東京23区唯一の酒蔵「東京港醸造」とは?
- 2022/03/20
『東京港醸造』代表の寺澤善実さんをお迎えして
今回は、東京23区で唯一の酒蔵である「東京港醸造」代表・寺澤善実さんをお迎えしました。
宇賀「東京港醸造は、酒蔵のプロデュースやお酒のプロデュースなどをされている会社ということですが、現在は東京の港区芝で東京23区唯一の酒蔵をお持ちで、酒造メーカー『若松屋』のお酒を造っていらっしゃいます」
小山「普通、酒蔵というと水がおいしいところにあって自然が豊かな場所にありますけど、東京のほぼど真ん中ですよね。いいことは流通がしやすいのかな、くらいしか思い浮かばないんですけど、実際はどうなんですか?」
寺澤「よく聞かれるんですけど、ビルの間というのは光が直接当たらないんです。酒蔵というのは窓が小さくて白壁で、あれは何かと言ったら直射日光とか温度管理のためにああいうかたちに作っているんですね。ビルで光が直接当たらないというのは、温度管理がしやすいんです。それとお水なんですけど、お水は高度浄水処理という処理方法を平成25年に(東京)23区全部に網羅されているんです。このお水が本当に良くて、ミネラルウォーターと変わらないくらいのおいしいお水がどんどん供給されているんです」
小山「東京の水道水はそんなにおいしいんですか?」
寺澤「ぜひ一度、ご自宅に帰られて浄水器を通らないものを口にしていただいて、比べていただければ、変わらないというのがわかると思います」
宇賀「あえて東京でやっていらっしゃるということなんですか?」
寺澤「そうですね。流通というところが(負担が)小さくなるのと、消費地がまわりにあるので経費が抑えられたり。仮に、敷地がどんどん広がって、温かい麹を作るエリア、発酵するエリアを横に並べると、扉を開けた瞬間全部一体化するので温度管理がしにくいんです。温度管理を考えた時に、上の方に温かい麹ものや蒸す作業、下の方に発酵室を持っていくと、わざわざ扉を作らなくても温度管理がしやすいんです」
宇賀「なるほど!」
小山「理にかなっていますね。そもそも、最大の消費地である場所で酒造りをしているわけですから、輸送に関するコストは抑えられるし環境にもいいですよね。昔はたくさんあったんですか?」
寺澤「明治24年の文献なんですけど、23区の中に64社の酒蔵があったんです。やっぱり江戸時代に参勤交代でいろいろなお侍さんが来て、江戸の町はすごくお酒を飲む文化だったんですね。その時は上方というと灘であったり、伏見であったり、池田であったりというところでは船に乗っけてこちらに持ってきて、贅沢をする時には上方の酒、日頃は周りの酒ということで、酒質がどうしても東京で造る時においては差が出ていたんです」
宇賀「でも減ってきてしまったのは、どうしてなんですか?」
寺澤「日清、日露、第一次世界大戦に入ってしまうんですけど、戦費があの頃は酒税だったんですね。どんどん酒税が上がることで経営が成り立たなくなって。当然今と同じように地価も高いので他業種に変わる方がよかったんですよね。若松屋という屋号でやっていたんですけど、明治42年に廃業されたんです」
小山「そのご子息がまた復活させたんですね。今は広さはどのくらいなんですか?」
寺澤「117平米ですね。4階建ですべて合わせて」
宇賀「それで作れるんですね」
東京港醸造の日本酒も試飲しました。
宇賀「見た目がおしゃれじゃないですか? ぱっと見、日本酒っぽくなくてワインボトルみたいですね」
小山「普通は四合瓶ですけど、これは375(ml)くらいですか?」
寺澤「これは290mlです」
宇賀「でもちょうどいいですね、なかなか四合瓶を飲み切ることがない方もね、私は飲みますけど(笑)。お持ちいただいたのは、〈All Tokyo〉〈All Edo〉〈江戸開城〉。それぞれどんなお酒ですか?」
寺澤「〈All Edo〉は明治31年に単独純粋培養された本当に古い酵母なんです。造ってみると、丸いお酒ができて。香りが今流行りのりんごとかバナナの香りがするとか、そういうものじゃないんですけど、食中酒としてはバランスのいい味になりました」
小山「“Edo”とついているのはなぜなんですか?」
寺澤「江戸酵母と言われているんです。あとは多摩地区の東京のお米、東京の水道水ですべてが東京なので、〈All Edo〉に」
宇賀「おいしい! いわゆる甘くて香り高いという感じではなくて、ちゃんとお酒の味がしてお食事に合いそうな。私、好きです」
小山「僕も好きです。流行りの感じじゃないのがいいですね」
宇賀「東京のお米、お水で造っているってびっくりします」
小山「お米はどんな?」
寺澤「東京の酒米で、“その他の酒米”という表記なんです。何でかというと、いろんな品種を混ぜないと必要な量が確保できないから」
小山「なんかかっこいいですね。ブランドをひけらかすことなく、しかも水道水でやっておいしいというのは。ちょっと〈All Tokyo〉も飲んでみましょう」
寺澤「こちらは東京酵母という酵母です。2018年に蒲田の東京バイオテクノロジーという専門学校で、産学連携という、産業と学校で一緒にものを作りましょうという取り組みの中で始めて、やっと3年間かけてお酒になったという酵母なんです。日比谷公園のハチのお尻についていた酵母なんです」
小山「どこかに小さくハチのマークを入れてもかわいいですね」
宇賀「さっきのと比べるとちょっと酸味があっておいしい」
寺澤「原料は同じなんです。酵母の違いです」
宇賀「購入したいという人は、どうするといいですか?」
寺澤「東京港醸造のホームページで買っていただくか、地酒専門店さんで手に取っていただきたいですね」
宇賀「この番組はお手紙をテーマにお送りしているのですが、これまで書いたり、受け取ったりした中で印象に残っているお手紙はありますか?」
寺澤「その当時は返事を返せなかったんですけど、私が就職した頃に月に1回ずつ親父から手紙がくるんです。やっぱり若気の至りで返信しなかったんですよ」
宇賀「どんなことが書いてあったんですか?」
寺澤「エールですね。頑張れっていう」
宇賀「今日は、『いま手紙を書きたい人』に宛てたお手紙を書いていただいているんですよね。どなたに宛てたお手紙ですか?」
寺澤「過去の、幼い私に」
寺澤さんにはお手紙の朗読をしていただきました。ぜひradikoでお聴きください(3月27日まで聴取可能)。
宇賀「今回の放送を聞いて、寺澤さんへお手紙を書きたい、と思った方もいらっしゃると思います。ぜひ番組にお寄せください。責任を持って、ご本人にお渡しいたします。【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 寺澤善実さん宛】にお願いします。
「東京港醸造」代表の寺澤善実さん、ありがとうございました!
東京港醸造
東京港醸造オンラインショップ
小山「普通、酒蔵というと水がおいしいところにあって自然が豊かな場所にありますけど、東京のほぼど真ん中ですよね。いいことは流通がしやすいのかな、くらいしか思い浮かばないんですけど、実際はどうなんですか?」
寺澤「よく聞かれるんですけど、ビルの間というのは光が直接当たらないんです。酒蔵というのは窓が小さくて白壁で、あれは何かと言ったら直射日光とか温度管理のためにああいうかたちに作っているんですね。ビルで光が直接当たらないというのは、温度管理がしやすいんです。それとお水なんですけど、お水は高度浄水処理という処理方法を平成25年に(東京)23区全部に網羅されているんです。このお水が本当に良くて、ミネラルウォーターと変わらないくらいのおいしいお水がどんどん供給されているんです」
小山「東京の水道水はそんなにおいしいんですか?」
寺澤「ぜひ一度、ご自宅に帰られて浄水器を通らないものを口にしていただいて、比べていただければ、変わらないというのがわかると思います」
宇賀「あえて東京でやっていらっしゃるということなんですか?」
寺澤「そうですね。流通というところが(負担が)小さくなるのと、消費地がまわりにあるので経費が抑えられたり。仮に、敷地がどんどん広がって、温かい麹を作るエリア、発酵するエリアを横に並べると、扉を開けた瞬間全部一体化するので温度管理がしにくいんです。温度管理を考えた時に、上の方に温かい麹ものや蒸す作業、下の方に発酵室を持っていくと、わざわざ扉を作らなくても温度管理がしやすいんです」
宇賀「なるほど!」
小山「理にかなっていますね。そもそも、最大の消費地である場所で酒造りをしているわけですから、輸送に関するコストは抑えられるし環境にもいいですよね。昔はたくさんあったんですか?」
寺澤「明治24年の文献なんですけど、23区の中に64社の酒蔵があったんです。やっぱり江戸時代に参勤交代でいろいろなお侍さんが来て、江戸の町はすごくお酒を飲む文化だったんですね。その時は上方というと灘であったり、伏見であったり、池田であったりというところでは船に乗っけてこちらに持ってきて、贅沢をする時には上方の酒、日頃は周りの酒ということで、酒質がどうしても東京で造る時においては差が出ていたんです」
宇賀「でも減ってきてしまったのは、どうしてなんですか?」
寺澤「日清、日露、第一次世界大戦に入ってしまうんですけど、戦費があの頃は酒税だったんですね。どんどん酒税が上がることで経営が成り立たなくなって。当然今と同じように地価も高いので他業種に変わる方がよかったんですよね。若松屋という屋号でやっていたんですけど、明治42年に廃業されたんです」
小山「そのご子息がまた復活させたんですね。今は広さはどのくらいなんですか?」
寺澤「117平米ですね。4階建ですべて合わせて」
宇賀「それで作れるんですね」
東京港醸造の日本酒も試飲しました。
宇賀「見た目がおしゃれじゃないですか? ぱっと見、日本酒っぽくなくてワインボトルみたいですね」
小山「普通は四合瓶ですけど、これは375(ml)くらいですか?」
寺澤「これは290mlです」
宇賀「でもちょうどいいですね、なかなか四合瓶を飲み切ることがない方もね、私は飲みますけど(笑)。お持ちいただいたのは、〈All Tokyo〉〈All Edo〉〈江戸開城〉。それぞれどんなお酒ですか?」
寺澤「〈All Edo〉は明治31年に単独純粋培養された本当に古い酵母なんです。造ってみると、丸いお酒ができて。香りが今流行りのりんごとかバナナの香りがするとか、そういうものじゃないんですけど、食中酒としてはバランスのいい味になりました」
小山「“Edo”とついているのはなぜなんですか?」
寺澤「江戸酵母と言われているんです。あとは多摩地区の東京のお米、東京の水道水ですべてが東京なので、〈All Edo〉に」
宇賀「おいしい! いわゆる甘くて香り高いという感じではなくて、ちゃんとお酒の味がしてお食事に合いそうな。私、好きです」
小山「僕も好きです。流行りの感じじゃないのがいいですね」
宇賀「東京のお米、お水で造っているってびっくりします」
小山「お米はどんな?」
寺澤「東京の酒米で、“その他の酒米”という表記なんです。何でかというと、いろんな品種を混ぜないと必要な量が確保できないから」
小山「なんかかっこいいですね。ブランドをひけらかすことなく、しかも水道水でやっておいしいというのは。ちょっと〈All Tokyo〉も飲んでみましょう」
寺澤「こちらは東京酵母という酵母です。2018年に蒲田の東京バイオテクノロジーという専門学校で、産学連携という、産業と学校で一緒にものを作りましょうという取り組みの中で始めて、やっと3年間かけてお酒になったという酵母なんです。日比谷公園のハチのお尻についていた酵母なんです」
小山「どこかに小さくハチのマークを入れてもかわいいですね」
宇賀「さっきのと比べるとちょっと酸味があっておいしい」
寺澤「原料は同じなんです。酵母の違いです」
宇賀「購入したいという人は、どうするといいですか?」
寺澤「東京港醸造のホームページで買っていただくか、地酒専門店さんで手に取っていただきたいですね」
宇賀「この番組はお手紙をテーマにお送りしているのですが、これまで書いたり、受け取ったりした中で印象に残っているお手紙はありますか?」
寺澤「その当時は返事を返せなかったんですけど、私が就職した頃に月に1回ずつ親父から手紙がくるんです。やっぱり若気の至りで返信しなかったんですよ」
宇賀「どんなことが書いてあったんですか?」
寺澤「エールですね。頑張れっていう」
宇賀「今日は、『いま手紙を書きたい人』に宛てたお手紙を書いていただいているんですよね。どなたに宛てたお手紙ですか?」
寺澤「過去の、幼い私に」
寺澤さんにはお手紙の朗読をしていただきました。ぜひradikoでお聴きください(3月27日まで聴取可能)。
宇賀「今回の放送を聞いて、寺澤さんへお手紙を書きたい、と思った方もいらっしゃると思います。ぜひ番組にお寄せください。責任を持って、ご本人にお渡しいたします。【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 寺澤善実さん宛】にお願いします。
「東京港醸造」代表の寺澤善実さん、ありがとうございました!
東京港醸造
東京港醸造オンラインショップ
#手紙にしよう
様々なポストカードを無料でダウンロードできる「#手紙にしよう」では、桜の開花に合わせたポストカード「桜の花束のデザイン」と「桜の花束のデザイン」の2種類が更新されています。お手紙を受け取った人が、桜のイラスト部分を切り取ることで、ポストカード越しに春を探して楽しむことができるデザインになっています。イラストレーターのソリマチアキラさんに担当していただきました。郵便局通販サイトにて発売中のソメイヨシノの63円切手と合わせて、思わず春を探しに出かけたくなるお手紙をお楽しみください。「#手紙にしよう」
ぽすくまのお気に入りグッズ プレゼントのお知らせ
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ぽすくまのおきにいり グッズ特集
いつも番組を聴いてくださっているリスナーの方5名に、ぽすくまのお気に入りグッズの詰め合わせをプレゼントします! 番組の感想や、ぽすくまの好きなところを書いて、お手紙でご応募ください。【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POSTぽすくまのお気に入りグッズ プレゼント係】までお願いします。しめきりは3月31日消印有効となります。ご応募、お待ちしています!
今週の後クレ
今回のメッセージは、神奈川県〈田浦郵便局〉石渡弘幸さんでした!「10年ほど前、郵便物をお届けに伺った際、お客さまが玄関前で待っていて、郵便物をお渡ししたところ、『ずっと音信不通の息子から手紙が来た』と今にも泣きそうなご様子で喜ばれていたことが鮮明に記憶に残っています。 その後も、そのお客さまのところへ配達に伺った際にお会いする機会があり、その音信不通だった息子さんが帰っていらしたというお話をニコニコしながら話してくれました。電話で話すとちょっと恥ずかしいことを、実際に紙で書いて伝えられる手紙は、気持ちがとても伝わるということを感じました。」
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