TOKYO FM / JFN 38 STATIONSTOKYO FM / JFN 38 STATIONS 番組宛に手紙を贈る

SUNDAY'S POSTSUNDAY'S POST

『手紙から始まる物語。』
ここには、様々な思いが詰まった手紙が毎週届きます。
読むと、送り主のことがもっと知りたくなってきます。
日曜の午後3時、1通の手紙から始まる物語。
手紙の送り主にじっくりお話をうかがいながら、
手紙を受け取る喜び、手紙を送るワクワク感、
手紙に詰まった想いをラジオを通して全国に届けます。
from

NEWSNEWS

手紙文化研究家の中川越さんと「愛の手紙」のお話

  • ON AIR
  • 2021/02/14

手紙文化研究家の中川越さんをお迎えして

写真 宇賀「バレンタインデーですが、薫堂さんはラブレター好きというか、コレクションもされているんですよね」

小山「コレクションというか、自分で書いたラブレターの下書きをノートに書き留めていたんです(笑)」

宇賀「愛の手紙、ラブレターは歴史が深いということで、今日は先人たちの愛の手紙についてうかがっていきたいと思います」

バレンタインデーにお届けするSUNDAY’S POST、テーマは「ラブレター」です。ゲストに手紙文化研究家の中川越さんをお迎えしました。
写真 小山「はじめて“手紙文化研究家”という肩書きを聞きました。中川さんがご自身で作られた肩書きですか?」

中川「もともと生活手紙文を中心にいろいろ勉強をしていて、その延長線上に文豪の手紙があったんです。それが一つの文化として形成されていることについて、深く勉強してみたいなということで、こういう名前をつけさせていただきました」

宇賀「もともとは雑誌や書籍の編集者をされていたんですよね」

小山「手紙に興味を持つきっかけがあったんですか?」
写真 中川「私の世代は手紙の儀礼的な形式について学ぶ機会がなく、社会に放り出されてしまったので、手紙のマナー書で勉強をするんですね。すると、拝啓から始まって……と、なんだか自分の言葉じゃないような気がするんです。決められたことから入るとテンションが上がらないので、まず時候の挨拶について勉強したくなったんですね。そのルーツを辿るべく、手紙の勉強をはじめて、神田の古書店を回り始めたんです。そこでこの本、100年前の手紙の文例集があったんです。これには季節、お礼の挨拶、生活に役立つ文例集が載っているんです。しかも著名人たちがその実例も紹介しています」

宇賀「『書翰文大観』という本ですね」
写真 写真 中川「こういうものがあるんだ、と知って、この類の本を集めて手紙の書き方のルーツを自分なりに体得していきました。こういうもので、それこそ恋文の書き方まで勉強していたんですね」

宇賀「“新年を祝う文”、“新春宴会に友を招く文”とかいろいろありますね」
写真 小山「こういうものがあったんですね」

中川「樋口一葉もお金がない時に、仕事としてこういう例文集も出しているんです。それはそれですごく素晴らしい、単なる文例集を超えたものであるんです」

小山「昔からニーズがあったんですね」

宇賀「中川さんの著書『愛の手紙の決めゼリフ 文豪はこうして心をつかんだ』からお話をうかがいたいのですが、どうして愛の手紙について書こうと思われたんですか?」
写真 中川「『太宰治のラブレターは、最高峰にあるのではないか』と評論をする人がいるんです。それくらい、有名なラブレターがあるんです。太宰が不倫をして、戦後、離ればなれになった彼女と文通をしている時に、『今は旅もできなくて、不自由な生活をしている』とか『今日はようやくタバコをたくさん買い入れました』とか『お母さんが亡くなってさぞかし悲しいことと思います』とか、そういう手紙を書いていたんですね。その原稿用紙の最後の欄外に、一言小さく『コイシイ』と書いたんです」

小山「それは伝わりそうですね」

中川「関係性も欄外なわけですね。人生の欄外に置くべき『コイシイ』が、象徴的に出ている手紙として、非常に素晴らしいという評価を得ていますね」

小山「その一文、一言だけで最高峰に上り詰めた感じですね」
写真 中川「その『コイシイ』は小さいんです。小さく、遠慮深く書いているんですね」

小山「これはメールだとできないですもんね」

宇賀「片仮名の『コイシイ』なんですよね」

小山「それ、使わせてほしいですね(笑)」

宇賀「今日はバレンタインデーですし、お手紙にも使えますね」
写真 小山「中川さんが最も愛に満ちていると思うのはどんな手紙ですか?」

中川「徳富蘆花が、奥さんの入院中に書いた手紙というのがありまして。お互い、毎日のように手紙を書いていたんですね。ある退院する間近の手紙の最後にですね、追伸のように『キスを五つ送る。唇に、額に、二つの目に、顎の下に』と書いたんですね。これは非常に洒落ていてきれいだなと思います。どこまでも届く投げキスみたいな印象があって、面白いなと思いますね」

小山「ドリカムの歌詞に出てきそう(笑)。追伸がやっぱりポイントですね。愛の手紙に、いちばん必要な要素って何でしょうか?」
写真 中川「やっぱり『愛している』と言わないことかなと思います。愛している、と言ってしまうと、その途端に微妙な、オリジナルなユニークな想いというのが全部こぼれてしまうのではないのかと思います。手で水をすくうように、指の間から全部抜けてしまう。たとえば、逸話として漱石が『I LOVE YOU』を『月がきれいですね』と訳した話がありますが、まさにそういうことかなと思います」

小山「なるほど」

中川「第一次南極越冬隊員の妻が、非常に通信事情が悪い時に、命がけの越冬を続けているご主人にそれぞれ電信を送ったんですね。その中に、みんなが震え上がるような一言があったと。それはたった三文字『アナタ』と一言あったんです。万感の想いをそこに集約したんです。手紙というのは、それぞれ相手との関係の磁場の中に日常を置いた時、ものすごい輝きを発揮するんだなと思いましたね。どういう言葉を選ぶか、というのも大事だけど、相手と自分の関係がどうあるのか、と。夫が生きて還れる保証はない中、いろんなことを言いたいはずなのに、『アナタ』と言ったというのは一つの大きな愛ですよね。それから日本人らしいですよね」

小山「愛しているとは言わずに、愛していると伝えるんですね」
写真 宇賀「中川さんの本の表紙をめくってすぐに、『手紙は書き手と読み手、二人で書くもの。読む人の存在が、書く人から言葉を引き出すとも言えます。』とあるんです」

中川「相手によってテンションが上がったり、想像力が湧いたりするものだから、一人で書くものではないんじゃないかな、と思います」

小山「中川さんのラブレター、読んでみたいですね」

中川「僕も高校時代は、好きな人に膨大なラブレターを書いていたんですよ。でもね、重過ぎたんでしょうね、上手くいかなくて(笑)。それぞれの語彙とか、構成力とか才能とかはあると思うんですけど、手紙は書きたい、書いていて面白いと思うことが私が30年以上研究をしていていちばん重要なことだと思います。処理をしなくちゃと思った途端に、ちっともいい手紙にはならないんですよね」
写真 宇賀「中川さんにお手紙を書きたい、と思った方もいらっしゃると思います。ぜひ番組にお寄せください。責任を持ってご本人にお渡しします。【郵便番号102-8080 TOKYO FM SUNDAY’S POST中川越さん宛】にお願いします」

中川さんの新刊『文豪通信』も是非お手に取ってみてください。

『文豪通信』
写真 中川越さん、ありがとうございました!

#手紙にしよう

写真 外出や遠出が難しい今年の冬。こんな時だからこそ、手紙で元気を伝えるのはいかがでしょうか。ぜひ、「&Post」の中の「#手紙にしよう」をご活用ください。
この寒い時期にも凛々しく花を咲かせるふきのとうと福寿草を描いたポストカードも更新しています。
番組やSNSでもご紹介していくので、お楽しみに。

#手紙にしよう

今週の後クレ

写真 今回のメッセージは、長野県〈豊丘郵便局〉森久保直樹さんでした!

「私が小学生の時の話なのですが、当時片思いをしていた女の子に対して、ラブレターを幼いながら一生懸命書いて、かばんの中に準備をして持っていったのですが、渡す前に他の友達に手紙を開けられてしまい、その女の子に渡されてしまったという思い出があります。苦い思い出でしたけれど、当時そういう経験をしたことは本当に良かったなと、今振り返ると思います。当時、文字で言葉を伝えるということが私の中で真っ先に浮かんだことだったので、手紙を書こうと思いました。」
MORE

ARCHIVEARCHIVE

MORE

CONTACTCONTACT

番組宛に手紙を贈る

この番組ではみなさんからの手紙を募集しています。
全国の皆さんからのお便りや番組で取り上げてほしい場所
を教えてください。

〒102-8080 東京都千代田区麹町1−7
SUNDAY'S POST宛

番組への要望・リクエストを送る

番組宛にメールでメッセージを
送るにはこちらから

詳しくはコチラ