で楽しめるのは日本だけかもしれないですね。アメリカ、カナダも東側、西側に行くと全然雪質は変わるんですけど、かなりの距離を移動しないといろんな雪が楽しめないんですけど。日本の場合は海外の人から見ると、『こんな移動距離でこんなにたくさんの雪が楽しめるなんて』というので、すごく皆さん注目されているみたいです」
宇賀「絵本の中にもあるように、冬には雪が降って、雪と一緒に子どもたちが遊べるような生活が守られていくといいですよね」
上村「自分が生きている間はきっと雪は見れるんだろうなとは思っているんですね。次の世代も、雪質はかなり変わってしまったりとか、雪の降る期間も変わってくると思うんですけど、雪が見られなくなるということはまだないのかなと思っていて。でもこのままいくと、いつかは雪が降らなくなるような時期が待っているかもしれないと思うと、雪景色を見たいというのももちろんあるんですけど、地球のバランスを考えても人間は生きるのがすごく大変な環境になると思うので。やっぱり楽しみだけじゃなくて、雪が降るという地球のバランスが守られていくといいなと思います」
宇賀「この番組は手紙をテーマにしていますが今日は『今、お手紙を書きたい人』に宛てたお手紙を書いて来てくださっているんですよね。どなたに宛てたお手紙ですか?」
上村「人間じゃなくてですね、ちょっとベタなんですけど、スキーの神様にお手紙を書いてみました。この機会に改めてスキーの神様に、自分のスキーのことを話してみようと」
上村さんのお手紙の朗読は、ぜひ、radikoでお聞きください(1月22日まで聴取可能)。
宇賀「今日の放送を聞いて、上村さんにお手紙を書きたい、と思ってくださった方は、ぜひ番組にお寄せください。ご本人に責任をもってお渡しいたします。
【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 上村愛子さん宛】にお願いします。応募期間は1ヶ月とさせていただきます」
上村愛子さん、ありがとうございました!
上村さんが絵を描かれた絵本『ゆきゆきだいすき』もぜひチェックしてみてください。
『ゆきゆきだいすき(小学館)』絵/上村愛子 作/八尾良太郎
上村「そうですね、選手を引退したあとも冬になって雪が降って、その雪景色を見ると『飛び込みたい』という気持ちが湧いてきて、スキーしています」
宇賀「ちょうど1年前に冬季オリンピックがありましたが、どうご覧になっていましたか?」
上村「私が引退して2大会オリンピックがあって、どんどん選手の人たちの精神的な部分も進化しているし、技術に対するアプローチの仕方というのも、昔はもっと遠回りしていたなと思うことがすごく多くて。今の選手たちを見ていると早くに自分なりの答えとかを見つけながらやっている選手が多いような気がしていて。若いのに強いなとか、すごくコメントがしっかりされているなとか、感心することと、すごくワクワクさせてくれるところを両方感じながら観戦していました」
小山「練習方法は変わってきているんですか?」
上村「モーグルの競技でいうと、昔はジャッジの人の採点方式も年々ルールが変わったりとか、ジャンプの種類がどんどん増えていったりとか、あまり指標になるものが少なかったんですね。自分たちで『これでいけるんじゃないか』というのを探りながら、毎年毎年採点してもらって、答え合わせをしていくというのがずっと続いていたんですけど。バンクーバー、ソチあたりからは、『モーグルで一番いい滑りはこれですよ』というのがすごくわかりやすくなって。1つ、答え合わせがちゃんと出ているのかなという気はします」
小山「審査にもトレンドがあったということなんですか?」
上村「そうです。昔はトレンドがあって、毎年変わっていく」
小山「えっ、じゃあやりにくいですよね」
上村「すごくやりにくかったですね。勝てると思っていつも準備をするんですけど、シーズンが明けて蓋を開けてみると、『私、選ばれない側だな』ということもありましたし」
小山「こういうジャンプは最近は評価されないんだ、とか」
上村「そうです。1年前は自分の滑りがすごく評価されていたのが、次の年には……自分の評価は変わらないのかもしれないんですけど、他の技術もすごく評価されるようになって。武器が薄れてしまうというか。でもそれがまた、『今回こう変わったのか。じゃあ来年、私はまたそこに向けて頑張ろう』と、とにかくポジティブに捉えればチャレンジすることのオンパレードだったので、楽しみながら悔しい思いもしながら続けていましたね」
宇賀「相当プレッシャーもあるでしょうし、そういう時に何が支えになっていたというか、エネルギーになっていたんですか?」
上村「やっぱり応援してもらえる選手であることが、すごく私は奇跡的なことだなと思っていて。『頑張れ』と言うことがプレッシャーになるんじゃないかと気を遣っていただいたりとか、そういう声をいただくことが多かったんですけど。でも、私の中では応援してもらえない選手よりも、やっぱり応援してもらえる選手でいれる方が、背中を押してもらえる機会はすごく多いですし。もちろん、メダルを目指してやっていきたいという気持ちがまず第一にあるんですけど、苦しくなる時とか、(メダルを)獲れるかなあとか心配になる時に、やっぱり皆さんの応援とか、期待してもらえているというそのこと自体が背中をポンと押してくれていたと思うので。私はやっぱり、自分の滑りとか結果を楽しみにしてくださる方、皆さんの気持ちがすごくパワーになっていたなと思います」
宇賀「上村さんは現在、様々なスポーツ解説であったりとか、ご活躍されていますけれども、環境問題改善の社会活動もされているんですね。そんな環境問題に関する絵本『ゆきゆきだいすき』が、出版されました」
小山「僕、ずっと勘違いをしていて。上村さんは文章を書かれたかと思ったら、絵を描かれたんですね!」
上村「作画なんです」
小山「すごくかわいいですよね」
宇賀「かわいいですよね!」
小山「物語の最後には、『あいこちゃんのなんでなんで?』というコラムみたいなものがあって、『なんで冬になると寒くなるの?』とか『なんで冬になると雪が降るの?』とか、ちゃんとお勉強もできるような本になっていますからね」
上村「そこはすごくこだわって作りましたね」
宇賀「雪はやっぱり減ってきているんですよね」
上村「全体的に見ると氷河が小さくなっているとか、雪の降り方が変わっているとすごく言われていて。日本は日本海に囲まれていて、水蒸気が島の上に集まりやすい場所で、シベリアからの冷たい空気が流れてくるので、雪が降りやすい国らしいんですね。日本で雪が降らなくなったら世界中で降らなくなるんじゃないかと、そういう話が出てきているということを聞いて。日本は冬になれば雪が降る場所があって、大雪で生活が困る方もいらっしゃったりとか、そんなにポジティブな印象ばかりじゃないんですけど、世界中で見た時に雪が降ってくれる土地はそんなにあるわけじゃなくて。雪が降るという意味ではすごく恵まれている場所なんだなというのは、絵本を作りながら私たちも学んで。そういったことも知識として入れながら、皆さんにお伝えしていけるといいなと考えています」
小山「日本の雪質はやっぱりいいんですか?」
上村「いいというのもありますし、北米、ヨーロッパでもたくさん雪がある場所とか、スキー場はあるんですけど、いろんな雪質をこの距離感で楽しめるのは日本だけかもしれないですね。アメリカ、カナダも東側、西側に行くと全然雪質は変わるんですけど、かなりの距離を移動しないといろんな雪が楽しめないんですけど。日本の場合は海外の人から見ると、『こんな移動距離でこんなにたくさんの雪が楽しめるなんて』というので、すごく皆さん注目されているみたいです」
宇賀「絵本の中にもあるように、冬には雪が降って、雪と一緒に子どもたちが遊べるような生活が守られていくといいですよね」
上村「自分が生きている間はきっと雪は見れるんだろうなとは思っているんですね。次の世代も、雪質はかなり変わってしまったりとか、雪の降る期間も変わってくると思うんですけど、雪が見られなくなるということはまだないのかなと思っていて。でもこのままいくと、いつかは雪が降らなくなるような時期が待っているかもしれないと思うと、雪景色を見たいというのももちろんあるんですけど、地球のバランスを考えても人間は生きるのがすごく大変な環境になると思うので。やっぱり楽しみだけじゃなくて、雪が降るという地球のバランスが守られていくといいなと思います」
宇賀「この番組は手紙をテーマにしていますが今日は『今、お手紙を書きたい人』に宛てたお手紙を書いて来てくださっているんですよね。どなたに宛てたお手紙ですか?」
上村「人間じゃなくてですね、ちょっとベタなんですけど、スキーの神様にお手紙を書いてみました。この機会に改めてスキーの神様に、自分のスキーのことを話してみようと」
上村さんのお手紙の朗読は、ぜひ、radikoでお聞きください(1月22日まで聴取可能)。
宇賀「今日の放送を聞いて、上村さんにお手紙を書きたい、と思ってくださった方は、ぜひ番組にお寄せください。ご本人に責任をもってお渡しいたします。
【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 上村愛子さん宛】にお願いします。応募期間は1ヶ月とさせていただきます」
上村愛子さん、ありがとうございました!
上村さんが絵を描かれた絵本『ゆきゆきだいすき』もぜひチェックしてみてください。
『ゆきゆきだいすき(小学館)』絵/上村愛子 作/八尾良太郎
皆さんからのお手紙、お待ちしています
毎週、お手紙をご紹介した方の中から抽選で1名様に、大分県豊後高田市の「ワンチャー」が制作してくださったSUNDAY’S POSTオリジナル万年筆をプレゼントします。引き続き、皆さんからのお手紙、お待ちしています。日常のささやかな出来事、薫堂さんと宇賀さんに伝えたいこと、大切にしたい人や場所のことなど、何でもOKです。宛先は、【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST】までお願いします。
今週の後クレ
今回のメッセージは、愛知県〈名古屋港郵便局〉福元洸介さんでした!「名古屋港郵便局は海の近くにあり、ロケーションが本当に良く、景色を見ると心が洗われます。 今までもらって嬉しかった手紙は、20歳くらいの頃、足の骨を折って入院していた時に、入院先のおばあちゃんから、自分と亡くなったお孫さんが非常に似ているということでいただいたラブレターです。五・七・五で俳句が書いてあって、非常に嬉しかったです。郵便局に入っていなかったら、きっとこの思い出も自分の中で風化していたと思うのですが、今となっては働く原動力になるエピソードです。」
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