年賀状にもぴったりな美しい言葉を知ろう 辞書編集者の神永暁さんが登場
- 2021/12/12
辞書編集者の神永暁さんをお迎えして
宇賀「年賀状シーズンがやって来たということで、準備を進めている方も多いと思うのですが……どうせなら、きれいな日本語を使って書きたいですよね」小山「大体『今年もよろしくお願いします』とか、『今年はごはんでも行きましょう』とかになりますよね」
宇賀「今回は、国語辞典のレジェンドをお呼びしています。37年間、辞書編集一筋の神永暁(かみながさとる)さんです」
小山「37年間、辞書編集一筋! 辞書って、何人くらいでつくるんですか?」
神永「ものによって違うのですが、私が担当した『日本国語大辞典』という辞書があるんですけど、これは数百人の人が関わっていましたね。編集部の部員としては少ないですけども、実際の作業に関わった人間は数百人いました」
宇賀「神永さんは、1980年に小学館の関連会社である尚学図書に入社、その後、小学館に入社されて、37年間、辞書のお仕事に携わっています。最初から辞書に携わりたいと思っていらしたんですか?」
神永「いえ、全然そういうことはありませんで。たまたま入った尚学図書が、国語辞典の編集部と教科書の編集部しかなかったんです。辞書の編集部に配属されて、そのままずっと辞書をやることになってしまったと」
小山「途中で、雑誌『DIME』に移動したいな、とかそういうのはなかったんですか?」
神永「それはなかったですね(笑)。やり始めたら、辞書の奥深さといいますか、面白いなと思い始めまして。ズブズブと、いつの間にか足が抜けなくなってしまったという感じですね」
宇賀「今まで担当された辞書は、『日本国語大辞典 第二版』『使い方のわかる類語例解辞典』『標準語引き日本方言辞典』『美しい日本語の辞典』など。『標準語引き日本方言辞典』は、標準語で調べて、方言がわかるんですか?」
神永「標準語が見出し語にありまして、それに対応する方言がずっと書かれています。それぞれがどこの地域で使われているのかがわかるようになっています」
宇賀「辞書を作るということは、日常生活の中でも言葉に敏感だったりとか、意識されていることはあるんですか?」
神永「やっぱり新聞とかネットのニュースなんかは割と見まして、『あれ?』と思ったら辞書を引くということはしていますね」
小山「言語はどんどん変わるわけじゃないですか。たとえば、最近は何があっても『やばい』と言ったりとか。『やばい』はいつか、辞書にポジティブな意味で入ってきたりするんですか?」
神永「もともと、『やば』という言葉自体は関連性はあるかはわかりませんが、江戸時代から使われていましたから、私からするとちょっと復活しているのかな、という感じもあります」
小山「江戸時代はどんなふうに使われていたんですか?」
神永「危険な場所とか、そういう意味で使われていました」
宇賀「いちばん好きな日本語は何ですか?」
神永「たとえば、『邂逅』という言葉があります。思いがけなく出会うとか、巡り会うとか、偶然出会うなんて意味もありますけど、結構好きな言葉ですね。誰かと出会ったり、人に限らずものに出会うことは人生にとってすごく大事なことだと思いますので、それを意味するとてもいい言葉だなと思います。私もたまたま辞書と邂逅してしまい、それからのめり込んでしまったので」
小山「僕も邂逅はよく使います。料理屋に行った時のお礼とかで、『あの美味しい料理との邂逅は自分にとって大きなものでした』とか」
神永「いいですね、そういう使い方は」
宇賀「神永さんが監修された本『日本のことばずかん そら』が、11月に刊行されました」
神永「自然に関する言葉を集めたものです」
小山「この中から年賀状に使えそうな言葉はないかな? と探していたんですけど、まず、『見つけよう 初○○』。この中で……『初空』。元日の空のことを初空と言うようです。あとは、この時期では『初氷』」
宇賀「確かに、私たちは一年中“初”と言っていますね」
小山「それから『初霞』……年が明けて初めての春にたなびく霞のこと。あと、雪の表現も面白いですね」
神永「そうですね、雪もいろいろな表現がありますね」
小山「『冠雪』とか、『雪明り』もありますね。積もった雪の白さで、夜に周りが明るく見えること。こういう言葉をちりばめて年賀状を書いたからかっこいいですよね。僕は『初空』がいいような気がしますけどね。〈初空に浮かぶ雲を見て、自分は何を思うだろう……〉みたいな。神永さんは、年賀状はどんなことを書かれるんですか?」
神永「なんとなく、今こんなことをしています、ということをお伝えしようとしています。具体的にこんな辞書の仕事をしています、というよりは、『こんなことを考えています』と短い文章を添えて書いていますね」
宇賀「今日は神永さんに、今手紙を書きたい人に宛ててお手紙を書いていただきました。どなたに書きましたか?」
神永「私が長い間編集を担当しました『日本国語大辞典』という辞書があるのですが、初版と第二版の編集委員をされた松井栄一(まつい しげかず)先生という方がいらっしゃいます。2年ほど前に亡くなられた方なのですが、私は勝手に師匠と思っておりまして、その方に宛てた手紙で書かせていただきました」
神永さんが書いたお手紙の朗読は、ぜひradikoでお聴きください(12月19日まで聴取可能)。
神永暁さん、ありがとうございました!
『日本のことばずかん そら』
神永「ものによって違うのですが、私が担当した『日本国語大辞典』という辞書があるんですけど、これは数百人の人が関わっていましたね。編集部の部員としては少ないですけども、実際の作業に関わった人間は数百人いました」
宇賀「神永さんは、1980年に小学館の関連会社である尚学図書に入社、その後、小学館に入社されて、37年間、辞書のお仕事に携わっています。最初から辞書に携わりたいと思っていらしたんですか?」
神永「いえ、全然そういうことはありませんで。たまたま入った尚学図書が、国語辞典の編集部と教科書の編集部しかなかったんです。辞書の編集部に配属されて、そのままずっと辞書をやることになってしまったと」
小山「途中で、雑誌『DIME』に移動したいな、とかそういうのはなかったんですか?」
神永「それはなかったですね(笑)。やり始めたら、辞書の奥深さといいますか、面白いなと思い始めまして。ズブズブと、いつの間にか足が抜けなくなってしまったという感じですね」
宇賀「今まで担当された辞書は、『日本国語大辞典 第二版』『使い方のわかる類語例解辞典』『標準語引き日本方言辞典』『美しい日本語の辞典』など。『標準語引き日本方言辞典』は、標準語で調べて、方言がわかるんですか?」
神永「標準語が見出し語にありまして、それに対応する方言がずっと書かれています。それぞれがどこの地域で使われているのかがわかるようになっています」
宇賀「辞書を作るということは、日常生活の中でも言葉に敏感だったりとか、意識されていることはあるんですか?」
神永「やっぱり新聞とかネットのニュースなんかは割と見まして、『あれ?』と思ったら辞書を引くということはしていますね」
小山「言語はどんどん変わるわけじゃないですか。たとえば、最近は何があっても『やばい』と言ったりとか。『やばい』はいつか、辞書にポジティブな意味で入ってきたりするんですか?」
神永「もともと、『やば』という言葉自体は関連性はあるかはわかりませんが、江戸時代から使われていましたから、私からするとちょっと復活しているのかな、という感じもあります」
小山「江戸時代はどんなふうに使われていたんですか?」
神永「危険な場所とか、そういう意味で使われていました」
宇賀「いちばん好きな日本語は何ですか?」
神永「たとえば、『邂逅』という言葉があります。思いがけなく出会うとか、巡り会うとか、偶然出会うなんて意味もありますけど、結構好きな言葉ですね。誰かと出会ったり、人に限らずものに出会うことは人生にとってすごく大事なことだと思いますので、それを意味するとてもいい言葉だなと思います。私もたまたま辞書と邂逅してしまい、それからのめり込んでしまったので」
小山「僕も邂逅はよく使います。料理屋に行った時のお礼とかで、『あの美味しい料理との邂逅は自分にとって大きなものでした』とか」
神永「いいですね、そういう使い方は」
宇賀「神永さんが監修された本『日本のことばずかん そら』が、11月に刊行されました」
神永「自然に関する言葉を集めたものです」
小山「この中から年賀状に使えそうな言葉はないかな? と探していたんですけど、まず、『見つけよう 初○○』。この中で……『初空』。元日の空のことを初空と言うようです。あとは、この時期では『初氷』」
宇賀「確かに、私たちは一年中“初”と言っていますね」
小山「それから『初霞』……年が明けて初めての春にたなびく霞のこと。あと、雪の表現も面白いですね」
神永「そうですね、雪もいろいろな表現がありますね」
小山「『冠雪』とか、『雪明り』もありますね。積もった雪の白さで、夜に周りが明るく見えること。こういう言葉をちりばめて年賀状を書いたからかっこいいですよね。僕は『初空』がいいような気がしますけどね。〈初空に浮かぶ雲を見て、自分は何を思うだろう……〉みたいな。神永さんは、年賀状はどんなことを書かれるんですか?」
神永「なんとなく、今こんなことをしています、ということをお伝えしようとしています。具体的にこんな辞書の仕事をしています、というよりは、『こんなことを考えています』と短い文章を添えて書いていますね」
宇賀「今日は神永さんに、今手紙を書きたい人に宛ててお手紙を書いていただきました。どなたに書きましたか?」
神永「私が長い間編集を担当しました『日本国語大辞典』という辞書があるのですが、初版と第二版の編集委員をされた松井栄一(まつい しげかず)先生という方がいらっしゃいます。2年ほど前に亡くなられた方なのですが、私は勝手に師匠と思っておりまして、その方に宛てた手紙で書かせていただきました」
神永さんが書いたお手紙の朗読は、ぜひradikoでお聴きください(12月19日まで聴取可能)。
神永暁さん、ありがとうございました!
『日本のことばずかん そら』
ポストカーが手紙のイベント『Gift of a Letter』に登場!
代官山蔦屋書店と柏の葉T-SITEで12月9日より開催中のイベント「Gift of a Letter」。12月18日(土曜日)と19日(日曜日)、代官山蔦屋書店に、ポストカーがやってきます。年賀状も出せるので、ぜひ足を運んでみてください。皆さんからの年賀状をお待ちしています!
SUNDAY’S POSTでは、皆さんからの年賀状をお待ちしています。『2022年の抱負や目標、応援してほしいこと』を書いて送っていただくと、番組からエールを送るかたちでお返事お届けします!ご応募は、年賀はがきの受付開始日である12月15日から来年の1月11日着分まで。宛先は【郵便番号102-8080 TOKYO FM 「SUNDAY’S POST」】にお願いします。
抽選でプレゼントのご用意もあります。ご応募の際は、お名前、ご住所、お電話番号、そして、来年の抱負を忘れずに書いてください。お待ちしています!
#手紙にしよう 2種類のクリスマスカードが登場!
きらびやかなイルミネーションが街を彩る季節になりました。「 #手紙にしよう」のサイトでは、「言葉」をプレゼントとして大切な人へ届ける、クリスマスカードを2種類ご用意しています。ひとつは、サンタクロースが大きな袋を持って煙突から入っていくデザイン。そして、クリスマスのモチーフをふんだんに散りばめたギフトボックスのデザインです。お気軽にダウンロードして、ぜひ大切な人に言葉を届けてみてください。
「&POST #手紙にしよう」
今週の後クレ
今回のメッセージは、千葉県〈浦安郵便局〉村田梓さんでした! 「私が幼少期の頃、郵便屋さんが来るのを、すごくワクワクした気持ちでポストの前で待っていました。そのため、今度はお客さまに幸せな気持ちになってほしいと思い、いつも配達をしており、「こうしてもらったら嬉しいかな」ということを考えながらお客さまに接しています。 例えば、お客さまの家に届ける郵便物がなくても、お客さまが庭にいらしたら元気に挨拶をしています。また、雨が降っている日に濡れやすい郵便物等があった場合、お客さまがどういう形で受け取ったら嬉しいかを考え、ビニール袋に入れて手渡しで配達をしています。」
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この番組ではみなさんからの手紙を募集しています。
全国の皆さんからのお便りや番組で取り上げてほしい場所
を教えてください。
〒102-8080 東京都千代田区麹町1−7
SUNDAY'S POST宛