絵本作家になる方法は? 画家・絵本作家の井上奈奈さんが登場
- 2022/02/20
画家・絵本作家の井上奈奈さんをお迎えして
宇賀「今年の年賀状企画では、みなさんの“今年の目標”を募集したのですが、結構いらっしゃったのが『絵本作家になりたい』『児童図書をつくりたい』という目標だったんです」小山「へー!」
宇賀「そんなわけで、今回は絵本をつくるワークショップをされている画家で絵本作家の井上奈奈さんをお迎えしてお話をうかがいます」
井上奈奈さんは16歳の時単身でアメリカに留学、アートを学びます。武蔵野美術大学を卒業後は、NYや上海など国内外でのギャラリーやアートフェアで作品を発表し続けていらっしゃいます。絵本も精力的に発表されていて、2016年の作品『くままでのおさらい』は、ドイツで開催された「世界で最も美しい本コンクール」で銀賞を受賞しました。
小山「『くままでのおさらい』は、森の中のくまさんがお皿を1枚持っているところから始まるんですね。これは全部版画ですか?」
井上「紙版画を使っています」
宇賀「どういう時にこの物語が浮かんできたんですか?」
井上「日常的に何かを食べる行為はみんなしますよね。昨日まで生きていた豚さんがいまは自分の中にいて、他者と自分との境目を、常に問いている自分がいたんですね。この物語というのは、うさぎさんとかくじらさんとか、いろいろな動物を食べて、その動物に成り代わったかたちで物語が進んでいくんですね。これは“他者の感情すらも自分の中に入れてしまう境目”がテーマになった物語です」
小山「哲学的ですね。はじまりは子ども用ですけど、大人もいろいろ考えるきっかけになる絵本ですね」
宇賀「先ほどもお話ししたのですが、絵本作家になりたい、絵を描きたい、本をつくりたいという方が結構いらっしゃって。井上さんはワークショップもされているんですよね。今日はぜひ、どうしたら絵本がつくれるのかをうかがっていきたいと思います。普段はどういうふうに教えていらっしゃるんですか?」
井上「いまやっているのは全6回で1冊の本をつくります。だいたい2週間に1回開催していて、3ヶ月かけて物語をゼロの状態から製本の状態までをして、最後は展示をするところまでを1セットにしています」
小山「まずは物語をつくるのが難しくないですか?」
井上「そうですね。みなさんやっぱりそこでいちばん時間を取られるんですけども、やっぱり絵本をつくりたい方は、少し掘り下げると『何でつくりたいのか?』というのがきっちりあるんですね。それさえ見つかれば、自然に物語になっていきます」
小山「それを井上さんが導き出すんですか?」
井上「そうですね、対話からまず始めます」
小山「試しに我々に問いかけてもらってもいいですか?」
井上「何で絵本をつくろうと思われたんですか? 誰に向けて、とか」
宇賀「子どもたちに読んでほしいですね。やっぱりこの1、2年、外で遊びたくても遊べなかったり、学校の行事がなくなってしまっている子達が多いので、そういう子が元気になるような本がつくりたいです」
井上「元気になるためには何が必要ですか?」
宇賀「夢を見ること?」
井上「じゃあ、夢を題材にしてもいいかもしれませんね……という感じで、もっともっともっと深掘りしていきます」
小山「なるほど。でも、絵は絵心がある人はいいですけど、僕なんかはまったくないので、どうすればいいですか?」
井上「ワークショップでは物語を書けない人も参加してください、と言っていますし、絵をまったく描けない方も参加してください、というかたちで伝えているんですね。抽象絵画で進められる方もいらっしゃいますし、切り絵で進められる方も、写真の方もいらっしゃいます。(書店の)絵本のコーナーに行って絵本を見るとわかるのですが、決して上手く描く必要ってないんですね。味のある絵だとか、本当に自由なので。描けないんじゃなくて、描いてください、って言っています」
小山「3ヶ月に及ぶワークショップで宿題がそれぞれ出るんですか?」
井上「宿題でいっぱいですね」
小山「最後は完成して、それをみんなで読み合うんですか?」
井上「六本木にある書店さんの『文喫』というところで完成した絵本の展示をやっているのですが、初めてプレゼンイベントをやりました。それぞれ自分が作った本を朗読して、どんなコンセプトで作ったのかを届けることをやりました。蔵前のワークショップでは、毎回2週間、原画とかを展示する機会を与えてみなさんに作家デビューをしてもらっています。いままで50作品くらいはあるかと」
小山「その中で井上さんが好きな、印象に残っているのはどんな作品ですか?」
井上「コウモリが主人公のお話で、そのコウモリが神様から『君はどっちの世界を選ぶ?』と問われるんですね。天国に行きたいか、地獄に行きたいか、いろいろな問いがあって。そのコウモリさんは毎回選べないんですよ。天国も面白そうだし、地獄も面白そうだなというかたちで。選べないかたちで物語がどんどん進んでいって、最後は意外と幸せな感じで終わるお話があって。それが私は気に入っていますね。『BAT,BUT,BAD?』というお話です」
宇賀「面白いですね!」
井上「この方も絵が描けないという方だったので、折り紙とちぎり絵みたいなかたちで表現されています」
井上さんの絵本のワークショップにまつわるお話。ぜひ、放送でもお楽しみください(radikoで2月27日まで聴取可能)。
宇賀「井上さんの最新図書『星に絵本を繋ぐ』では絵本のワークショップについて書かれているんですよね」
井上「3章仕立てになっていて、1章が作品集で私がこれまでつくってきた絵本たちを紹介していただいています。2章では、私が絵本をつくるときにどんな風につくっていくかについて綴っています。3章で絵本創作ワークショップがどんなふうに進んでいくか、いままでの作家さんの作品とともに紹介しています」
宇賀「番組でも『旅する絵本』があったじゃないですか」
小山「あの企画、どうなったんですか?」
宇賀「なんとスタッフが失念していまして……ちょっと時間が空いてしまったのですが、今回を機に再開します! 1人1枚ずつ絵を描いていって、みんなで完結をさせよう、という企画で」
小山「最初の1枚を宇賀さんが描いて……」
宇賀「最後の1枚を薫堂さんが描く約束でしたよね。描きたい方を募集して、順番にお送りして、送り返してもらって……ということをしているんです」
井上さんにも『旅する絵本』の途中経過を見ていただきました。
再開する『旅する絵本』企画。参加をご希望の方は、【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST「旅する絵本係」】までお願いします!
宇賀「この番組はお手紙をテーマにお送りしているのですが、これまでお手紙を書いたり、受け取ったりした中で印象に残っているものはありますか?」
井上「母親からきた手紙で、私がすごく忙しくなって『もうだめ』とか思っている時に、小包が届くんですね。それが私が大好きなもので……たとえば、お肌のお手入れが全然できていない時に母親チョイスの『これいいよ』という化粧水が届いたり。送られたきたあとに手紙が届くのですが、必要な言葉をいつも届けてくれます」
宇賀「お母様は何か分かるんでしょうね。そして今日は、『いま手紙を書きたい人』に宛てたお手紙を書いていただいているんですよね。どなたに宛てたお手紙ですか?」
井上「3年前に飼っていた猫を急に亡くして何も伝えられなかったので、その子宛てに手紙を書いてきました」
井上さんのお手紙の朗読は、ぜひradikoでお聴きください。
宇賀「今回の放送を聞いて、井上さんへお手紙を書きたい、と思った方もいらっしゃると思います。ぜひ番組にお寄せください。責任を持って、ご本人にお渡しいたします。【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 井上奈奈さん宛】にお願いします。
井上さんの絵本のワークショップは、次回は夏頃に六本木「文喫」と蔵前「GALLERY KISSA」で開催予定です。応募の受付が始まったら井上さんのSNSでお知らせするとのことなので、ぜひチェックしてみてください。
また、六本木「文喫」では井上さんのワークショップに参加した方々の絵本が2月28日まで展示されています。お近くの方は、こちらもぜひご覧ください。
井上奈奈さん、ありがとうございました!
井上奈奈さん
http://nana-works.com
小山「『くままでのおさらい』は、森の中のくまさんがお皿を1枚持っているところから始まるんですね。これは全部版画ですか?」
井上「紙版画を使っています」
宇賀「どういう時にこの物語が浮かんできたんですか?」
井上「日常的に何かを食べる行為はみんなしますよね。昨日まで生きていた豚さんがいまは自分の中にいて、他者と自分との境目を、常に問いている自分がいたんですね。この物語というのは、うさぎさんとかくじらさんとか、いろいろな動物を食べて、その動物に成り代わったかたちで物語が進んでいくんですね。これは“他者の感情すらも自分の中に入れてしまう境目”がテーマになった物語です」
小山「哲学的ですね。はじまりは子ども用ですけど、大人もいろいろ考えるきっかけになる絵本ですね」
宇賀「先ほどもお話ししたのですが、絵本作家になりたい、絵を描きたい、本をつくりたいという方が結構いらっしゃって。井上さんはワークショップもされているんですよね。今日はぜひ、どうしたら絵本がつくれるのかをうかがっていきたいと思います。普段はどういうふうに教えていらっしゃるんですか?」
井上「いまやっているのは全6回で1冊の本をつくります。だいたい2週間に1回開催していて、3ヶ月かけて物語をゼロの状態から製本の状態までをして、最後は展示をするところまでを1セットにしています」
小山「まずは物語をつくるのが難しくないですか?」
井上「そうですね。みなさんやっぱりそこでいちばん時間を取られるんですけども、やっぱり絵本をつくりたい方は、少し掘り下げると『何でつくりたいのか?』というのがきっちりあるんですね。それさえ見つかれば、自然に物語になっていきます」
小山「それを井上さんが導き出すんですか?」
井上「そうですね、対話からまず始めます」
小山「試しに我々に問いかけてもらってもいいですか?」
井上「何で絵本をつくろうと思われたんですか? 誰に向けて、とか」
宇賀「子どもたちに読んでほしいですね。やっぱりこの1、2年、外で遊びたくても遊べなかったり、学校の行事がなくなってしまっている子達が多いので、そういう子が元気になるような本がつくりたいです」
井上「元気になるためには何が必要ですか?」
宇賀「夢を見ること?」
井上「じゃあ、夢を題材にしてもいいかもしれませんね……という感じで、もっともっともっと深掘りしていきます」
小山「なるほど。でも、絵は絵心がある人はいいですけど、僕なんかはまったくないので、どうすればいいですか?」
井上「ワークショップでは物語を書けない人も参加してください、と言っていますし、絵をまったく描けない方も参加してください、というかたちで伝えているんですね。抽象絵画で進められる方もいらっしゃいますし、切り絵で進められる方も、写真の方もいらっしゃいます。(書店の)絵本のコーナーに行って絵本を見るとわかるのですが、決して上手く描く必要ってないんですね。味のある絵だとか、本当に自由なので。描けないんじゃなくて、描いてください、って言っています」
小山「3ヶ月に及ぶワークショップで宿題がそれぞれ出るんですか?」
井上「宿題でいっぱいですね」
小山「最後は完成して、それをみんなで読み合うんですか?」
井上「六本木にある書店さんの『文喫』というところで完成した絵本の展示をやっているのですが、初めてプレゼンイベントをやりました。それぞれ自分が作った本を朗読して、どんなコンセプトで作ったのかを届けることをやりました。蔵前のワークショップでは、毎回2週間、原画とかを展示する機会を与えてみなさんに作家デビューをしてもらっています。いままで50作品くらいはあるかと」
小山「その中で井上さんが好きな、印象に残っているのはどんな作品ですか?」
井上「コウモリが主人公のお話で、そのコウモリが神様から『君はどっちの世界を選ぶ?』と問われるんですね。天国に行きたいか、地獄に行きたいか、いろいろな問いがあって。そのコウモリさんは毎回選べないんですよ。天国も面白そうだし、地獄も面白そうだなというかたちで。選べないかたちで物語がどんどん進んでいって、最後は意外と幸せな感じで終わるお話があって。それが私は気に入っていますね。『BAT,BUT,BAD?』というお話です」
宇賀「面白いですね!」
井上「この方も絵が描けないという方だったので、折り紙とちぎり絵みたいなかたちで表現されています」
井上さんの絵本のワークショップにまつわるお話。ぜひ、放送でもお楽しみください(radikoで2月27日まで聴取可能)。
宇賀「井上さんの最新図書『星に絵本を繋ぐ』では絵本のワークショップについて書かれているんですよね」
井上「3章仕立てになっていて、1章が作品集で私がこれまでつくってきた絵本たちを紹介していただいています。2章では、私が絵本をつくるときにどんな風につくっていくかについて綴っています。3章で絵本創作ワークショップがどんなふうに進んでいくか、いままでの作家さんの作品とともに紹介しています」
宇賀「番組でも『旅する絵本』があったじゃないですか」
小山「あの企画、どうなったんですか?」
宇賀「なんとスタッフが失念していまして……ちょっと時間が空いてしまったのですが、今回を機に再開します! 1人1枚ずつ絵を描いていって、みんなで完結をさせよう、という企画で」
小山「最初の1枚を宇賀さんが描いて……」
宇賀「最後の1枚を薫堂さんが描く約束でしたよね。描きたい方を募集して、順番にお送りして、送り返してもらって……ということをしているんです」
井上さんにも『旅する絵本』の途中経過を見ていただきました。
再開する『旅する絵本』企画。参加をご希望の方は、【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST「旅する絵本係」】までお願いします!
宇賀「この番組はお手紙をテーマにお送りしているのですが、これまでお手紙を書いたり、受け取ったりした中で印象に残っているものはありますか?」
井上「母親からきた手紙で、私がすごく忙しくなって『もうだめ』とか思っている時に、小包が届くんですね。それが私が大好きなもので……たとえば、お肌のお手入れが全然できていない時に母親チョイスの『これいいよ』という化粧水が届いたり。送られたきたあとに手紙が届くのですが、必要な言葉をいつも届けてくれます」
宇賀「お母様は何か分かるんでしょうね。そして今日は、『いま手紙を書きたい人』に宛てたお手紙を書いていただいているんですよね。どなたに宛てたお手紙ですか?」
井上「3年前に飼っていた猫を急に亡くして何も伝えられなかったので、その子宛てに手紙を書いてきました」
井上さんのお手紙の朗読は、ぜひradikoでお聴きください。
宇賀「今回の放送を聞いて、井上さんへお手紙を書きたい、と思った方もいらっしゃると思います。ぜひ番組にお寄せください。責任を持って、ご本人にお渡しいたします。【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST 井上奈奈さん宛】にお願いします。
井上さんの絵本のワークショップは、次回は夏頃に六本木「文喫」と蔵前「GALLERY KISSA」で開催予定です。応募の受付が始まったら井上さんのSNSでお知らせするとのことなので、ぜひチェックしてみてください。
また、六本木「文喫」では井上さんのワークショップに参加した方々の絵本が2月28日まで展示されています。お近くの方は、こちらもぜひご覧ください。
井上奈奈さん、ありがとうございました!
井上奈奈さん
http://nana-works.com
今週の後クレ
今回のメッセージは、青森県〈五所川原郵便局金木集配センター〉高井友彦さんでした!「ひとつひとつ丁寧に、間違いのないように配達することを心掛けています。特に、今年の冬はとても天気が悪く、雪が強く降っていて前が見えない日や、道路に雪がどっさり積もっている日など、除雪がされていない中でも配達をしていました。そのため、配達の社員全員が無事に帰ってくるように、気をつけてもらいたいという思いで日々配達をしています。この仕事をしていて良かったと誇らしいことがひとつあり、配達に関しては1年間365日毎日お客さまに荷物等をお届けできるということは、すごく良いことだなと思っています。」
MORE
MORE
この番組ではみなさんからの手紙を募集しています。
全国の皆さんからのお便りや番組で取り上げてほしい場所
を教えてください。
〒102-8080 東京都千代田区麹町1−7
SUNDAY'S POST宛